やっぱりダムはあったほうが良かったんですかねえ
ほぼ忘れ去られているとは言え、川辺川ダム関連の残骸らしきものを目にすることができたのは、それなりの収穫だった。半ば探検気分で、あちこち巡っていたわけだが、「ここにダムができていれば、どうなっていたんだろう」という思いが頭を離れなかった。
ダムが溜めることができる水は、五木村から上流に降る雨だけなので、下流域や球磨川に降った雨をすべて食い止めることはできないのは当然だ。だが、治水の目的は、流入する土砂をすべて防ぐことではなく、少しでも流入量をカットして、河川などのオーバーフローのリスクを減らすことにある。やはり、仮に1億㎥の土砂を食い止めていれば、下流の氾濫リスクは確実に低減されたはずだというのが、私なりの結論になる。

五木村中心部の様子
私の心情などはどうでも良いが、それを最終的に決める熊本県民、とくに川辺川ダム周辺の住民が、川辺川ダム建設中止の是非についてどう思っているのだろうということも、気になることだった。ただ、パンデミック状態が続く武漢ウイルスのことを考えると、あちこち聞いて回ることはできなかった。
それでも、たまたまダム近くの住民と世間話をするチャンスに恵まれた。それとなく水を向けると、「やっぱりダムはあったほうが良かったんですかねえ」と笑いながら答えた。この言葉が地元住民の本音だなどと印象操作するつもりはないが、非常に自然で、率直な言葉だと感じた。「常識を持っていることは心が健康状態にあるのと同じこと」という言葉を思い出した。
地元にダムがあったおかげで7月豪雨災害は免れたかなと思います。