「BIMは使える」と気付いた専門工事業界
BIM化への深化に欠かせないのが、デジタル人材だ。各ゼネコンでは、自社内で育成する内製化をはかりつつも、一部は外注化しているのが実情である。
「デジタルエンジニアリング部でもデジタル人材はおりますが、それだけでは不足しているので外部に仕事を依頼しています。今回、新たなBIMの取り組みが可能になったのは協力いただいている会社の存在も大きい」(吉村リーダー)
「社員のデジタル人材は30人ほどで、これを将来的には全建築系社員にしていかなければなりません。BIMガイドラインやルール化されたテンプレート及び基準BIMモデルを用意して、それらを専門工事会社にも厳守させるマネジメント、コーディネート力を向上させる教育が必要です。もし、建築技術員がBIMソフトを操作できるようになれば、現場のDXがさらに進展できる。今後は、圧倒的なスピード感をもってBIMマネージャー・BIMコーディネーター育成と、BIMシステム高度化を両輪で進めていきたい」(林部長)

加速するDX人材の養成・確保
一方、建設専門工事会社はBIMを含めたDXについてどう見ているだろうか。実際、作業する職人が高齢化を迎えている中、確実に人がいなくなることが肌感覚で理解している。
「BIMを活用したいという専門工事会社は、一昨年あたりから非常に増えており、自らDX推進をしています。本質的にサプライチェーンのDX化がどれだけ進むかが大きなテーマです。そのため、ゼネコンと専門工事会社のデジタルでの協業が増えることは間違いない。」(林部長)
「この1年間、潮目が大きく変わり、専門工事会社でBIMを扱う職種が増加しています。我々の生産性向上は、専門工事会社の生産性向上がないと、成り立ちません。専門工事会社は自らの生産性向上にBIMは使えると気が付きはじめたのです」(吉村リーダー)
木造にも進展するBIM活用
また、BIMのイメージは鉄骨造や鉄筋コンクリート造などであるが、木造への適用も拡大している。たとえば、大東建託株式会社が運営する「住まい」と「暮らし」における情報発信基地「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」はCLT材も活用したハイブリッド建築。施工は東急建設が担当した。
「CLTの収まりが詳細かつ斜めに変形しているため、BIMモデルを活用しなければ解析できなかった。今回の物件での気づきは、デジタル活用で事前シュミュレーションすることで、手戻りがなくなり生産性が向上、手順の見える化での施工安全性向上、完成後の室内環境の見える化での環境への貢献が出来たこと。デジタル化は、当社が掲げる「3つの提供価値」(脱炭素、廃棄物ゼロ、防災・減災)に必須の要素です。今後、より広がる木の建物採用についてもBIMモデルを導入することで、お客様に今まで以上にスピディーに価値をご提供できると考えています。」(林部長)
「木造のCLT材、サッシ、鉄骨のメーカーがそれぞれ検討してきたものを、ゼネコン側でデジタル整合を行い、今まで出来なかったことも成立できるようになりました。」(吉村リーダー)

東急建設が施工した「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」の内観
BIMは新3K実現に効果を発揮するか?
また、リニューアル工事や海外案件にもBIM導入に効果があるという。たとえば子会社・東急リニューアルでのリノベーション工事やリーシング分野にも効果があるとされるため、今後の導入に期待がかかる。
さらに、若者に夢を与える建築現場の道具にもなりえる。将来は、BIMを起点とした集中制御センターのような現場事務所で、現場を運営することは夢物語ではなくなるであろう。
建設業に時間外労働の上限規制が適用されるのは、2024年4月1日以降で、もはや待ったなしの状況にある。生産性向上に大いに役立ち、次々と進化、導入していくBIMデジタル。
建設業は新3K(給料・休日・希望へとチェンジしなければならない中、BIMデジタルは大きなツールとなろう。
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