20万円で買ったドローンをいきなり実際の現場に投入
そこで2014年、新たにドローン導入に踏み出す。SfM(写真測量)が目的だった。「仕事に使えるかどうか、とにかく調べまくる。ただ、新しい事例なのでそんなに情報がない。自分の中で半分ぐらい使えそうだと思ったら、チャンレンジする」。これが松尾さんのやり方だ。
ただ、SfMができると言われていた当時のドローンは数百万円と高額なモノばかり。とても買えない。海外での事例なども調べていく中で、「DJIのPhantom3でもできる」という情報を見つける。専用のカメラがついて、価格もヒトケタ違う。そこで社長に「20万円だけ出して欲しい」と交渉し、導入を果たした。ただ、当時のまわりの人たちからは「そんな機体じゃ絶対に測量できない」と言われたこともあった。
そもそも松尾さん自身、ドローンを操作した経験がなかった。詳しい人に操作を教わりながら、毎日近くの公園でドローンを飛ばして、操作、データ解析を覚えていった。そうこうしているときに、道路の新設工事の仕事が出た。ぶっつけ本番ながら、SfMを試すことにした。マニュアル飛ばしだったが、ラップ率も良好で、Phantom3でのSfMデータ取得に成功する。3D点群処理システムなどを導入したのも、このころだ。
i-ConのためにICTをやっているわけではない
ドローン測量をきっかけに、ソフト会社に請われて、成功事例を紹介する全国セミナーを回った。ただ、「実は、ウチはいわゆるi-Conの現場は未だに一度もやったことがない」と言う。国の工事はやっていないし、県や市でICTを使って工事したが、i-Conがスタートする前だったので、カウントされていないからだ。そんな松尾さんがICT施工に関する講師として全国セミナーを回っていることを考えると、なかなか皮肉が効いている。
ただ、この点、松尾さん自身は至って淡白だ。「ウチはi-Con関係なく、自分たちのためにICTを使っている。点数や実績欲しさにやっているわけではない。ICTを使うことによって、それまで10のリソースをかけていた仕事が、8で済むように成る。浮いた2のリソースをほかの仕事に振り向けることができる」からやっているにすぎない。別にi-ConのためにICTをやっているわけではない。
松尾さんがICTに情熱を注ぐのは、あくまで「実際に作業で動いている人々の日々の仕事をラクにするため」だ。「3Dをやるやらないは技術の問題ではなく、ハートの問題だ。ヤル気さえあれば、すぐにできる」はずなのに、いくら国がお膳立てしても、なかなかICT施工に踏み出さない建設業界ってなんなの?という思いがある。