目の前にモノがあるのに出荷できない!
──どんな障害とぶつかったのでしょうか?
石原 まずタイミングが悪かった。2009年にシステムが完成しましたが、リーマンショックの影響で大きな物流倉庫を確保するといった投資が難しくなりました。
やむなく東京都葛飾区の本社内に設けた小さなスペースでテスト稼働を開始しました。場所と人員が限られるなか、1日あたり数十件といった受注・出荷業務を積み重ねていました。
一方、社会の動向を見ながら、私たちの条件である〈コストが安く〉〈本社から15km圏内〉〈充分な在庫スペースがある〉にマッチする物件探しも進めていきました。
そして2010年2月、千葉県柏市に関東デリバリーセンターを開設しました。社内に時期尚早の声もある中での決断でした。

関東デリバリーセンター(千葉県柏市)の内観
不景気で1年後ろ倒しになったものの「さぁここから本稼働」というところで、また躓きがあったんです。
関東デリバリーセンターでは今、約50名のスタッフが正確な業務を行っています。しかし、稼働開始時のメンバーは全員素人。本社から異動した社員は、金物知識があっても、新しい物流システムへの理解が足りませんでした。
しかも、新規雇用のパートや派遣スタッフは、双方の知識と経験を持っていません。基本と言える商品番号の登録ミスで、目の前にモノがあるのに注文を打てない!出荷できない!という状況に陥ってしまいました。
スタートからの1週間は大混乱でしたね。機能は既にここへ集約していたので、当社の配送業務は滞ってしまいました。
――どのように改善したのでしょうか?
石原 この状況から一刻も早く脱却すべく、当時の役員や社員、派遣スタッフなどが総出で配送業務を行いました。すると、オペレーションは翌週から少しずつスムーズになっていきましたね。
また、作業効率を良くするためセンター内のレイアウトも変更し、およそ1カ月後にセンターは正常かつスピーディに動くようになりました。
デリバリーセンターのスタートにも躓きがありましたが、この期間に全フローを徹底的に見直したことで、以降は責任者が細かく指示しなくても、正確に作業できる環境ができあがったんです。
すると、お客様と当社営業から『注文した商品と数量が正しく入っている』という反響がたくさん還ってくるようになりました。
そんなこと当たり前だろうと思う方もいるでしょう。しかし、ARROWS以前は完全にアナログ作業。たとえば当社金物には付属のビスが付きますが、このセッティングも人の手で行っていました。そのため、本製品とビスの数が合わないということが日常的に起こっていたんです。

ハンディターミナルとPCで受注や履歴の情報共有が瞬時にできるARROWS。人的ミスが無くなった
ARROWSでは新しいビスのピッキング方法を導入し、本製品と付属品の定量に食い違いが起きない、人間がミスをしないデジタルの作業環境をつくりました。