バズるために過激な行為や迷惑行為を行う
建築の発信に限らず、インターネット上で発信を行う目的・目標は、やはり「多くの人の目に留まること」ではないでしょうか。
しかし、多くの人がネット上で発信を行っているため、大抵は埋もれてしまいます。また、インフルエンサーと呼ばれる、SNSプラットフォーム内においてフォロワーが多く、発信の影響力が高い人物に注目が集まってしまう世界です。
では、インフルエンサーにはどうすればなれるのか?自身の発信したものが注目を集める(いわゆる「バズる」)ためにはどうすれば良いのか?
このバズるための方法として、決して推奨できない、しかし普及してしまっている方法があります。それが「炎上」と「ヘイト」です。
炎上とは、ほとんどの場合が、非難を受けることで注目を集める手法です。近年問題にもなっている、過激な行為や迷惑行為をすることで注目を集め、動画の再生回数を稼ぐ「迷惑系Youtuber」が現れたのも記憶に新しいと思います。
最近では、建築の世界でも、そういった迷惑系Youtuberが増えてきています。以前、ある建築家を自称するYoutuberが、動画を転載してほしくないという取材先からの要請に対し、一方的に連絡をブロックするという事態が発生しました。
幸い、転載された側は動画の公開が中止されたことでこの問題は終結しましたが、このことはSNSを中心に非常に話題となりました。
この行為は社会的信頼を大きく損なうものであり、多くの人間と関わり、多額のお金が動く建築の世界において、非常に悪影響を及ぼします。簡単に考えればわかりますよね。「約束を一方的に反故にして、連絡手段も一方的に断ち切る人と仕事をしたいですか?」ということです。
建築業界に対するヘイトで共感、注目を集める
さらに、炎上と並んで多いのがヘイトです。特定の業界、人物などの文句や不平、不満を言い、それに共感、同調する人を集め注目を集める行為は、インターネット上で非常に多く見られます。
建築の発信の中でも、そういった投稿が散見されます。例えば、欠陥住宅や違法建築を紹介するものであったり、建設業界のブラックさを暴露するといった情報は、閲覧数や再生回数がとても多いようです。
その内容が事実であれば仕方がないですし、業界人として受け入れて改善していないといけない部分だと思います。しかし、最近では「建築業界は悪い」「ブラック」「オワコン(終わったコンテンツ)」と、完全に主観だけを主張する投稿や動画が増えてきているように思います。
それに同調するコメントが増え、拡散され、愚痴や文句はどんどん拡大し、陰口大会のような状態になっているものもあります。
多かれ少なかれ、建築業界に不満を持つ人はいます。というか、不満がない人はいないでしょう。それこそ、(今はできませんが)飲み会や、気軽に話せる友人に愚痴を言ってしまう、なんてこともあると思います。
しかし、この陰口大会のようなやりとりが加速すると、「自分の主張は支持されている、自分の言ってることは正しい」と錯覚し、悪口ではなく”正義の主張”と勘違いをしてしまい、より強い言葉を発するようになります。そして、無関係の人からは嫌悪され、どんどん周りから人が離れていってしまいます。
一連の行為は、自分の置かれている環境への不満を吐き出し、それにより快楽を得ているだけであり、その発信自体に意味は存在していません。
こういった発信をする建築の人間が増え続けると、「この業界は悪口を言う人しかいない」と見られ、業界全体に悪い印象を与えてしまいます。これは建築業界の魅力を伝える、という行為からは真逆の行為となってしまっています。
酸いも甘いも伝えることが大切
建築の世界には、当然悪い慣習はあります。解決しないといけない問題もたくさんあります。しかし、それだけでしょうか?建築業界は悪い部分しかないのでしょうか?
それは違います。建築の仕事が素晴らしい、良いものであるから、この業界は存在し続けられているのだと思います。その理由や魅力は、多種多様です。悪い経験、良くない上司や元請けもいますが、それもひっくるめて建築の魅力ではないでしょうか。
インターネットを使った発信は、「愚痴のはけ口」になってはいけません。だからといって、建築業界のキレイな部分だけを見せれば良いということでもありません。酸いも甘いも全て、建築の魅力として伝えていくことが大切だと思います。
そもそもナニを論点としてナニについて話し合いナニを決めるのか、という議論の前提がなく、またソレを参加者間で合意・共有することも出来ないですし、穏当で複雑な意見より過激で単純な意見のほうが目立ってしまう、という構造もありますからね。