土木作業服は「生理」のときに問題がある
最近は、土木女子に配慮した取り組みが業界全体に広がっている。例えば、パウダールーム付きの洋式仮設トイレの導入だ。実際に現場ではどのような状況なのだろうか。
「女子仕様の仮設トイレを使ってみてはどうかと会社から提案されたことはあります。でも、私は普通の仮設トイレがいいと断りました。人が座った便座を使うのがイヤなんですよ。和式の方が清潔に感じます」
トイレ以外にも、飯場内を仕切りプライベート空間にする提案もされたが、夏美さんはこれも蹴った。ちょっとした着替えくらいなら、男性の視線は全く気にならないそうだ。
「このへんは一般的な土木女子の感性と違いそうですね。まあ、私はズボラ女子ですからね(笑)」
トイレや飯場については気にならない一方、作業服については神経質な一面も覗かせる。デザインやラインが男性仕様なことにも不満を感じるが、それ以上に気になるのは「色」である。
「作業服は濃い色が良いです。普通の薄い色の作業服だと、生理の時に万が一のことがあるとシミが目立ってしまいます。なので、紺色のズボンを自分で購入してはいています」
このへんは実際に土木女子本人に話を聞かないと分からない部分だ。もちろん、明るいピンクを望む人もいるだろうが、夏美さんのような意見もある。
年配が多い土木現場では「セクハラ」は日常
土木の現場で「セクハラはありますか?」と質問すると、夏美さんは「まぁ、普通にありますよ」と笑った。
続けて、「お尻を叩かれるのは日常茶飯事。年配の男性からしたらコミュニケーションなんですよ。そんなのイチイチ気にしていられない」と言う。
「他の会社の土木女子からセクハラがあるという話を聞いたことあるか?」と質問してみたところ、新婚の土木女子(30代)のケースを紹介してくれた。その人場合もやはり、お尻をポンと触られることが多いと言う。
夫から「カラダを触られていないか?」と聞かれたこともあるが、「触わられるわけないでしょ」と事実を隠したそうだ。正直に言えば、キレて会社に怒鳴り込まれるか、会社を辞めろと言われてしまうのがオチだろう、そんな風にこの土木女子は考えたそうだ。
「このへんは、年配の方が多い業界なので少しずつ改善していった方が良いかもしれませんね。私はそんなに気にしないんですけど、セクハラに耐えられない女性も多いでしょうから」
このエピソードだけでは「土木の現場=セクハラが多い」とは断定できないが、事実なら土木女子の普及と共に、現場でのセクハラ教育も徐々にやっていくべきだろう。
土木女子は結婚や子育てと両立できるか不安
夏美さんには今、つきあっている彼氏がいる。近いうちに結婚する予定だが、結婚や出産をしても土木女子を続けられるか不安だ。
「さきほど紹介した新婚の土木女子もタイヘンそうです。現場が遠いと帰宅が遅くなり、夕食の準備がツラいとよくこぼしていますね。出勤時間が早い業界なので、弁当を詰めるのも負担だそうです。そんな先輩の様子を見てこの先、不安になりますね」
とはいうものの、夏美さんは恵まれている。将来、子どもが出来ても仕事が続けられるよう、現場ワークとオフィスワークの両方のスキルを身につけられるよう会社がサポートしてくれている。子どもが幼児の時期は、オフィスワーク中心にする工夫をすれば、ずっと土木女子を続けられるという配慮だ。
「細かい部分ではいろいろありますけど、私は土木の仕事が大好きです。単純にかっこいい。みんなが使う大きなモノを作るなんて、かっこよすぎでしょ。でも自分はまだまだ。土木女子って名乗れないくらいの見習いですよ。まずは、土木施工管理技士の資格や大型特殊免許をしっかりとって、現場での知識を吸収しまくって、そこからですね」
こういった土木女子の想い、挑戦、希望、挫折……そんなものが未来の土木業界を創っている。彼女たちのホンネに耳を澄ませ、それをベースに改善を繰り返すことで、真に女性が働きやすい業界になっていくのだ。
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