困っている人がいる限り、土木技術者はやんなきゃいけいない
――応急復旧などの緊急工事を担当することもあるのですか?
瀬尾さん ありますね。緊急工事で言えば、台風で大きな屋根が飛んで、道路に覆いかぶさったことがあったのですが、その撤去作業を担当したこともあります。夜中の作業で大変でしたが、そういう仕事もやりがいを感じます。
現地でCADを引くわけにはいきませんから、電卓を叩いて、こうするああすると決めてやっていく感じが好きです。困っている人がいる限り、土木技術者としては、やんなきゃいけないんです。
――大変だった現場は?
瀬尾さん 首都高の4車線化の現場ですね。2層構造の高架橋を支えるラケット型の橋脚だったのですが、道路の上にも橋脚の梁があるような構造だったので、これの取替えは大変でした。しかも3車線のうち1車線は車を通さないといけませんでした。
当然、機械のテストなど事前に色々準備をするのですが、アタックするのは一発勝負なので、その瞬間はものスゴく大変でしたし、ピリピリしますが、スゴく興奮しました。
橋桁をジャッキアップする際、設計段階でひずみや反力などをシミュレーションした数字はあるのですが、現場では、実際に車が通ったりして荷重がかかったりするので、まったく違う場合があります。それをどう読むかが難しいところです。数ミリ単位で橋桁を上げていくのですが、問題が起こらないよう見極めながら慎重に行いました。
支承を取り替えて、橋桁を戻す際にも、設計思想通り戻す必要があります。橋桁の反力をうまく橋脚に伝えないと、工事そのものが無意味になってしまいます。
例えば、4つ主桁があったとして、真ん中の主桁が全然効いていない施工をしてしまったら、「改良工事」ではなく、「改悪工事」になってしまいます。
「事故があって、良い勉強になった」は大きな間違い
――日々の仕事で気をつけていることはありますか?
瀬尾さん 自分自身のチェックですね。自分で自分をチェックするのは難しいです。自分が「こうだ」と思ったことが正しいかどうかは、自分でチェックできないからです。自分が現場のトップだとしても、周りからなにか指摘された場合には、真摯に耳を傾けるようにしています。
会議などのかしこまった場だけでなく、雑談中でも確認することにしています。自分で落とし穴を掘ちゃうこともあると思うので、自分では気づかない落とし穴を埋めるような感じです。
中には、自分の考えを押し通そうとする人がいますが、選択肢が一つしかないということはないので、私はそういうことはしないよう心がけています。
――安全管理のためにやっていることは?
瀬尾さん 毎日夕方の5時半に全員集めて、10分間ほど工事のポイントなどを伝え、情報共有するようにしています。メールなどで情報共有する手段もありますが、「読んどけよ」と言っても、誰も読まないので(笑)。
たまに「事故があって、良い勉強になった」という人がいるんですが、絶対そんなことはなくて、そういうことを言う人は考え方が根本的に間違っていると思います。過去の事故事例なんか沢山ありますから、経験して覚える必要はないです。