公共工事の費用削減に伴う施工業者の利益率減
まず施工業者が虚偽書類を作成したくなる一番の要因は、施工業者の利益が上がらないという点である。不正は絶対に許せないが、私自身、虚偽書類を提出したくなる施工業者の気持ちは分かる。
事実、公共工事の経費を削減され、普通に工事をしてしまうと赤字になってしまう工事が多いのである。厳密に言えば、利益の出る工事のほうが少ないと言える。「経費が削減されているのだから、少しでもどこか材料などで費用を浮かせて赤字を避けなければ会社が成り立たない」という思いが現場にはあるのだ。
私は、施工業者が虚偽書類を提出してしまう背景には、工事の直工費自体が下がってしまったことが深く関係していると考えている。
進歩し過ぎた施工現場の情報デジタル化
また最近では、デジタル技術の進歩が書類偽造に一役買ってしまう可能性も高まってきた。ICT技術は非常に便利なのだが、虚偽書類を作成しやすくなっているのは事実である。例えば「工事写真」が一番分かりやすい例である。
実際、工事写真にまつわる虚偽書類で処分を受けた施工業者が出てきた。道路舗装工事において、昼間に施工を行っていたが、写真編集ソフトのフォトショップを使用して背景を夜にした。そして夜間に施工したことにして、費用を不正に多く受け取っていたのだ。告発があって全てが明るみに出たので、この施工業者は処分を受けたが、虚偽書類を作成しやすい環境になってしまったことは事実である。
写真を編集するフォトショップや、ワードやエクセルの機能をふんだんに使用すれば、社員などの印鑑も偽造できてしまう。建設業で有名な写真整理ソフト◎◎◎でも、黒板の誤記などを写真の画面上で塗りつぶし、文字を差し替える事が出来る。元々この機能は便利なのだが、その気になれば間違った使い方もできてしまうから考えものである。
デジタル技術の進歩に伴い、われわれ施工業者の良心も問われていると言えよう。