曳家に悪意を持つ工務店
電話を切った後で思い出したのが、曳家に対して悪意を持つ工務店A氏のことだ。
A氏とはこんな会話をしたことがある。
A氏
農家の施主さんに曳家の経験がある方がいて「建て替えと曳き家と同じくらいかかったな」と言っていたのを聞いたことがあります。曳家は値段のがわからない職業ですね。
曳家岡本
曳家は、業者によって使う資材や技術のばらつきが烈しいです。それゆえ、「曳く」のはまずまずの価格だったけど、修復費用に追加が随分かかったと叩かれている業者もいます。
ですが、私に言わせればそうした粗悪な工事をするのは「本物」の曳家ではありません。そういう業者は、土木や他の業種と兼業でやっていて、依頼があればやっている方たちです。
そして、比較できるケースが少ないゆえ、多少傷めても「曳家だからこんなもの」と釈明しています。
曳家の相場と流派
曳家岡本
どちらが良いというわけではありませんが、一般住宅だと私どもの方が細やかな細工をする分、傷みません。自分は曳家が伝統文化財くらいしか活躍の場がないように書かれることが哀しいです。
自分は「まだ使える家」を再利用するためにたくさん曳かせていただきました。これからもそうでありたいです。特殊な事情がない限り、建て替えと同じくらいかかっては曳家の意味がありません。
A氏
岡本
ただ、その中で「安かろう悪かろう」はいけませんので、先代から「丁寧な工事」を教えられました。
また、日本曳家協会の代表である恩田組さんも、曳家工事の施工単価の可視化のためにあえて、価格表を掲載されています。もっとも恩田組さんは規模も大きいので、必ずしも小規模な曳家とは同じ土俵ではないと思いますが。
ちなみに現在の曳家の相場としては、1階坪数が20坪程度までで、直線に20mくらい動かすのであれば、曳家だけで400万円~500万円ではないでしょうか?これに配管や基礎工事などをプラスして、1000万円~1200万円程度で仕上がるのが普通でしょう。なので、例えば坪あたり70万円のお家なら、新築の4割程度になります。相場はあるんです。