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9期連続赤字だった建設会社が「民間シフト」で8期連続黒字に。小坂田建設の挑戦

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公開日:2017.11.07 / 最終更新日:2022.08.16
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9期連続赤字だったが、民間シフトで8期連続黒字に

公共工事の減少を受け、小坂田建設の経営状態も悪化の一途を辿っていた。創業以来、公共工事を中心に仕事を受注してきたが、長年の「どんぶり勘定」のツケが顕在化。奇しくも、岡山に戻ったその年から、9期連続の赤字が続くことになる。

特定建設業の許可を維持するため、架空工事などを計上する粉飾決算もあった。「売上げが1億1千万円しかないのに、銀行借り入れが1億2千万円もあった。完全な債務超過状態」で、会社は崖っぷちにあった。そんな「グチャグチャな」経営が続いた報いで、2008年末、ついに倒産不可避の状況にまで追い詰められる。「このまま倒産してしまうのかと思うと、眠れない夜が続いた」。岡山帰郷後、最大のピンチに見舞われる。

「どうせ倒産するなら、思い切ったことをやろう」。どん底だった2008年7月の決算後、悩んだ末、公共工事から民間工事への転換を決断する。「家周りのことならなんでも相談を」のキャッチフレーズを掲げ、地元建部町を中心に、奥さん自作の新聞折込みチラシの毎月新聞折込を開始した。

高齢化率40%超、過疎化が進む地域への「逆張り」とも言える、建設サービスの「創業」だった。「始めてみたものの、正直まったく仕事はないだろうと思っていた。ところが、フタを開けてみると、過疎地ならではの課題とニーズがあった。これは徹底的にやろうと思った」。この逆転の発想から、小坂田建設再建の歩みが始まった。

毎月新聞折り込みで配布している「笑顔通信」。人気記事は「今月のお手軽料理」で、「うちでもつくりましたよ。おいしかった」と反応も上々とのこと。

「壊れた石積みの修繕」「耕作放棄地の管理」「床の張り替え」「不要になった家具の処分」「お家の進入路を改修」「邪魔な木を伐採」「墓地のお掃除」ーー小坂田建設の「おしごとMENU」には、こう書かれている。田畑、家、墓。田舎暮らしでは、ほとんどの人の生活に関わりのあるものばかりだ。

「身の回りのお困りごと、1件数千円からなんでもご相談ください」という個人向け建設サービス業は、次第に地元住民の心をつかんでいった。以前個人の顧客は100名足らずだったが、民間サービス開始後、その数は倍増。現在では400名を超えている。「実際に地元に目を向けてみると、われわれ土木技術者がやらなければならない仕事は、実はいっぱいあった」。これを機に、収支は一転。今期まで8期連続の黒字となる。経営者の決断が、会社を、社員を、地元住民を救ったわけだ。

民間の仕事は良いことずくめ?公共工事のほうが高リスク?

「地域建設業は、地域の生活を助け、生活を便利にするのが仕事。逆に、地域がなくなれば、われわれの仕事もなくなる。人がいない、仕事がないとボヤく建設業の経営者は多いが、なぜ建設業が存在しているのかという原点に戻って、自分たちがやるべきことを考える必要があるのではないか」。「地域密着、地元貢献」を掲げる田舎の建設会社は多い。ただ、スローガンとして掲げているのか、ほんとうにそれ信じ、実行しているかの間には、雲泥の差があるだろう。

「民間を仕事の柱にするリスクはまったくない。むしろ公共の仕事の方が、仕事が取れなかったり、仕事をしても利益が出ないなどのリスクがある」と言う。「社員も、民間の仕事を楽しみにしている。書類づくりに追われるので、公共の仕事をイヤがっている。民間の仕事はコミュニケーション力が問われるので、民間の仕事の方が社員のスキルも上がる。仕事の質も民間のほうが高い。民間仕事で培ったノウハウがあれば、公共の仕事も利益が出るようになる」。民間の仕事は、良いことずくめらしい。

株式会社小坂田建設の名前が入った和菓子

民間の仕事にシフトしたといっても、完全に公共の仕事をやめたわけではない。「民間の仕事は全体の6〜7割。草刈りなど地元密着の維持管理的な公共の仕事は、やらざるをえない。ただ、公共の仕事が入ると、人手が足りなくなる。もっと民間に突っ込みたいが、現状では難しい」。民間受注の拡大が今後の課題のようだ。

「俺はこれだけの技術を持っているんだ」と威張っている人は「技術者としては失格」

技術者に求めるものは「お客さんの話をよく聞いて、それを形にできること」。「技術者は、ややもすると自分の技術にこだわりすぎて、お客さんのニーズに応えないことがある」からだ。それはただの「自己満足」にすぎない。「お客さんに喜んでもらう」ことが第一、技術はそのためにあると考える技術者こそ、「良い技術者」だと言う。

また、「田舎の技術者は昔ながらの、職人カタギの技術者であるべきだ」とも指摘する。「現場を知らずに、技術的な判断ができるわけがない」からだ。そんな人間が「パソコンでソフトをいくらいじっても、しょせんは机上の空論。技術者ですらない」とバッサリ。「技術者にとって、現場で見たものを感じ取り、それをどうつくっていくかが、一番重要だ」。

確かに、大きな会社で、大きな仕事を続けていけば、自然と技術力は上がる。田舎の建設業では、まずお目にかかれない技術も身につく。ただ、それは「技術者が置かれている環境が違うだけ」であって、「技術力の上下の問題ではない」。

「本当の意味での技術者は、彼我の技術レベルの差を超えて、対等に話ができる人」。「俺はこれだけの技術を持っているんだ」と威張っている人は「技術者としては失格」。「自己満足に浸りすぎる技術者がいるが、それは良くない。われわれの仕事は、コミュニケーションを通じてモノをつくる仕事。みんなが気持ちよく仕事できるようにしないといけない」からだ。技術者には、高い技術力以上に、高い人間性が求められる。

会社への訪問者があると、社屋前に掲示されるウェルカムボード

好きな仕事をして、こんな幸せなことはない。

「地元密着で仕事をして、10年近く経った。お客さんに喜んでもらえるのが、励みになる。自分の好きな仕事をして、ありがとうと言われて、お金までもらえる。こんな幸せなことはない」。トンネル技術者としてのキャリアを捨て、家業を継ぐために岡山に帰郷。倒産の危機。眠れない夜。崖から飛び降りる気持ちで、公共から民間にシフト。黒字転換ーー。はた目には、ジェットコースターに乗っているようだが、今その表情には、なんの屈託もない。

「われわれも、もっともっと地元に目を向けたい。まだまだ足りない。本当に地元に必要とされる会社になりたい」。その眼差しは、経営者、技術者としての自信と誇りに満ち溢れていた。

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