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パイプの中にパイプをつくる!特許技術とAIで”マンション600万戸”の老朽化危機を救う 

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公開日:2026.06.12
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「1級技士常駐」の壁と文系新卒の育成

――それほどの需要がありながら、工事を進めるには「施工管理技士の不足」という壁があります。現場のリアルな状況をどう見ていますか?

藤井社長 建設業法上の配置義務とは別に、現在の現場には「仕様の壁」が厳然と存在します。たとえば、マンションの給排水管リニューアル工事においては、請負金額が300万円や500万円といった比較的小規模な案件であっても、元請けの管理会社や管理組合の仕様書で「1級管工事施工管理技士の常駐」が求められるケースがほとんどなんです。

――法律上は必須でなくても、現場のルールとして求められるんですね。

藤井社長 よほど自主管理されている物件以外は、「規模に関わらず1級を常駐させなさい」という仕様です。つまり、有資格者がいなければ、どれほど素晴らしい特許技術を持っていても工事を請け負う土俵にすら上がれない。これが今の状況です。

――その高いハードルに対し、貴社では新卒社員の資格取得で対応されていますね。

藤井社長 数年前に受験資格が緩和されたことを機に、新卒社員に対する早期の資格取得支援へ舵を切りました。

社内には1級管工事の資格を持つ先輩社員たちがいます。新卒社員は全員が文系出身ですし、現場を知らない状態でテキストを読んでも何のことかさっぱりわからないので、先輩社員が実際の現場写真を見せながら、「問題文で言っているのは、現場のこの部分のことだよ」と噛み砕いて教えています。

――先輩たちが現場とテキストという「点と点」を繋いでいるのですね。

藤井社長 当社は給排水管(衛生配管)の工事がメインですので、試験で空調設備の問題が出ても若手はピンときません。そこも先輩社員が丁寧に翻訳して教えてあげる。こうした「人から人への教育体制」があったからこそ、文系からでも合格できているのだと思います。

現在、大卒で入社して1級を取得し、管理者として立派に現場を回している30歳前後の社員が確実に育ってきています。この層をさらに厚くするため、2026年入社予定の12名には、いきなり2級管工事施工管理技士に受検いたします。

パイプの中にパイプをつくる。特許技術とAIで”マンション600万戸”の老朽化危機を救う 

転記を削ぎ、対話を生む。全社横断の生成AIプロジェクト

――話は変わって、全従業員の8割を対象にした「AI人材育成」もスタートされました。このスピード感ある導入の狙いと、背景にある危機感についてお聞かせください。

藤井社長 当社の主戦場であるマンション管理業界は、いまだに「報告書や竣工図書はキングファイルにまとめて紙で持ってきてくれ」と言われる世界です。一方でスーパーゼネコンの現場では、すでに紙の図面は一切なく、デジタル化が当たり前になっています。このギャップの中で、セキュリティを理由に足踏みしていれば、世の中からどんどん置いていかれてしまいます。

また、「採用ブランディング」も狙いの一つです。古いやり方に縛られたままでは、優秀な若手に見透かされてしまう。入社してすぐに最新技術に触れられる環境こそが、今の時代、選ばれる企業の必須条件だと考えています。

――どのような研修をされていますか?

藤井社長 オンライン動画での学習が基本ですが、個人の自習に任せると、どうしてもやる人とやらない人の差が生まれます。なので、外部のトレーナーに間に入っていただき、月に一度、個別に進捗を確認し、「自分の実務にAIをどう落とし込めばいいか」をアナログな対話を通じて教えてもらっています。導入してまだ1ヶ月半ですが、この伴走者がいることで、着実に現場の意識が変わっていると思います。

AI講習のオンライン受講風景

AI講習のオンライン受講風景

――実務において、具体的にAIでどのような課題を解決し、生まれた時間を何に充てていきますか?

藤井社長 とくに工事部での「転記業務」の削減です。竣工図書や安全書類など、ゼネコンやサブコンによって様式が違うだけで、同じ現場の情報をあっちのファイルにもこっちのファイルにも書き込まなければならない。これを、忙しく飛び回っている1級施工管理技士が自分で「ポチポチ」と転記をしているんです。まさに何の生産性もない時間です。

営業部でも、未だに提案書を作るのにパワーポイントを切り貼りして、たたき台を作るだけで2〜3日かかっていました。現場での住民対応の案内文にしても、ご年配の方や外国籍の方など、住民の方に合わせて案内文を作り変える必要があります。これらをすべてAIで圧縮したいと考えています。

書類作成の時間をAIで減らし、その分、生まれた時間はすべて「人間にしかできない接触や対話」に全振りしたい。管理組合の皆様に足を運び、まだ書類に残っていない隠れたお困りごとを直接聞き出す。そんな人同士のコミュニケーションの回数を増やすことが理想です。

変化に適応し、100億円企業へ

――総務などの事務職だけでなく、施工管理やリソース配分の世界でもAIが大幅な効率化をもたらす未来が見えます。中期的な経営ビジョンをお聞かせください。

藤井社長 当社は今年、経済産業省に「100億宣言」を提出しました。逆算すると、あと2年で売上50億円を達成しなければなりません。今の成長スピードと人材育成を進めれば、2年後の50億は間違いなく達成できるでしょう。そして、その先の「10年以内に100億円企業になる」という目標。これを達成するための人材獲得と育成において、間違いなくAIは「規格外の起爆剤」になると確信しています。

――貴社のグループビジョンには「マンション設備改修企業ナンバーワンになる」と並び、「若者が働きたい管工事企業ナンバーワンになる」と掲げられています。

藤井社長 当社の経営の根底にあるのは「大切なものを大切にする」という考え方です。会社にとって大切な人とは、働く従業員とその家族、協力業者とその家族、お客様、そして地域社会の人たちです。大切なものとは「幸せ、働きがい、成長」です。それらを大切にする経営こそが、P・C・Gテクニカが存在する理由です。

パイプの中にパイプをつくる。特許技術とAIで”マンション600万戸”の老朽化危機を救う 

――最後に、藤井社長ご自身の哲学についてお聞かせください。趣味は「釣り」や「山籠もり」と伺っていますが、自然と触れ合う中で経営に通じる学びはありますか?

藤井社長 休日はマグロや深海魚を追いかけて釣りをしたり、山に入ったり、最近は自宅でキノコ栽培も始めていて、いつかイノシシも狩ってみたいと笑っているんです(笑)。ただ、そうやって自然の厳格な掟にどっぷり触れていると、強く感じる理(ことわり)があります。

それは「強い者が生き残るのではない。変化に適応する者のみが生き残る」ということです。当社は1964年の創業から60年以上の歴史がありますが、この伝統を守るためにこそ、私たちは常に変わり続けなければなりません。AI技術の導入も、若手の教育改革も、すべては適応のための変化です。これからも技術と人の両輪で、マンションの配管というインフラを守り抜いていきます。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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