工務店が大型木造ビルを建築
木造の大型化・非住宅化が、近年になく進展している。京都府・向日市に本社を構える工務店 株式会社リヴは、注文住宅で培った大工の高い技術をもとに、本社ビルを大型木造建築で実現。建築業界に大きな衝撃を与え、スーパーゼネコンからも見学者が日参した。
その後、次々と大型木造建築に着手。中層クラスの木造建築の施工ノウハウを提供するサービス「地産木造ビル推進本舗」事業も開始し、最近では日本初の木造5階建てホテル「ホテルディスカバー京都 長岡京」で『グッドデザイン賞2020』を受賞している。
「大工や地域工務店が建てる木造ビルを建築する事業を本格化させ、地元産材を使い、国や地域に貢献したい」と語る波夛野賢社長に話を聞いた。
「工務店なのに、自社を木造で建てないのはおかしい」

株式会社リヴの波夛野賢社長
――リヴの設立経緯をお願いします。
波夛野社長 創業して22年になります。1993年5月に不動産仲介会社をオープンし、元々は分譲や注文住宅の販売を手掛けていました。その2年後に、これからは集客する上でブランド力が必要だということで、ある不動産フランチャイズの加盟店になり、1998年10月に建築会社・リヴを設立し、分譲住宅事業をメインに手掛けています。
分譲住宅を選んだ理由は、不動産の仲介の仕事をしている時に、住宅はお客様にとって一生に一回の買い物であるにもかかわらず、土地を持っている業者の力が強いため、どうしてもパッケージとして建売住宅を買われていくことが多かったんです。その業界慣習に強く疑問があって、土地は当社が購入し、主に2×4工法を使った注文住宅を提案しています。
――なぜ木造大型建築事業をスタートした?
波夛野賢社長 5年前に本社ビルを建築したことがキッカケです。元々は地元のゼネコンにRC造ビルの施工をお願いする予定だったんですが、よくよく考えてみたら、私たちはお客様に「木造住宅は素晴らしいですよ!」と宣伝しているのに、自社を木造で建てないのはおかしいな・・・と思いまして。そこで、5階建てのビルを木造で建築できないか、社内で調査を始めたんです。
いざ調べてみると、木造建築に関する規制緩和も進展していて、あるハウスメーカーは2×4工法で木造耐火建築5階建ての実例物件を東京・銀座で建てていたので、当社もチャレンジすることにしました。期間としては、建築確認に1年、施工に1年の計2年を掛け、自社の職人で施工しました。その後、「これは世の中に普及できる」と確信し、大型木造建築を事業として開始しました。

完成したリヴ本社
――日本初の木造5階建てホテル「ホテルディスカバー京都 長岡京」は、『グッドデザイン賞2020』を受賞した。
波夛野社長 土地が60数坪しかない中でしたが、1~2階がRC造、3~5階を木造としています。長岡京市は、京都・大阪のベットタウンという土地柄で、観光客やオフィスはそれほど多くはありませんが、長岡京市からはなんとか観光客を誘致したいというお話もあったため、1階はホールにし、今はコロナでできませんが、地域のイベントも開催できるような工夫もしました。
当社は地域工務店として、地域の方々に喜ばれるような施設を建築するということを旗印にしているので、グッドデザイン賞を受賞したことはとても嬉しいことですね。

グッドデザイン賞を受賞した「ホテルディスカバー京都 長岡京」