建設業界との連携 2024年問題を乗り越える
国道整備の現場を支えるのは、建設業界の技術者や作業員だ。ゼネコン、建設コンサルタント、地元の建設会社――多様なプレイヤーが関わり、複雑な工事を実現する。しかし、業界は「2024年問題」と呼ばれる働き方改革による労働時間制限に直面。工期がタイトになり、人手不足も深刻化している。ある現場の施工責任者は「若い技術者が入ってこない。経験豊富な職人も高齢化している」と嘆く。
国道・技術課は、こうした課題に対応するため、業界との連携を強化。効率的な施工法の提案や、新技術の導入を促進する。たとえば、プレキャスト工法(工場で製造したコンクリート部材を現場で組み立てる手法)は、工期短縮に効果的だ。ある中部の国道工事では、プレキャスト工法の採用により、従来の3分の2の期間で橋梁を完成。施工会社は「工期が短くなり、コストも抑えられた」と評価する。このような成功事例を全国に広げるのが、課の役割だ。
業界の声を政策に反映する取り組みも進む。建設資材の価格高騰が工事予算を圧迫する中、課は自治体と連携し、優先順位を明確化。ある工事では、資材価格の上昇で予算超過が懸念されたが、県と協議し、工事を段階的に進めることで対応した。こうした柔軟な調整が、現場の信頼を築く。
予算と人材の壁 持続可能なインフラへの挑戦
技術導入や災害復興には、大きな課題が伴う。最大のハードルは、予算と人材の不足だ。インフラ整備には巨額の資金が必要だが、国の財政は厳しく、優先順位の設定が欠かせない。国道・技術課は、どの道路にどれだけの投資が必要かを精査し、説得力のある説明で予算を確保する。ある課の担当者は「資材高騰で予算が足りなくなるたび、頭を抱える。でも、現場のニーズを無視できない」と語る。
人材不足も深刻だ。特に地方自治体では、技術者の高齢化が進み、若手の採用が追いつかない。国道・技術課は、研修プログラムや技術マニュアルの提供でサポート。ある九州の市町村では、課が主催した橋梁点検の研修を受けた若手職員が、新技術を活用して効率的な点検を実施。「初めてでも分かりやすかった」との声が上がった。
技術導入にも課題がある。新しい機器やシステムは、使いこなせなければ宝の持ち腐れだ。ある自治体では、導入した点検ドローンが操作の難しさから放置されたケースがあった。こうした失敗を防ぐため、課は研修やマニュアル整備に力を入れる。現場の声を反映したサポートが、技術の実用化を支える。
地域の未来を切り開く 道路の先に広がる可能性

西川 昌宏氏
「道路はただのインフラじゃない。地域の未来を切り開くもの」。この信念が、国道・技術課の原動力だ。先にも触れた下関北九州道路プロジェクトは、その象徴だ。地域が活性化し、人が集まり、物が動く――道路がもたらす可能性は無限だ。
災害時のエピソードも、道路の価値を浮き彫りにする。能登半島地震の復興では、急ぎ道路啓開した道路や応急復旧した道路が地元住民の命をつないだ。ある高齢の住民は、物資を運ぶトラックを見て「これで食料が届く」と涙ながらに感謝したという。こうした瞬間が、インフラ整備の意義を再確認させる。
技術と人間の力で築くインフラの新時代
国道・技術課の挑戦は、技術と人間の力を結集したものだ。ドローンやAIといった先端技術は、効率化と環境負荷の軽減を実現。建設業界や自治体との連携は、現場の課題を解決する。カタログ作りや研修といった地味な取り組みが、技術の実用化を支える。そして、災害復興や地域活性化を通じて、道路が人々の生活に直接貢献する。
成果は、現場の声に表れる。ある技術者は、導入したセンサー技術で橋梁の点検が効率化したことを喜び、「これで安心して仕事ができる」と語る。別の現場では、新工法で工期を短縮した施工会社が「次もこの方法でやりたい」と意気込む。こうした小さな成功の積み重ねが、インフラの新時代を築く。
この仕事の魅力は、地域を支えているという実感
国道整備の現場は、厳しい環境も少なくない。しかし、技術の進化と効率化の取り組みにより、働きやすい環境が広がりつつある。「この仕事の魅力は、地域を支えているという実感。道路がつながれば、物流が動き、企業が集まり、地域が元気になる。それを自分の手で作れるのは、大きなやりがいだ」。
課題を一つ一つ解決し、地域の未来を切り開く――国道・技術課の挑戦は、技術革新と地域への思いが交錯する物語だ。インフラの未来を支えるこの取り組みは、日本全体の持続可能な発展につながるだろう。
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