木造ビルは注文住宅の延長線、何も変わらない
――建築後の反響はあった?
波夛野社長 注文は増えていますね。実例では、スーパーやコンビニのほか、SDGsも後押しして、銀行や公的団体の施設などでも、地域の木材産を使って建築していこうという動きが高まっています。ここまで来るには相当な研究費を投入してきましたが、それが今、結実している形です。
――今、全国でも木造化が進展していますが、顧客は何を期待をしていると感じる?
波夛野社長 価格が安いこと、そして不動産投資家からの視点で、減価償却が早いことですね。他にも、老人ホームや幼稚園も建築しましたが、コンクリートと比べて、足腰の負担が減って、ほど良い居心地感もあると評価いただいています。また、京都の場合、埋蔵文化財も多いですが、RC造と比べて深く掘削して基礎を造らずに済むことも土地柄として大きなメリットかと思います。
――デザインにもこだわりがありますね。
波夛野社長 木造だから、デザインにこだわれるんです。RC造ではいかにも”ハコモノ”というデザインになってしまいますが、木造では自由度も高いので、京都にある工務店として、まちづくりの一環として外観デザインの良い建築物を建てることを意識しています。注文住宅の延長線上という感覚ですね。

リヴが施工した株式会社京タンスの事務所ビル(木造3階建て)
――施工については。
波夛野社長 注文住宅を建てているメンバーがそのまま担当しています。大型木造建築の専門の職人は、電気屋さんくらいですね。普段の住宅現場と比較すると足がすくむような現場ではありますが、それ以外の部分はまったく一緒です。ですから、”大工や工務店が建てるビル”というイメージです。
フランチャイズで施工ノウハウを全国共有
――事業はどのように拡大していく?
波夛野社長 いま、全国の地域工務店を対象に、中層クラスの木造建築の施工ノウハウを提供するサービス「地産木造ビル推進本舗」事業をフランチャイズ(FC)形式で展開し、施工ノウハウをすべて提供しています。
これには、地域工務店が元気になる材料としてもらえるよう、地元の木材を使い、地元の職人さんが施工したものを、地元のお客様に提案できる道を開きたいという思いがありました。
特に、当社は京都圏内が営業エリアですので、東京等の別地域は競合ではありませんから、同じ地域工務店の仲間として一緒にやっていくという意識のほうが強いです。それに、各エリアの工務店が地元木材を使えば林業にも貢献できますしね。
現在、加盟会社は8社で、その地域で住宅年間100棟を建築しているような規模の工務店が多いです。また、一部、公共工事を行っている会社も加盟していたり、最近では設計事務所の問い合わせや地域ゼネコンが増えていますね。
今は神奈川県のFC加盟会社が、同県と連携し、地元県産材を使って4階建ての賃貸マンションを建築するプロジェクトや2,000m2規模のホスピスでの物件も具体的に動き出しています。
木造大型建築で、住宅の受注数を補っていく
――FCを進めていく上で課題はある?
波夛野社長 当社は不動産事業も抱えているので、自社で土地を取得し建てることができますが、FC加盟会社からは施工ノウハウはあっても、受注方法が分からないという声があります。そのため、まずは設計事務所が大型木造建築工事を受注し、それをゼネコンが施工を担当し、その下請けとして工務店が入る方法が今はベストなルートだと考えています。FCとしても、設計事務所の加盟を推進していくつもりです。
――大手との連携も進めていく?
波夛野社長 三菱地所との協業を進めています。元々、2×4工法の材料は三菱地所住宅加工センターから提供を受けていた経緯もあり、三菱地所としても2×4工法での木造建築の大型化のノウハウを積み上げていきたいという考えがあり、FCの事務局に1人出向していただいています。
現在は、三菱地所住宅加工センターと連携しながら、全国の県産材を使って、2×4工法の材料を全国に供給する仕組みをつくり上げています。
――これからの地域工務店の在り方については。
波夛野社長 ゼネコンは木造についての知見が少ないと感じているので、私たち地域工務店が木造大型建築の知見や経験を積んでいれば、これから公共工事、ホテル、商業施設の案件にもゼネコンとともに携われることになり、結果として住宅建築の受注数減少を補っていくことが可能だと考えています。
工務店業界では問題が山積していますが、これからも新しい工務店の在り方を模索しつつ、地域工務店として地方自治体や地域住民の方々のために尽力していければと思います。
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