新幹線が開通していないのは四国だけ
――山本議員が四国新幹線に関わるようになったきっかけは?
山本有二 10年ほど前、四国電力の社長、会長を歴任した千葉昭さんという方が「四国に新幹線をつくりたい」ということで、私のところに相談に来られました。その際、四国経済連合会の「四国の鉄道高速化検討準備会」がB/Cの基礎調査を行ったところ、「1.03」という結果が出たとおっしゃいました。この情報は、私だけでなく、すべての国会議員に共有されたと思います。
四国新幹線はすでに基本計画が存在しますが、「夢の計画」だと考えられていました。というのも、この基本計画には、紀淡海峡トンネル、豊予海峡大橋がビルトインされており、新幹線が和歌山から鳴門に来て、四国を横断し、佐田岬から大分に抜ける計画だったからです。第2国土軸を形成すると言える計画ですが、高知は通らない計画でした。
ところが、千葉さんが考える新幹線ルートは、岡山から本四連絡橋を通って、四国中央市を経由して高松、徳島に至るルート、四国中央市から松山に至るルート、四国中央市から高知に抜けるルートと、3本の枝分かれルートでした。四国中央市から高知に抜けるルートは、95%がトンネルのほぼ直線で、延長は43kmというもので、所要時間は10分少々ということでした。
千葉さんは「(このルートを元に)与党でウォーミングアップしていただき、国会議員のみなさんと一緒に成案づくりを進めたい」とおっしゃいました。私は「一緒に成案づくりをするなら、お付き合いしましょう」と申し上げました。

四国新幹線整備のイメージ(四国新幹線整備促進期成会資料より抜粋)
地域経済の低迷、地域の人口減少、都会での就学就労には、当時から与党としてわれわれは頭を痛めていました。新幹線ができれば、地域経済の活性化につながるし、地元に残る若者が増え、人口増加や就学就労者の増加につながるのではないだろうか。私は「これはやってみようじゃないか」と考えました。自民党四国ブロック両院議員のブロック会議も行われ、「やろう」ということで一致しました。

山本議員の高知市内にある事務所に掲げられた看板
――山本議員は、自民党の四国新幹線のPT座長に就いていますね。
山本有二 自民党として、このプロジェクトを誰がこれをまとめるかという話になり、当時道路調査会長をやっていた私に「同じ公共事業だから」と白羽の矢が立ち、自民党の新幹線プロジェクトチームの座長をお引き受けしました。
イギリスに鉄道博物館という施設があります。こちらに日本の新幹線を紹介するパネルが展示されていたのですが、日本列島の地図の中に四国が入っていなかったんです。四国に新幹線が走っていないからです。海外から見ると、日本はそう映っているわけです。これがきっかけになって、国内の「四国新幹線は必要だ」という機運が高まった経緯があります。
当初は在来線の高規格化(時速160km運転可能な規格)が四国には最適だと考えていました。新幹線のルート(経由地)や駅の設置位置によって四国内での政治争いや不毛な不要論が発生すること、「並行在来線経営分離問題」や「新幹線の有る無しによる地域内格差」を心配したからです。
けれど、(四国以外の地域にも)新たに新幹線を敷くのであれば、「線路が新たに敷設される」という特性を活用して沿線の地方空港経由にしていく。そして将来的に新幹線と地方空港・航空とを連携した交通体系を築くことができ、「地方同士」の交流を促進できます。そのような観点や、山陽新幹線のバイパス・予備機能を備える と言う観点から四国新幹線の必要性を感じるようになりました。
上記で申し上げた、新幹線による地域内格差等の問題を最小限にするためには、「新幹線と在来線がお互いに連携し、長所を組み合わせ・短所は補い合う」という考え方に基づいた経由地・駅の設定を心がけることが必要です。併せて、新幹線と在来線が互いに補い合うような列車の運行体系も必要です。この観点を踏まえた具体的な経由地・駅設定議論を今のうちからお願いします。
なぜかというと、それだけの「熱意」を国や他の地域に見せること、新幹線による地域内格差を最小限にしようとする姿勢を見せることで新幹線事業への不毛な批判や悪意を持ったマスコミによる悪質な印象操作をさせにくくするためです。
なお、
記事では高知方面は四国中央市から直接高知市方面に南下する経由地が出ていましたが、個人的には観音寺駅から阿波池田駅を経由し南下するルートを取ると、上記で申し上げた「新幹線と在来線が互いに補い合う関係」の鉄道路線網が出来上がります。
そして、最後、新幹線実現に最も大事なことを申し上げます。
それは、「他の新幹線誘致地域と協力して各地の新幹線を実現させていく・我が地域だけで無く日本全体の国益を考えた新幹線整備をしていく、という考え方で誘致活動を行なう」
というものです。この考え方に基づいた誘致活動は絶対に忘れないでください。
現在日本の各方面を見渡して見れば、鉄道が通っていない地方は過疎化が進む一方でとてもこの状況を放置すれば、ますます過疎化が進み、日本の国力の低下を招き、先進国からの転落は火を見るより明らかであり、其の上ますます少子化に拍車が掛かり今後の日本社会は暗い社会を迎える結果と成りますので、日本の発展に向けて四国は基より鉄道過疎地の山陰地方とも力を合わせ一日も早く実現させる様ご尽力下さい。
四国新幹線は、是非ともフル規格で実現していただきたい。また、北陸新幹線が東海道新幹線の代替機能を果たすように、四国新幹線は山陽新幹線の代替機能を発揮していただきたい。まず、東端の鳴門市から西端の八幡浜市間に基幹となる幹線を敷き、東は淡路島経由で神戸、大阪へ接続させ、西は佐田岬・国東半島経由で小倉、博多へ接続させてほしい。
この基幹となる幹線から枝分かれする形で4県の県庁所在市など主要駅に接続していただきたい。
本当に四国新幹線(一部単線区間含めた「フル規格」)を実現させたいなら、「整備計画」に格上げしたいなら、まずは
新幹線と在来線が連携・補い合いが出来るような駅の配置・列車の運行体系を築く姿勢
これを誘致関係者や対外的に明確に示すことです。
「並行在来線経営分離問題」(←地域内格差や対立のもと)を最小限にする見地を提唱すると不毛な反対や不要論を抑えられ、機運が高まるからです。
また、在来線もJRで運営できるような駅の位置や列車の運行体系・そして制度の模索する。並行在来線への支援として 駅の新設・より適した場所への移設・各停や快速の充実した運行が出来る費用補助、駅周辺に生活や仕事ができる施設の集約などが考えられます。
次に、
沿線空港を途中経由地に組み込み、新幹線は在来線と沿線空港を結びつけるようにルートをつくっていく。新幹線では地方同士の航空路線就航を促し、東京・大阪以外の地方同士での経済的結びつきを促す考えを内外に明確に訴えることです。
東京・大阪に事業拠点や生活拠点を置かなくても地元で生活できるような経済構造にするためには「地方同士」での経済活動が欠かせない。交通網が整っている地域同士でビジネスも起きる。
今のうちから在来線に乗り、理想的な駅の位置や列車運行体系を考え、提案できるようになってください。
最後に、一番大事なのは
山陰・奥羽・羽越・東九州など他の新幹線誘致地域と協力関係を築くこと、空港経由新幹線開業後はその地域同士の経済交流を図る見地を共有することです。
四国新幹線はまず県庁所在地を結ぶルートと岡山を繋いで、余裕ができたら後で関空がある大阪の方と、九州の方を結んでほしい。
リニアの開業に間に合わせると東京まで短時間で結ばれるから頑張ってほしい。