20代に戻ったら「施工」を選ぶ。経営のすべてが詰まった仕事
――現場監督といえば、建築・土木系の学校出身者が志望するものだというイメージを勝手に持っていました。
青栁氏 若手には常々、「現場監督こそ経営ノウハウのすべてを学べる」と伝えています。「人・物・金・時間・情報」の5つを投入し、住宅をつくる施工管理を実地で行うことが、経営を学ぶ最短ルートだからです。
もちろん、建築学科で専門的に学び、強く建築職を希望する新卒者はその知見を活かすために設計や施工に配属します。しかし、法学部や経済学部など文系出身者であっても、学部にこだわらず施工スタッフに配属するケースも珍しくありません。
――たとえば法学部卒の新卒者が施工配属になった際、すんなりと受け入れられるものなのでしょうか?
青栁氏 私の前では皆さん素直に受け入れていますが、中には「施工配属か」と複雑に思う方もいるかもしれません。文系出身者は営業やコーポレート部門を志望しがちですが、私はあらゆる場面で「施工の方がより経営を学べる」という話をしています。
少人数の社内ミーティングで「もし20代に戻れるなら、青栁さんはどの職種に就きますか?」と聞かれることがあるんです。私は即座に「施工」と答えますが、総務や人事などの管理畑を歩んできた私がそう答えるのは意外なようですね。しかし、ビジネスの基本は施工にあります。20代でこれほど経営を学べる職種に就けること以上に幸せなことはないと、社員には伝えています。

――今年の大学新卒者の採用状況はいかがですか?
青栁氏 2026年3月入社の大卒者は約130名、翌2027年入社では160名を予定しています(2025年3月入社は90名)。会社の成長に合わせて採用数も増やしており、今後は160〜200名規模で設定していく方針です。いずれ社員の1割を新卒が占める時代が来ると考えています。
首都圏での採用網構築へ。泥臭い「顔が見える」活動
――高校生の採用については、どのような戦略をお持ちですか?
青栁氏 当社の発祥は埼玉県本庄市で、埼玉県北部、群馬県南部、栃木県南部といった北関東エリアの工業高校とは強い接点がありました。しかし現在の商圏メインは1都3県(神奈川・埼玉・千葉)に移っており、東京都内や南関東の工業高校との接点作りが課題です。都内や神奈川、千葉でのネットワークはまだ強くないため、ここを強化するとともに、大学に進学しない普通科高校生へのアプローチも強めていく方針です。また、理由は分析中ですが九州地方からの採用手応えが良く、高卒入社の4割を九州出身者が占めています。

――工業高校は伝統的に、やはり横のつながりが強い印象がありますね。
青栁氏 東京において当社はまだ新興企業に近いですから、ネットワーク不足が弱点です。そこで人事部門の高卒担当スタッフには、「とにかく学校を巡回して顔を売り込んできてほしい。5分でもいいから対面で会えるように」とハッパをかけています。
工業高校には建設業界に限らず大手企業からの求人票が山のように届き、担当者が日参しています。名刺やパンフレットを置いていくだけでは不十分で、社名と顔を一致させてもらわなければライバルには勝てません。なお、高卒者向けには「基礎職・大工職・設備職・内装職」の4職種に加え、施工管理職も募集しています。
職人の内製化は、未来のリスク管理と技術革新の鍵
――まさに今お話に出た、高卒者の大工や職人を直接雇用する狙いについて教えていただけますか?
青栁氏 最大の狙いは、将来的な職人不足に対するセーフティーネットの構築です。社内で職人を抱えておけば、特定エリアで不足が生じた際や、繁忙期に派遣して施工を止めることなく進められます。 次に、技術革新への対応です。DXやAI技術を用いた新しい工法を検証する際、協力会社だけにリスクを負わせるわけにはいきませんが、社内職人であれば「この新工法を試してほしい」と柔軟に要請できます。
さらに、現在展開中の「中古住宅の再生事業」への対応も挙げられます。単なるリフォームではなく、現代のライフスタイルに合わせて再設計・再生する事業において、社内職人の機動力は欠かせません。内製化により事業スピードが格段に上がると考えています。
「年収2割UP」へ。採用コスト削減を原資に還元
――そうした人材確保のためにも重要になる「年収2割UPプロジェクト」について教えてください。
青栁氏 2023年4月に始動した給与水準引き上げプロジェクトです。 主な原資は向上した利益の還元になりますが、原資の一つとなっているのが採用コストの削減です。当社は「採用(社員紹介)」に注力しています。通常、年収500万円クラスの人材をエージェント経由で採用すると150〜200万円のコストがかかりますが、社員紹介制度を活用すればこのコストを大幅に圧縮でき、その分を社員の年収アップに還元できるわけです。
また、同年5月には物価上昇への対応として一律5万円の「生活応援一時金」を支給し、夏季には建設現場向けに「猛暑対策手当」を支給しました。これらは最終的に手当ではなく基本給に組み込んでいます。猛暑は毎年続きますから、現場で奮闘するスタッフの処遇を恒久的に見直すべきと判断したからです。
結果として、2024年度の施工スタッフの昇給率は最も高くなりました。世の中の物価指数が前年比2.7%上昇する中、当社の昇給率は8%を超えています。さらに技術職の定着を目的とした「技術手当」や、間接部門向けの「インフレ手当」も新設し、現在「年収2割UP」という目標の約4割まで達成しています。

――リファラル採用ではどのような人材の紹介が多いのでしょうか。
青栁氏 営業スタッフが最多ですが、施工スタッフの紹介も少なくありません。私のような間接部門でも、不足時には知人を紹介するケースがあり、全社的に浸透しています。本音を言えば、現場監督の紹介をもっと増やしたいところです。営業はノウハウがあれば資格なしでも通用しますが、現場監督は一定の資格、とくに「2級建築施工管理技士」保有者であると非常にありがたいですね。




