「良い会社に入ったなあ」
――JFEエンジに転職してどうですか。
瀬尾さん JFEエンジは、プロパーと中途採用者のカベがなく、仕事がしやすい環境で、中途入社でも能力を公正に評価してもらえていると感じます。「良い会社に入ったなあ」と感謝しています(笑)。
仕事の内容は前の会社と基本的に変わりませんが、とにかく仕事の規模が大きくなりました。大きなモノを動かす緊張感は増しましたね。
――JFEエンジではどんな仕事を?
瀬尾さん まず携わったのは、東日本大震災で壊れた橋の復旧工事の現場です。宮城県内の角田市と柴田町の2箇所を担当しました。
その後、首都高の大規模更新事業を担当しました。この現場は、中央環状線の利便性向上を目的として、東京都板橋区の板橋JCT〜熊野町JCT間で2層3車線の高架橋を4車線化するという工事でした。そして、今の現場に来ました。
――今の現場はどういう現場ですか?
瀬尾さん 東京都足立区の江北JCTから埼玉県川口市の川口JCTを結ぶ首都高速川口線の耐震補強工事の現場です。延長で言うと、10kmほどあります。
橋桁を支える支承部の交換、落橋防止装置の設置が主な仕事で、5つの現場に分かれています。交換する支承部は全部で2,523箇所、落橋防止装置は1,288箇所に設置します。事業費は180億円ぐらいです。
私は、これら5つの現場の総括として、現場に入っています。この現場には、設計部隊を含め、50名ほど入っています。
2018年にそれぞれの現場で工事に入って、いくつかの橋脚ではすでに支承部の交換が終わっており、塗装をやった後、足場を解体していくながれになります。一橋脚ずつ完成させていく感じで、完了は2022年の予定です。
「改築の仕事は、現場の人間が図面を書くんだ」
――改築がメインですか。
瀬尾さん そうですね。私は「新設よりも改築の仕事のほうがおもしろい」と思っているので、やりがいのある現場ばかりです。
とくに前の首都高の現場は、橋脚そのものを取り替えるという大規模な工事でした。車を通しながら、橋脚を取り替えていったのですが、こういう工事は、既存の工法などを使っただけでは、うまくできません。新しい方法を考えたり、新しい機械を使ったりしながら工事を進めたわけですが、それがおもしろかったです。
「改築工事の本質はなんなのか」というと、なにかに書いてあることをやるのではなく、その「ウラ側に何があるのか」を考えることだと思っています。マニュアル通りにやること「だけ」ではありません。そのためには、現場を見て感じて、その現場に合ったものをやることが大事だと考えています。
ただ、改築の仕事はやはりコワイです。ドキドキします(笑)。例えば、橋桁をジャッキアップして支承部を取り替えるのですが、道路には当然オートバイも走っています。橋桁にちょっとでも段差が生じると、大事故につながります。
従来は普通にジャッキをもんでジャッキアップしていましたが、実際の変位を可視化するなど、絶対に間違いがないように工夫しています。
――「改築のほうが面白い」というのは昔からですか?
瀬尾さん だんだんそう考えるようになった感じですね。若いころは、やはり「新設の大きな構造物をやりたい」という思いがありました。
ただ、ちょうど私が土木の仕事を始めたころから、長大橋プロジェクトがなくなって、メンテナンスの時代になりました。そういう時代の流れもあって、大きな構造物をドーンとつくるのではなく、改築での難しい仕事をやり遂げるおもしろさにだんだん目覚めていったようなところがあります。
大きな構造物であったとしても、危ない工事はある一点だったりすることが少なくないんです。高いレベルの品質を求めていく上でも、現場の安全管理を徹底する上でも、局所的なところを詰めていくのが楽しいです。
周りには「改築の仕事は、現場の人間が図面を書くんだ」と言っています。竣工図をもとに工事を進めると、手戻りが多くなりますし、まず失敗します。やはり、実際にモノをつくるのは現場なので。