株式会社オープンハウスグループ(荒井正昭社長)は、持続可能な社会の実現に事業活動を通じて貢献するとともに、企業の持続的成長を目指す「サステナビリティ」を推進、重点課題の一つに「脱炭素社会への貢献」を掲げている。
2022年10月には、「オープンハウスグループ脱炭素プロジェクト」として、再生可能エネルギーの普及への貢献を目指し、太陽光発電事業を開始した。2030年には事業活動による温室効果ガス排出量を2021年比で46%削減し、2050年に”ネットゼロ”を目指す。
東京都は2025年4月から、中小規模新築建物を対象に太陽光発電設置の義務化の制度を導入。この制度に沿って、同社は太陽光パネルの設置促進に取り組む。今回は、オープンハウスグループ・コミュニケーションデザイン本部の小林裕加里氏と由井里奈氏に、同社の脱炭素に向けた戦略について話を聞いた。
都制度による太陽光パネルの設置義務化の対象者はハウスメーカー
――まずは東京都の太陽光発電設置義務化の制度について解説いただけますか?
由井里奈氏(以下、由井氏) 東京都は2025年4月から中小規模新築建物(延床面積2,000m2未満)に対して、太陽光パネルの設置、断熱・省エネ性能の確保などを義務付ける制度を創設し、脱炭素やレジリエンスを促進しています。
新制度によると、太陽光パネルの設置義務者はお客様ではなく、当社のようなハウスメーカーが対象です。義務の対象者は、都内で年間延べ2万m2以上の建物(住宅・ビル)を建築する大手事業者(約50社)、あるいは知事から承認を受けた事業者で、新築住宅で義務が課されます。
ちなみに都内での年間新築棟数の半数程度の規模を想定し、既存の住宅は対象外です。また、「面積が小さい」「北向き」といった屋根の条件によっては、太陽光が当たりにくく、東京都の制度の規定によって対象外となるケースもあります。
――今回の太陽光発電設置義務化について、オープンハウスグループはどう捉えていますか?
由井氏 東京都は「2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減する」という”カーボンハーフ”の目標を掲げており、当社としても意義深いものだと感じています。ただし、当社グループはコンパクト住宅がメインのため、適用除外の住宅が多いのも事実で、その中でどのように対応すべきかを検討してきました。
これまで当社グループでは建売住宅では太陽光パネルを設置しておらず、注文住宅では太陽光パネルを載せられる物件に限定したうえで、お客様からのご要望があった際には搭載してきました。このように、従来は一部の注文住宅での対応でしたが、2025年4月からは東京都の新制度で建売住宅にも太陽光パネルを設置することになりました(※同社の決算資料によると、2024年9月期における、オープンハウス・ディベロップメントの販売割合は建売住宅が3で、注文住宅が1)。

オープンハウスグループの注文住宅では、東京都の制度以前から顧客の要望があれば太陽光パネルを搭載した事例もあった
東京電力と協業し、太陽光パネルも安価に設置
――東京電力との協業も開始されましたね。
由井氏 東京都の太陽光パネル設置義務化を受け、当社グループは建売物件への設置により、義務化で求められる量を達成する方針を決めました。しかし、建売物件に太陽光パネルをつけることで販売価格が上がることを避けたいと考えました。そこで、東京電力との協業により、初期費用を最小限に抑え、ランニングコストは0円にしてお客様の負担を軽減し、東京電力は売電で回収する仕組みをつくりました。
お客様にとっては、一般的に日々の電気代が3~4割ほどお得になり、仮に月に1万円の電気代であれば、約3,000円の削減が見込まれます。コストをあまり掛けずに太陽光パネルを搭載できるので、前向きに検討する一つのきっかけになっているかと思います。ちなみに、太陽光パネルの設置については、専門の太陽光工事業者が担当しています。
――そのほかに、オープンハウスグループとして太陽光発電の取組みはありますか?
由井氏 いまご説明したとおり、新制度以前の太陽光パネルの設置は、お客様のご要望があった注文住宅で行っていました。新制度適用後は、建売住宅でも設置しますが、、新制度の屋根に関する規定により、義務化の対象外となる物件もあり、太陽光パネルを載せる量は限定されます。ただ、この新制度以前から、当社グループは、脱炭素社会への貢献では、気候変動対策への中長期的な貢献を目指した行動計画「脱炭素プロジェクト」を策定しています。その中でさまざまな取り組みを展開中です。
――どのような取り組みですか?
小林裕加里氏(以下、小林氏) 当社グループの子会社には、グループで物件を購入されたお客様向けに提供する生活関連サービスを行う株式会社おうちリンク(鎌田和彦社長)があります。
同社では、物件を購入されたお客様向けに、ライフラインの電気、ガス、インターネット回線、住宅設備の不具合解消、ハウスクリーニング、インテリアの相談、住宅や生活に密接に関係したサービスを提供しています。物件をお引渡しした後も、お客様との接点を継続的に持ち、お客様のニーズに末永くお応えするため、2021年5月にサービスの提供を開始しました。
このサービスの一つに「おうちリンクでんき」というサービスがあり、このサービスを通じて電気をご購入されているお客様に対して、2022年10月より実質CO2ゼロの電力の提供を始めました。この契約も順調に伸び、約7,000件以上の契約に達しました。太陽光パネルを建物に搭載していなくとも、実質CO2ゼロの電力を提供している取組みを進めています。
20ヶ所の太陽光発電所を取得、発電量は約2,000万kWh
由井氏 そのほかにも、2022年10月から、再エネの創出を目的に太陽光ファンドを開始しました。このファンドに基づいて太陽光発電所の運用を開始し、CO2削減を目指しています。
当社グループが取得した太陽光発電所は国内の稼働済み太陽光発電所20ヶ所で、出力は約15.4MWになります。年間の想定発電電力量は約1万6,000MWhで年間約6,800t-CO2(※一般家庭の約3,500件分の排出量)のCO2削減へとつながります。事業運営は太陽光発電所を運営する子会社(SPC)を活用して行っています。

稼働済み太陽光発電所を取得(写真は群馬発電所)
全国各地での太陽光発電事業の継続的な実施により、事業成長と持続可能な社会の実現の両立を目指していきます。これが太陽光発電の全般的な取組みになります。
別の角度では、群馬県立ぐんま昆虫の森内の「オープンハウスの森」(群馬県桐生市)で、森林保全活動を継続的に実施中です。木造住宅を主力商品とする当社グループは、森林保全に関する課題に取り組む責任があると考え、ぐんま昆虫の森、 群馬県桐生森林事務所、桐生市、みどり市と「森林整備等の活動に関する協定書」を締結し、森林保全活動を2021年から行っています。

2024年11月で4回目の開催となった「第4回オープンハウスの森 森林保全活動」
また、当社グループでは2024年3月より、100%バイオマス由来の素材を使った、バイオマス手提げ袋の提供を開始しました。土壌中に加え海水中でも生分解される環境に優しい素材を使うことで、環境保全への貢献を進めます。全国の営業センター約70ヶ所、マンションギャラリーなどのマンション販売拠点、一部のご入居相談会で提供しています。

エコ素材の手提げ袋を2024年から提供
2030年には2021年比で温室効果ガス排出量を46%削減へ
――”戸建て住宅”と脱炭素の関係性をどのように考えていますか?
小林氏 いま、先進国の大都市では手ごろな価格で戸建て住宅やマンションの購入が難しくなっているという世界的な社会課題があります。また、共働き夫婦の増加を受け、戸建て住宅のニーズは「遠くても広い家」から「多少狭くても都心にマイホームを」へと変化していきました。そこで当社グループでは広い敷地に古い戸建て住宅が建つ土地を仕入れて更地にし、設計、施工管理、販売までを一貫して自社で行う「製販一体体制」の中間マージンが発生しないバリューチェーンで、便立地・好立地で手の届く価格で戸建てを提供しています。
駅チカ住宅を数多く販売していますが、もし駅から遠い住宅となると駅までの交通手段にはクルマを使用する場面も多くなります。しかし、駅から近い物件ではクルマを使用する場面も少なくなるため、当社グループの戸建て住宅事業の取組みそのものがサステナビリティにつながっていると考えています。

オープンハウスグループのビジネスモデル
持続可能なサステナビリティの社会の実現に向け、事業活動を通じて貢献するとともに、企業の持続的な成長を当社グループのサステナビリティの方針として掲げています。当社グループでは、2030年には事業活動から排出される温室効果ガス排出量を2021年度比で46%削減、2050年にネットゼロを目指しています。今回、お話した活動を通じて、数値達成の実現に向けて邁進していきます。
人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!
「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、
こちらからお気軽にお問い合わせください。