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米MS本社で確信した建設DX。永賢組が挑む現場監督と本社機能のAI化

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長井 雄一朗
公開日:2026.04.03
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左から、永賢組の永草社長、マイクロソフト本社のAI Agent GTM部門の上原正太郎氏

左から、永賢組の永草社長、マイクロソフト本社のAI Agent GTM部門の上原正太郎氏

目次
  1. AIで挑む建設DXと事業承継
  2. 2期目で受注60億円。「九州永賢組」の躍進と戦略
  3. 永賢グループが描く、「自立型プラットフォーム」構想

株式会社永賢組(本社:愛知県春日井市、永草孝憲社長、前期グループ売上103億、今期売上180億予測 来期グループ300億目標)は、米国シアトルのマイクロソフト本社を訪問。AI Agent GTM部門の上原正太郎氏と意見を交わし、最先端のAI技術やグローバルなDX事例を視察した。

この米国での実体験で得た知見を糧に、同社は現場起点の建設DXをさらに加速させる。イノベーション推進と人材育成の新たな展開に取り組み、コーポレート機能(総務・経営管理・広報・採用など)のAI化による業務効率化を進めている。

また、後継者不在の企業をM&Aで支援し、人・モノ・情報を一元管理することで、グループ全体が効率的に連携し、共に成長できる体制を目指す。永草社長は将来的に米国へ拠点を設け、AI人材の採用やスタートアップ創出を視野に、日米の事業を融合させた新業態の構想を描いている。

一方、同社の九州拠点である「九州永賢組」は、地域の建築一式工事を担いつつ、新規開拓や組織づくりに果敢に挑戦中だ。2期目に入った今期は約60億円の受注高を確保し、将来的には売上高100億円を目指す急成長を見せている。

今回、AI・DXに挑む永賢組の永草孝憲社長と、九州永賢組所長の藤崎文紀氏に話を聞いた。

AIで挑む建設DXと事業承継

――まず、アメリカでのAI・DX体験の経緯から教えてください。

永草孝憲社長(以下、永草社長) もともと当社の伊藤信博顧問(前日本マイクロソフト株式会社業務執行役員)が社内で月2回ほど建設DX勉強会を開催しており、以前からDXの機運は高まっていました。伊藤顧問の培った生成AIの知見を活かし、建設業でどう効果的に導入するかを検討しています。具体的には、優秀な現場監督の動きをデータ化してAIに学習させ、将来的には無人でも現場が回るような仕組みづくりを進めています。今回、伊藤顧問のご縁でマイクロソフト本社に伺い、あわせてシアトルとサンフランシスコのスタートアップ企業も訪問してきました。

株式会社永賢組の永草孝憲社長

株式会社永賢組の永草孝憲社長

――マイクロソフト本社ではどのような活動を?

永草社長 当社のプレゼンテーションを行うとともに、現場監督や交通誘導員のAI化について意見交換を実施しました。現場監督の高齢化が進む中、生産性向上は待ったなしの課題です。すべては難しくても、書類作成など全体の30~40%をAI化し、現場監督が本来の現場業務に集中できる環境を整えたいと考えています。

また、現在の建設業界における大きな課題は「経営者の後継者不在」です。売上高10億円未満の企業の中には、黒字でも廃業を余儀なくされるケースがあります。とくに地方の小規模事業者では、社長が現場監督から営業、管理部長まですべてを兼務する多忙なプレイング・マネージャーであることも多く、その苦労を親族に承継させるのを躊躇するのも無理はありません。

そこで、社長の作業負担を軽減するために「本社機能のAI化」を考えています。社長が現場に専念したいのであれば、営業や総務などのバックオフィス機能は永賢組本社が代行・サポートする。これにより社長に余裕が生まれ、会社の存続が可能になります。マイクロソフト社には、こうした機能提供の実現可能性についても相談しました。個々の会社は大変でも、グループ全体で人材や機能をシェアすれば、建設業は存続できると確信しています。

米MS本社でのプレゼンテーション

米MS本社でのプレゼンテーション

――その「本社機能のAI化」について、具体的なイメージを教えてください。

永草社長 建設業は属人的な業務が多く、当社でも「Aさんに聞かなければ分からない」という状況もあります。その人が不在だと業務が滞るリスクがあるため、Aさんの知識や声を再現するAIによるAさん(2号・3号)」のような仕組みを検討しています。いわば「永賢組版ChatGPT」の開発ですね。創業者時代から現在までの全データを学習させ、過去の知見をいつでも引き出せるよう、現在データの蓄積を進めている最中です。

――そうしたデジタル基盤を活用し、M&Aやグループ経営はどう進化するのでしょうか。

永草社長 M&Aを通じて全国にグループ企業を増やしていくつもりですが、その際各社の状況を直感的に把握し、迅速な意思決定を支援する仕組みを作ろうとしています。飛行機のコックピットのように、経営に必要な情報を一元的に可視化するイメージです。「青信号」であれば各社の判断で進め、「黄色」や「赤信号」が出れば本部がサポートに入る。これにより、精度とスピードを両立した経営判断が可能になります。

――M&Aの対象となる企業のイメージはありますか?

永草社長 大きく2つのパターンがあります。一つは、九州永賢組の藤崎所長のような優秀な人材がいる場合ですが、こうした人材にはなかなか巡り合えません。もう一つは、歴史ある地域ゼネコンです。橋梁、道路、下水道などの社会インフラは老朽化が進んでおり、維持修繕の需要は高まっています。やる気があっても経営に苦戦している企業があれば、我々の力で救済し、事業を継続させたい。

――経営のAI化に加え、もう一つの柱である「現場監督のAI化」はいかがですか?

永草社長 建設業法上の配置義務というハードルはありますが、まずは優秀な現場監督のノウハウを持つ「分身」をつくる構想に着手しています。施工管理の品質は個人の力量に左右されがちですが、AIによる標準化を進めることで、すべての現場で均質な管理体制を実現したいと考えています。

――「オンライン現場監督」の実現に向けた、現在の進捗状況は?

永草社長 足掛かりとして、技術者・技能者の顔認証とデータを紐づけるシステムを開発し、名古屋駅前の現場で試行しています。一度顔認証を行えば、履歴、資格情報や最新の健康診断の結果、入場当日の体調などが登録され、当社のどの現場に行っても書類なしで入退場や管理ができる状態を目指しています。まずはデータ収集が第一歩ですが、書類作成業務の削減効果を検証していく予定です。

AIによる現場での顔認証システムを開始

AIによる現場での顔認証システムを開始

――米国のスタートアップ企業を見学されて、どう感じられましたか?

永草社長 圧倒的なスピード感に刺激を受けました。向こうでの「1ヶ月前の出来事」が、日本では「3年前の話」に感じるほどの進度差があり、これを肌で感じられた意義は大きかったですね。 GoogleやAmazonも最初は小さなデスクから始まり、世界を目指すマインドセットがあったからこそ今日の成功があります。私自身も挑戦する姿を社員や業界に見せていくために、今後は1年の半分を米国で過ごし、リレーション構築やエンジニアのスカウトを行うことも選択肢の一つとして考えています。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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