豊肥本線のスイッチバックも健在
熊本市内に向かうときは、豊肥本線に乗ってみた。「スイッチバックを経験したい!」と思ったからである。豊肥本線の肥後大津駅~阿蘇駅の間は、熊本地震の大規模土砂災害による崩壊で不通となっていたが、2020年8月8日に運転が再開された。

豊肥本線交差部付近を望む
豊肥本線の立野駅~赤水駅の間は、九州で最も急な勾配区間と言われており、普通に登ることができない。そこで、立野駅と立野駅近傍の2か所にスイッチバックを設けている。スイッチバックのたびに進行方向が変わるという体験は、初めてであり新鮮であった。
途中、崩壊した阿蘇大橋と建設中の新阿蘇大橋を車窓から眺めることができた。崩壊した阿蘇大橋の付近では駐車スペースがあり、崩壊した様子を見ることができる。震災を風化させないという意向があるのだろうか、崩れた道路の一部がそのまま残されている。
また、新阿蘇大橋は先日上部工がつながったばかり。現在は舗装や排水設備、照明設備の工事や仮設構造物の撤去工事が進められていると思われる。
上部工はもちろん、基礎工や下部工も阿蘇特有の条件に苦しめられたのではないか。ほんのわずかな時間しか見ることができなかったが、橋梁工事というよりダム工事に近いような印象を受けた。
工事を担当した大成建設にとっても、かなり難儀な条件下での施工となっていると推察されるが、かなりの高速施工を実現し、来年3月の供用開始を確実にしたというのは、大成建設の総力を挙げた成果と言えるだろう。
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通ったからこそ感じた「課題」
一方で、今後の課題となりそうなことが1点。それは、二重峠トンネル内の空気があまりよくなさそうということだ。
自動車専用道路なので、歩行者や自転車が通るわけではない。しかし、バイクのライダーにとっては、少し過酷な環境となっているかもしれない。トンネル内は埃がとても多く、目の前が少し白くなっていた。このトンネルには、換気設備が設置されているのだが、おそらく換気できる容量を超える埃が舞っているのだと思われる。
まだ完成して間もないため、コンクリート舗装面から出てくる埃は多いのかもしれないが、トンネル内の環境改善には課題となりそうに思えた。トンネル点検に入るときのことも考え、いかにトンネル内の空気を良好な状態に保つかも、設計や施工の段階で検討していくことがいいのかもしれない。
こういった課題はモノが造られ、実際に供用されて初めてわかることである。造ったからそれでよしではなく、供用開始後はモニタリングするなど観察をし、課題があれば別の事業へフィードバックしていくことが大切になってくるだろう。