国産木材を積極的に活用し、持続可能な社会を実現する
――事業としてはどのようなことを?
谷口氏 先ほど申し上げた、高品質の分譲住宅を普及していくことに加え、日本国内の木造分譲住宅の建築着工件数で上位を占める3社が連携することで、脱炭素社会の実現、地球環境保護と持続可能な社会づくりを目指していきます。
住宅業界は外国産の木材を多く使用している実情があります。元々は日本の木材で住宅を建築していましたが、外国産材の輸入品が安く、国産材が高いことから敬遠されるようになりました。それが日本林業の衰退にも繋がっています。売れなければ、製材しても仕方がないからです。
しかし、安い輸入材に依存した結果、国内森林は樹齢の高い状態で管理も行き届かなくなっています。その結果、森林のCO2吸収力も弱まり、保水力も減少しています。
保水力の減少によって、最近の台風の襲来では大雨などの災害時に鉄砲水を発生させる原因にもなっていますし、樹木のCO2の吸収量は齢級8~10(樹齢40~50年)をピークに減少するため、計画的な伐採と植林が必要です。木造建築物が普及することで木材需要が拡大し新たな植林が可能になり、持続可能な森林が実現するわけです。
また、国産材を使うことによって、輸送距離の短縮によりCO2排出量の削減を図ることもできます。加えて、我々首都圏を中心に分譲住宅を供給する分譲住宅会社が国産材を使用することで地方の林業が活性化し、地方経済に貢献できるのではという思いもあります。
まずは、3社の国産木材調達分100%である年間3万3,000本を山に還元する植林活動を展開していきます。これにより、「切る」「使う」「植える」「育てる」のサイクルを独自に構成し、環境負荷低減、大気、水資源などの森林保護に取り組みます。
――どこの木材を使用する?
谷口氏 東北エリアの木材を使用することになっています。3社のメインの商圏は首都圏で、関東に入る木材は東北産が圧倒的に多いためです。ですが、ゆくゆくは全国の木材を使用していくつもりです。
木材が不足する「ウッドショック」が日本を襲う
――しかし、木材の調達はかつてないほどひっ迫しているが。
谷口氏 今、住宅業界では「オイルショック」になぞらえ、「ウッドショック」という事態が発生しています。世界的な住宅建築の需要の高まりによって木材の価格が高騰し、輸入に依存していた外国産材の木材が入ってこない、もしくは高止まりしていると異常な事態が起きているんです。
木材の商社や問屋も全力で木材の確保に当たっていますが、過去に経験したことがない状況下にあります。今後は木材価格の上昇が見込まれるほか、すでに木材の取り合いも始まっています。そのため、住宅建築の工期が遅れる事態が全国で起こる可能性があります。
――「ウッドショック」の具体的な背景は?
谷口氏 アメリカでは住宅ローンの低金利政策を追い風に住宅販売が増えており、中国でも新型コロナ不況から脱して好景気へと転換しており、世界的に住宅建築需要が活発化しています。
アメリカは元々日本へと木材を輸出していましたが、米国産材の木材がほぼ入ってこなくなっており、かつては日本の商社も高騰した木材を購入できる余裕がありましたが、日本の内需が弱いため、世界の木材購入の競争では中国に買い負けている状態が続いています。
また、コロナ禍による世界的なテレワーク化の進展で、郊外への居住思考も進んでいます。2020年は東京23区から神奈川県藤沢市など郊外への転出が増加していますが、こうした動向は世界的にも同様で、住宅需要が喚起されているんです。
さらに理由はもう一つあります。”世界的なコンテナ不足”です。特に、需要が回復したアメリカと中国でコンテナの取り合いとなり、他の国に回す余裕がなくなっています。
これまでも「ウッドショック」が日本を襲うことはありましたが、それでも3か月ほどで終息していました。今回はいつ収まるかについて分からないのが正直なところです。
三栄建築設計としては、メーカーからの供給で建築需要に対応できています。夏以降は不透明なものの、今後、国産材に順次切り替えていくため、問題はないと見ています。
山間部、地元の工務店さんに直接頼むと都市部では考えられない位の安い価格で建ててくれる所が多いですよ。
当然ご当地の木材ですし、物も良いです。