伝えられずにいた土木を感じてもらえた
デミマツは、授業の前後に学生にアンケートを実施した。「授業を聞いて『土木』に興味を持ちましたか」という質問に対し、19名が「興味を持った」と回答。その理由には「災害から命を守れる国造りを行いたいと思ったから」、「これから土木で何をしていけばいいのかなどがわかったから」、「土木の世界って思っていたよりも奥深いなと思ったから」などがあった。
「講義前後で変化しましたか」の質問には、15名が「変わった」と回答。その理由では「土木は大切な仕事だけど、地味な印象があったが、土木が昔の偉人から受け継がれてきた話を聞いていて、とても華やかな世界だと感じました」、「今までは土木は力仕事をするというイメージであったけど、技術をたくさん使って仕事をすることが素晴らしいと思ったから」などがあった。
特別授業の手応えについて、デミマツの二人はこう話す。
デミ 今回は、一方的な講義だったので、手応えとかはあまり感じることができませんでしたが、アンケート結果から高い評価をしていただいていたので、やり方自体は間違っていないんだろうなと思いました。次回は、双方向の講義をして、本音や不安を引き出し、それの解決方法を一緒に考えたりするとともに、さらなる土木に対する憧れを醸成していきたい。
今回、一番印象に残ったのは、子どもたちが目的意識を持ち進学していることである。この目的意識を削ぐことなく、教育することができれば、きっと世界で活躍する土木技術者の卵として成長してくれるでしょう。将来が楽しみです。デミーは応援しています!!
マツ まずは土木の価値と使命を理解し、我が国の数千年の歴史の中で土木がどのように社会に貢献してきたかを知ってほしい。そして、高専で学んだ専門知識を活かして、楽しんで仕事ができる技術者に育ってくれたらうれしい。
名木野准教授はこう振り返る。
名木野 物事には、色々な視点からの景色(多面性)がある。今回、新入生への土木工学の動機付け教育の一環としてデミマツのお二方に特別講義を依頼した。普段の都市・環境工学概論の授業では課題や試験などの評価に加え、授業担当者(小生)の教授力不足も相まって、学生達に本当に感じてほしい”土木”を伝えられずにいた。
今回の特別講義の最大の教育効果は、デミさんとマツさんのこれまでの経験に基づいた視点から学生達に”土木”を伝えてくれたことに尽きる。学生達は評価を気にすることなく、伸び伸びと受講していた。講義の効果は、アンケート結果から確認できる。
自分が進むべき道(自分の将来の目標や夢)が分からず、悩むのは誰もが同じ。その悩みのトンネルの出口は、様々な経験や体験により知識(情報)を増やし、人との出会いなどにより”心が動かされたとき(感動や憧れなど)”に見えてくると思う。
“土木を正しく知ること、感じること”は、トンネルの出口の明かりに繋がっている。焦らず、自分のペースで色々なことに挑戦し、悩み、考えることで、自分の進むべき道を”自分”で見つけてほしい。もう一つだけ欲張ると、これからも人との出会いを大切にし、まわりから必要とされるような思いやりのある優しさを持った技術者・研究者に育つことを願っている。
――人は、知らないことに対して、興味を持つことはできない。興味を持つということは、まず知ることに尽きる。この点、今回の授業を通じて、多くの学生が「土木を知る」ことができたことは意義深いと言える。