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「TOTOのヨーロッパ事業は”第2幕”へ」 世界最大規模の国際見本市「ISH2023」へ出展

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長井 雄一朗
公開日:2023.05.19
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ドイツ・フランクフルトで開催した、世界最大規模の住宅設備機器の国際見本市「ISH2023」でのTOTOブースのエントランス

ドイツ・フランクフルトで開催した、世界最大規模の住宅設備機器の国際見本市「ISH2023」でのTOTOブースのエントランス

目次
  1. 欧州は市場の浸透の段階に
  2. 欧州進出で全TOTOのデザイン力向上へ
  3. ブランド力向上のカギは「ウォシュレット」

TOTOは、3月中旬にドイツ・フランクフルトで開催した、世界最大規模の住宅設備機器の国際見本市「ISH2023」に出展した。2009年の初出展から今回で8回目となり、4年ぶりのリアル開催となった。

今回は会場であるメッセフランクフルトの玄関口に位置し、注目の集まる単独会場「Forum0(フォーラムゼロ)」に出展。自然光が取り込まれる大型のガラス窓がある会場の特性を存分に活かした。屋内から自然を感じさせるブース設計では、用途ごとの提案空間を設けていた。フォーラムゼロへの出展は、欧州トップブランド以外では初めてのこと。デザインとテクノロジーが融合した、欧州市場で主流の壁掛けタイプのトイレ「NEOREST WX」などを参考出品していることに注目が集まった。

これについてTOTOヨーロッパの原野宏基社長は、「ISHで展示会場の隅々まで日本人の美意識、道徳、倫理観を訴えてきたことが、フォーラムゼロへの出展につながったと思う」との感想を寄せた。

「ISH2023」のフォーラムゼロへの出展を記念して、原野社長はプレス向けの説明会を開催、これまでのTOTOの資料とともに、ヨーロッパ戦略をリポートする。

欧州は市場の浸透の段階に

TOTOの創立は1917年。初代社長の大倉和親は、創立総会で「欧州世界の製品を凌駕し、世界の需要に応じ、ますます貿易を隆盛ならしめんことを期す」と語ったように、当初から海外進出を視野に入れていた。現在の福岡県北九州市小倉北区にTOTOを設立した背景には、輸入原料の陸揚げや製品の輸出に格好の門司港に近いことも大きな理由だ。また、旧社名の「東洋陶器」には、当初より日本に限定せず東洋に飛び出す考えがあったこともうかがえる。

TOTOの海外戦略は、M&Aを繰り返し、シェアを拡大して覇権を奪取する姿勢ではない。あくまでその国や地域にあるトイレ文化になじむような商品を提供していく。時間はかかるものの、「その国のTOTOになる」ことを目指してきた。2008年にドイツ・デュッセルドルフに本社を設立。ロンドンとパリに営業所を設立し、「NEOREST」シリーズのほか、衛生陶器やウォシュレットを販売している。

TOTOヨーロッパの原野宏基社長

TOTOヨーロッパの原野宏基社長

TOTOの海外戦略を詳しく見ていくと、3つのマーケティングステージに分けられる。第1ステージはブランド認知。ホテルや空港などの著名現場への商品納入によるブランディングを図る。第2ステージは市場浸透。代理店や代理店ショールームの整備を実施する。そして、第3ステージとして、高級ブランドの確立。直営ショールームを通して、商品セミナーやプレゼンテーションを実施していく。

欧州での著名現場での採用事例としては、5つ星ホテルでのウォシュレットの採用が拡大しているほか、ルーブル美術館など世界的な著名現場での採用が進み、世界から集まる渡航者に体験の場を提供している。原野社長は「今年はラグビーのワールドカップがパリで開催され、翌年はパリ五輪。TOTOのウォシュレットが入っている5つ星ホテルに世界中のお客さまが訪問いただけると期待している」と語る。

欧州進出で全TOTOのデザイン力向上へ

TOTOでは、これらブランド認知拡大の場として、ドイツの「ISH」、中国・上海の「KBC」、アメリカの「KBIS」等の業界見本市に出展している。

今回の「ISH2023」は3月13日~17日の間に開催された。”Solutions for a sustainable future”がトップテーマとして掲げられた「ISH2023」では、TOTOをはじめとする各社はサステナブルな商品を展示。展社数は2025社で、累計での来場者数は15万3,734人だった。ちなみにTOTOブースの来場者は5万人を突破。前回の2019年のISHリアル開催時の約2倍超の来場者数を記録した。原野社長は「隙間がないほど来場者が訪問され、欧州域内はもちろんのこと、アメリカ、インド、タイなど世界各国の方々とお会いした」と話す。

ウェルカムブースには多様な国、民族が集まった

ウェルカムブースには多様な国、民族が集まった

欧州市場のバスルームはデザイン性が高いことが特徴で、トイレを例にとると、壁掛け式スタイルが中心だ。住宅設備業界では欧州ブランドの影響力は高く、M&Aなどで規模を拡大しつつ、世界中に販売網を構築している。

TOTOは、ウォシュレットを中心とした「テクノロジー」に強みがあるが、一方でここ数年は「デザイン」にも磨きをかけ、この両者を融合することで、欧州の顧客のデザイン嗜好に叶う製品を提供してきた。欧州市場向けの商品としては、壁掛けトイレのウォシュレットを投入。機能重視であったTOTOだが、欧州への進出によりデザイン力の向上を図っていることは注目点と言える。

「欧州はパリやミラノコレクションに代表されるようにデザインの中心地。この欧州でデザインに刺激を受けることで、全TOTOのデザイン力を向上するという軸を動かさずに活動している」(原野社長)

欧州のニーズに合わせた商品展開により、高級商品の売上げも大きく伸長している。2022年8月時点、海外全体で堅調なウォシュレットだが、欧州でも2015年時点と比較すると、2倍以上となるなど高い伸びを示した。

とくに今回は、参考出品した住宅やパブリック向けの双方に適用可能の「NEOREST WX」にも熱い注目が集まった。「NEOREST  WX」は、国際的に権威のある「iFデザイン賞 2023」「レッドドット・デザイン賞2023」をダブル受賞した。人に優しい印象を与える丸みのある形状と建築への収まりを考えたスクエア形状を両立したデザインで2023年から海外向けに順次発売予定だ。イギリスのデザイナーからは、「NEOREST WXは本当に美しく、余計なラインを省いた普遍的なデザインだ」との評価もあった。原野社長も「大便器に見えない大便器だ。静かなたたずまいであり、建築の中に溶け込んでいる」と来場者からの評価を解説した。

注目を集めた「NEOREST WX」の展示のようす

注目を集めた「NEOREST WX」の展示のようす

新型コロナウイルスの影響により、タッチレス商品への関心が拡大しているなどの顧客の意識の変化もあり、ウォシュレットの自動洗浄・開閉機能やタッチレス商品である自動洗浄への注目が集まった。

ブランド力向上のカギは「ウォシュレット」

今後の営業の主戦場としては、ドイツやフランス、イギリスにプライオリティを置く。とはいえ、ドイツに近い国も発展が著しく、高級ホテルの建築の動きもあれば、ドイツから出張し、営業の展開とともに、信頼できる代理店とパートナーシップを結び、主要国以外の国・地域にも営業を強化していく方針だ。そのためには、熟練工から一押しされる商品ブランドとして存在感を高めていくスタンスだ。今後の評価向上のカギは、「ウォシュレットにある」と原野社長は断言する。

「ISH2023」の開催地であるドイツには、約4万2,000社の水道工事店(プランマー)が存在し、その中のトップ集団ともいえる存在であるプランマーは1,500~2,000社と言われるが、まずはプランマーに対してウォシュレットの良さを訴求していく。

「彼らはプロ意識が強いので、自身が100%納得した商品でなければエンドユーザーに提案しない。実際に1~2年使用してもらい、高評価を受ければ、彼らからユーザーにお勧めしていくに違いない。ウォシュレットを高く評価するプランマー集団をつくり、その後、エンドユーザーへの認知を進めたい」(原野社長)

ほかにも、代理店やプランマー向けに行っている、対面・実機研修「KIZUNA活動」がある。KIZUNA活動では、日本人の持つ倫理観、商習慣から始まり、ウォシュレットだけで一日掛けて講習を行うだけでなく、会食なども通して仲間を増やし、欧州での存在感を高めていく考えだ。

「今回のフォーラムゼロへの出展で、TOTOのヨーロッパ事業は第2幕が開けたと言ってもよい。着実にTOTOファンをつくり、我々もそのファンの信頼にこたえ、その延長線上にしっかりとした事業の基盤が出来上がる」(原野社長)

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
「TOTOのヨーロッパ事業は”第2幕”へ」 世界最大規模の国際見本市「ISH2023」へ出展 「TOTOのヨーロッパ事業は”第2幕”へ」 世界最大規模の国際見本市「ISH2023」へ出展

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