災害派遣中に民間業者と同じ作業?
前置きが長くなりましたが、ここからようやく東日本大震災における私の災害派遣の体験談をお話しします。
当時、派遣された現場は津波の被害を受け、多くのがれきが散在している漁業を中心とした港町でした。漁船は陸に打ち上げられ、周囲の建物は倒壊もしくは壁がなく、主要構造物のみが残された無残な現場でした。周囲には海産物の加工工場も多く、工場から流されたと思われる資材なども散乱していました。
自治体の話では、道路に散乱しているがれきを除去し、交通路を確保してほしいとのことでした。当初は建設会社が活動できるような状況ではなく、私たちと陸上自衛隊で協同して、がれき除去・運搬に従事していました。
作業は朝8時から夕方5時まで毎日交代で行われました。作業後には、自治体職員と次の日に向けた作業打ち合わせを毎日行い、翌朝がれき除去・運搬を繰り返し行っていました。
約2週間が経過すると、夕方の打ち合わせに建設会社が数社参加するようになっていきました。自治体の説明では、民間企業も活動を再開することが可能となりつつあることから、エリアを分けて自衛隊とがれき除去を行ってほしいとのことでした。
その日の夕方の打ち合わせが終わってから部隊に帰り、民間会社ががれき除去に参加しはじめたことを上司に報告しました。
すると上司は「民間が動き始めたのならば、俺たちの活動の場はなくなるなあ・・・。明日の打ち合わせには同席するよ」と言いました。次の日、私は待機に指定されていたので、部隊で器材の整備や書類事務をしていました。
そして夕方、上司が帰ってきてから作戦会議の招集がかかりました。上司曰く、「がれきの量が多く、建設業者だけでは速やかな撤去は難しいから、しばらく災害派遣は継続する」とのことでした。
会議後に上司と話をしたのですが、夕方の打ち合わせの場で民業圧迫について説明し、自衛隊の撤収時期の検討を自治体に要請したそうです。しかし、自治体も混乱しており、「被害状況がつかめていないので、しばらく自衛隊には活動を継続してほしい」と懇願されたとのこと。
そして、上司からこれからの夕方の会議のたびに我々の撤収時期を検討するよう、繰り返し要請するよう指示を受けました。
自衛隊が災害派遣活動をすることは周囲に大きな影響を及ぼします。
私は大きく3つあると思います。
①国民の生命・財産の安全確保に寄与
②自治体の予算に影響なく復興活動が進む
③国土防衛上の空白が生じる問題(特に南西方面)
②については、民業圧迫の問題があるので政府と自治体は線引きを明確にしなければならないでしょう。
③は自衛隊の本来任務の国防に影響をきたすことから政府が自治体に理解してもらうよう引き続き働きかけていかなければならないのでしょう。
被災地出身の隊員は撤収することに対して抵抗を感じるかもしれません。しかし、自衛隊の撤収からが本当の復興の始まりなのではないかと私は思います。
昨年の千葉の台風で、10月になっても自衛隊の人達が、屋根にブルーシートを掛けているのには違和感を感じました。
主に、空き家をメインにしていたように思います。
一般の家屋は、工務店が既に掛け終わっていました。
これは、後から瓦の修理工事を請け負うためであるのは明らかです。
緊急事態が終わったなら、後は自治体が対応するべきなのに、
自衛隊は費用がかからないからだというのは、部外者から見ても明らかでした。
これで、民業圧迫と言われたら、危険な作業をしている隊員達としてはいたたまれない気持ちになります。
名前は自衛隊でも、あくまでも国防軍なのですから、
自治体に対しても、言うべき事は言えるという制度にしなくてはならないと思います。