株式会社オープンハウスグループ(福岡良介社長)は、宿泊・リゾート施設の経営や運営受託を行う株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツ(渡部達也社長)を設立した。同社の設立によりグループ内で宿泊・リゾート施設の開発から運営を一貫して手掛けることが可能となり、オープンハウスグループ初の直営ホテルとして2025年11月に神奈川県・箱根強羅温泉に「KÚON 箱根強羅」を開業する。これまで培ってきた収益不動産事業の知見を活かし、事業ポートフォリオの安定化を計るとともに、日本各地の観光の魅力を多くの人々へ伝える方針だ。
株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツは、リゾート・宿泊施設の経営や運営受託会社として、2024年10月に設立。「観光を起点に地域の元気を作り、世界中の人と人を結ぶ」という企業使命のもと、宿泊施設・観光レジャー施設の経営・運営受託を行う。
オープンハウスグループとしては、総合不動産会社として事業領域の拡大のみならず、ホテルという空間・不動産を通して新しい顧客と出会い、既存不動産のバリューアップを図りつつ、地域と共に新しい魅力を育む「まちづくり」への貢献を実現していくことがホテル事業参入の狙いだ。
グループの強みである、土地のポテンシャルを見出し、理想の空間を形にしてきた企画開発力を最大限に活かし、ホテルの開発から運営までを一貫して手がけることで、リゾート・宿泊施設の完成度を高め、他社と差別化された宿泊体験をスピーディーに提供。収益不動産事業を通して取得したホテルをリノベーションすることで、持続的なホテル開発を推進する。大手リゾート運営会社での勤務経験がある渡部達也オープンハウス・ホテルズ&リゾーツ社長と新進気鋭のデザイナーである永井健太氏により、空間を再定義し、箱根強羅に新しいホテルが誕生する。

「KÚON 箱根強羅」のエントランス
8月1日には、都内で記者会見を開き、株式会社オープンハウスグループサステナビリティ推進部 副部長の横瀬寛隆氏、株式会社オープンハウス・ホテルズ&リゾーツ代表取締役の渡部達也氏、デザイナー・negu.incの永井健太氏、和菓子作家の坂本紫穗さんが、初の直営ホテル誕生に至った背景や、今後の展望、直営ホテルの概要などについて解説した。
「地域共創」事業により、課題解決に挑む

地域共創からホテル事業参入の道のりを語る横瀬氏
冒頭、群馬県を中心に展開している地域共創事業の責任者を務める横瀬氏が登壇。オープンハウスグループの企業使命は、顧客のニーズを徹底的に追求し、価値ある不動産を届けることにある。現在、2024年9月期決算で売上高約1兆3,000億円までに成長。戸建て住宅のイメージが強いが、同期の決算は、売上高のうち、戸建て関連事業は全体の約45%の5,901億円(グループ会社のメルディアを除く)で、総合不動産事業を展開するオープンハウスグループは、戸建て住宅を核としながらも、収益不動産、マンション、アメリカ不動産、投資用マンションを含む主に5つの事業を中心に広がりを見せている。
その中でも2019年から「地域共創」事業への取組みに着手、社会への貢献を目指している。日本の中では地方部も重要な地域であり、地域の課題解決を図り、事業を通して人々の豊かな暮らしに貢献していくことで、SDGsの達成に取り組み、日本中に価値ある不動産を届ける。

「KÚON 箱根強羅」の客室
地域共創事業では、群馬県みなかみ町での温泉街の再生を東京大学とみなかみ町、群馬銀行とともに取り組むほか、スキー場・キャンプ場の再生を実施。また、オープンハウスグループは、2019年にプロバスケットボールチーム「群馬クレインサンダーズ」を買収。その拠点として、男子Bリーグの基準に沿ったアリーナと避難所の機能を合わせた施設「オープンハウスアリーナ太田」というスポーツエンターテイメント拠点も創出した。また、閉校になった学校跡地利活用では群馬県桐生市の桐生南高校を「KIRINAN BASE(キリナンベース)」という地域交流拠点として再生した。
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こうした地域課題を解決していく中で、ホテルにも目を向けた。直近では、2025年5月に群馬県みなかみ町には、共同所有型の「NOT A HOTEL MINAKAMI」を開業。これは、ベンチャー企業のNOT A HOTEL社とのシェア別荘型ホテルの共同開発だが、この事業によりノウハウを蓄積した。直営ホテル誕生の経緯では、まず株式会社オープンハウス・リアルエステートで不動産流通化事業や収益不動産ストック事業を手掛ける中で不動産情報が蓄積した。この不動産事業とホテル事業のノウハウの活用が深まったことで、ホテル事業を自社で運営することになり、オープンハウス・ホテルズ&リゾーツの設立に至った。
ホテル事業と既存事業のシナジーでは不動産開発ノウハウの活用、顧客基盤の相互送客、人材開発と組織活性化を上げた。ホテル直営事業の推進の意味として、①新たな収益源の確立と事業ポートフォリオの安定化②ブランド価値の向上と新たな顧客層の獲得③地域共創事業との連携による「まちづくり」への貢献の3点を挙げる。
「お茶と和菓子で五感をひらく」がコンセプト

ホテルの開発・運営を統括するオープンハウス・ホテルズ&リゾーツの渡部達也社長
直営ホテルの詳細について、ホテルの開発・運営を統括するオープンハウス・ホテルズ&リゾーツの渡部達也社長が解説した。渡部氏は大手ホテル・リゾート会社でキャリアを積み、約10年以上にわたり運営の最前線からマネジメントを担当。2024年10月から現職に就任。
第1号ホテルは箱根町強羅で、世界に誇れる温泉地「強羅温泉」西端にリノベーションホテルを開設する。文化観光・自然観光が豊富であり、都心から好アクセスなエリアだ。箱根強羅のポジショニングでは、高級温泉地として広く認知され、外資系ホテル、高価格帯旅館、コンドミニアムタイプなど多様なサービスであらゆる顧客ニーズを満たせる好立地として知られている。箱根強羅への進出の意図では、ホテル・旅館のメッカで新たな顧客ニーズを満たし、観光市場規模と箱根強羅のブランドイメージにより、安定した観光客の誘客が期待できる点にある。
「KÚON 箱根強羅」は、「お茶と和菓子で五感をひらく、唯一無二のデザイナーズホテル」をコンセプトに、洗練された宿泊体験と温泉でくつろぐ滞在を提供することを目指す。日本の文化や精神が表れる「お茶」や「和菓子」を用いたモダンな宿泊体験を提供していく。チェックインは13時で、チェックイン後は宿泊者限定のティーラウンジでゆっくり過ごすなど、ゆとりのある滞在が特徴だ。なお、「KÚON (クオン)」のブランドコンセプトは「現代を立ち止まる居場所」。宿泊施設ごとに設定されるユニークな宿泊体験を通して、現代の休息を提供する。
既存建物をリノベーションし、ホテルへ再生
ホテル開設にあたり、特徴的な点はリノベーションでのホテル開発を推進した点にある。一度、解体し、また新たな建築するのは環境への負荷も高いため、既存ストックを活用した。
また、従来からある躯体を使うことで工期短縮の効果もある。もし新築でホテルを開設する場合、年々、施工費も高騰している事情もあり、最終的に宿泊者の負担も高くなるため、建築コストを最適化するリノベーションのプランを推進することになった。質疑応答では、横瀬氏は「工事費が高騰している中、建物では躯体の占める割合が多く、それを活用した点が大きくコスト減につながった」とし、新築とリノベーションの工事費の比較について3~4割のコストで実現したと語った。
また、次の直営物件は未定で、「KÚON 箱根強羅」開業後は明確な数字目標は設定していないものの、ソリューション事業部の収益不動産の仕入れで良い物件があればと仮定したが、「今後加速度的に展開する可能性がある」(横瀬氏)とホテル事業の今後の方針について言及した。
今後の物件選定としては現在、オープンハウスグループが展開している首都圏で2~3時間のアクセスがベースになる。施工は今回、オープンハウスグループは担当していない。リノベーションが得意な建設会社に案件ごとに当面は委託する方針だ。

プレス発表会の途中ではKÚON 箱根強羅を代表するシグネチャーの和菓子が和菓子作家の坂本紫穗さんにより仕上げられた
和菓子作家の坂本さんは、オーダーメードの和菓子を作品として制作・監修。日本国内や海外で和菓子教室やワークショップ・展示・レシピの開発を行い、「印象を和菓子に」をコンセプトに、日々のあらゆる印象を和菓子で表現し続けている。また、永井健太氏が率いるnegu.incは、モノ、光、構造といった空間を構成する要素をエレメントとして捉え、それらを丁寧に作り出し、構成することで空間の本質を引き出すデザインスタジオとして名高い。

「箱根強羅にこれまでにないオリエンタルな空間をデザインした」と語る、デザイナー・negu.incの永井健太氏
永井氏は空間のコンセプトについて、「非日常でありながら、自分自身に帰れる場所」とした。箱根という自然豊かな場所に加え、既存建物の素材を丁寧に読み解くことでただ観光だけで訪問するのではなく、自分の内側と静かに向き合えることを空間全体に込めたという。また、インテリアイメージを公開、意匠的なこだわりとともに既存の建物が持つポテンシャルを活かしつつ、箱根強羅にこれまでにないオリエンタルな空間をデザインしたと語った。
オープンハウスグループは、不動産業界のトップを目指し、このホテル事業も一角を占めることになる。そこで「KÚON 箱根強羅」を皮切りに増やす方針だ。そういう中で、ホテル工事でのノウハウを蓄積している段階だが、今後は自社施工も選択肢の一つとして検討している。
施設概要
施設名:KÚON 箱根強羅
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1322-32
アクセス:東京駅から公共交通機関で約100分、都内から自動車で約90分
客室数:14室
付帯施設:フロント、客室、ダイニングレストラン、ティーラウンジ(バー)、駐車場(地下駐車場有)
延床面積:906.33m2(274.16坪)
開業予定日:2025年11月8日(土)
予約開始日:2025年8月1日(金)
公式HP(順次更新):https://ohhr.openhouse-group.com/kuon-gora/