1日限りの現場でも泣きを見る空調設備の施工管理
もうひとつ、1日限りの現場でも、空調設備の施工管理技士は泣きを見ることがあるので紹介したい。高層ビルのオフィスビル内の空調機の洗浄作業の話である。
当初、見積もり・現場調査時には、対象の空調機は8台とされていたが、実際は12台だったという現場だ。しかも、洗浄しやすい空調機であれば簡単だが、この現場は天井カセット4方向形という洗浄作業が最も厄介な空調機だった。
空調機の洗浄作業を行ったことがある方はご存知だと思うが、天井カセット4方向形は他の空調機と比べとても大変である。まず、空調機自体を分解し、パネル、電装部、ドレンパン、ファンモーターを取り外した後、天井に空調機を釣らせた状態で養生を行い、洗浄を行う。1台あたり1時間以上かかる。この現場は8台なので、4〜5人で1日になる計算で見積もりを出していた。
業務用空調機の洗浄は家庭用の物と違い、金額も結構張る。そのため、客先は当日、空調機の台数を追加しても大丈夫だろうと考えていたようだ。しかし、職人からしたら、たまったもんではない。もちろん客には、8台しか対応できない旨を伝えたが、「少し残業すれば終わるだろう」とのたまうお客様。職人5人、私を含め6人もいるのだから、3組に分かれて洗浄すれば、4〜5時間で終わるだろうとお考えだ。
職人さんが一番嫌がるのは、追加の工事である。特に、行わなくてもいい作業を行うことを最も嫌う。
前日までに「12台に増えた」と伝えてくれれば、1日目6台、2日目6台と作業できたかもしれないが、テナントから1日で終わらせてほしいと言われているので、それも無理。しかも追加料金も払えないと言われたが、結局立場の弱い下請けは従うしかなく、12台の空調機洗浄を1日で実施するしかなかった。
それでも職人の方々には頭を下げ、自分も養生や分解などの手間作業を行い、なんとか終わらせることができた。
空調設備施工管理とお客様のご要望
客の中には、夜工事だろうが、土日祝の工事だろうが、工賃は変わらないと考えている方がとても多い。どのくらい「待ち」が出ても、工事が2日になっても、同じ工事なのだから1回分は1回分だろうと考えている客が多い。
特に修理作業の場合、お客様の理解を得るのが難しい。修理工事は緊急性が高く、修理後の見積もりになることが多いのだが、基本的には、初日に緊急対応(現状調査)を行い、後日、部品交換・修理という流れが多い。
しかし、緊急対応(現状調査)費を認めてくれないお客様が多いのだ。空調機といっても、とても多くの部品でできているし、現状を確認しないと治らないことが多いのに「見にきただけで?」とか「治ってないのに?」とか言われ、削られるのだ。現状調査日に部品を会社中で探し、その日のうちに修理しても、現状調査費というのは認めてもらえないのである。
「早く工事や修理をしてほしいが、なるべく安価で済ませたい」というのは、お客様の一般的な要望であるが、空調設備の施工管理からすると、なかなか複雑なのである。