独自開発した「GreatMonsterシステム」で構造物を解析
――SiftDDDでは、施工に入る前に、設計上の問題点などを解析しているわけですか?
泊 ええ、SiftDDDのビジネス領域はそこです。建築事務所やゼネコンさんなどから建築物の設計データをいただいて、設計図精査をします。その後、独自開発した「GreatMonsterシステム」で解析し、「ここの鉄筋が干渉する」とか「ここは被覆がとれない」などの問題点をピックアップして、その問題点を3Dモデル化しデータを提供するサービスを行っています。
――SiftDDDのサービスは施工現場でも役立つ?
泊 意匠系の設計事務所は、構造設計に不慣れな場合があります。しかし、中規模のマンションだと、そんなにお金もかけられないので、不安を感じている設計事務所があります。そういう設計事務所の設計図であっても、SiftDDDでご支援させていただければ、余裕を持って施工者と話ができます。2次元では見えなかった問題点を事前に把握することで、安心材料としていただけます。
例えば、大型の商業ビル建築の際、設計施工に関するさまざまなシミュレーションのため、デジタルモックアップを作成しました。その結果、着工前の準備期間を4ヶ月短縮しました。また、ある物件では不祥事のため、工事が止まってしまったことがありました。全力でこの現場をサポートし、結果的に、工期内で竣工することができました。またある現場所長には、「工費的に5〜10%の圧縮効果があった」と評価していただきました。
設計図の変更によって、鉄骨の製造が間に合わないという場合があります。SiftDDDが関わった自治体庁舎案件では、3Dモデルを作った時点で、鉄骨への鉄筋孔貫通位置がデータ化されていたので、そのデータをそのまま製作図として使用していただきました。
SiftDDDが解析したデータがあれば、このように専門業者との意思の伝達などに使えます。工事担当者の経験の浅い部分をフォローすることができるわけです。実際に3Dモデルを見ながら、「配筋をこう加工しよう」などの打ち合わせができますので、この辺は、現場に役立つサービスだと自負しています。
解析時にシステムが自動で干渉回避。条件の範囲で施工に近いカタチに整える
――設計図の変更の主な原因は?
泊 意匠に伴う変更が多いと思います。自治体庁舎ではあまりありませんが、病院は多い印象があります。例えば、CTなどの医療器材のメーカー変更や設置場所の変更の場合、器材重量が変わるので、床の積載荷重も変わります。それに伴なって、搬入経路や扉の形態も変更になり床レベルが変わると、設備に関わる配管の貫通位置も変更となるので、多岐に渡ります。
SiftDDDのサービスは、基本設計の段階でサポートする場合、確認申請が下りた直後、着工直前で施工図作成の前段階の場合などがあります。このほか、着工したけれど、熟練の専門業者さんが見つからず、設計図の精査に加えて加工図まで一元的に支援して欲しいとか、施工指示書を作成したいので問題点などをチェックして欲しい、などのニーズに応えることもあります。変わったものでは、施主さんが目玉物件を建てるので、「特殊工法による組み立アニメーションモデルを作って欲しい」という注文もありました。
――ひと口に、設計図のチェックと言っても、簡単ではないですよね。
泊 弊社ではまず、設計図を精査します。大きな問題は、その段階でだいたい見つかります。クライアントに質疑しながら、データ入力していき、設計図に指示のある条件、法規や規格を設定します。現場との打ち合わせシートなどを揃えたら、GreatMonsterシステムへデータを送信し、解析を実行させます。システム内部で、条件に基づいて仮想の建物を建ててしまいます。
システム内部では、より干渉が少なく問題の発生しない様に自動的に配筋するのですが、それでも自動判定できなかった箇所について情報を集約し、CAD上へ3Dモデルで可視化します。例えば、主筋同士が干渉すると、主筋の色は通常色から黄色に変わります。そこには干渉リングという名前の赤いリングが付いています。クライアントへはこの情報をご提供しています。
もう一歩進んだご提案として、ご要望があれば、SiftDDDに蓄積されたデータベースより問題解決事例をお渡ししています。例えば、設計図のまま組み立てると、鉄骨柱の柱脚を固定するボルトと梁主筋が干渉してしまう場合、「〇〇ミリの回避で避けられるが、礎柱被覆の調整が必要となります」などと問題点を指摘するとともに事例をご提案して現場施工に役立ててもらいます。