地域建設業のDX化をしっかりサポートしていく
――ICT施工は、建設業者の規模が小さくなればなるほど、ヤル気がなくなるという印象がありますが、インフラDXに対する地域建設業の反応はいかがでしょうか?
見坂さん 先日、管内1都8県の建設業協会の方々と意見交換をさせていただきました。みなさん、インフラDXに対して関心をお持ちで、「自分たちもやらなければならない」とお考えですが、総じて不安な気持ちを持っています。
大手の建設会社は、すでに独自に技術革新を進めているので、こちらから何も言う必要はないのですが、地域建設業は違います。BIM/CIMはどう使うのか、3次元データはどう集めれば良いのかなどについて、未だに苦心されています。
そこで、関東地整では、管内にi-Constructionのモデル事務所とサポート事務所を開設しています。モデル事務所では、計画、調査、設計段階から施工管理まで3次元データを一気通貫で活用した工事を行っているところです。モデル事務所では、現場見学会なども積極的に受け入れており、地域の建設業の皆さんにも、実際の工事について、見て、触れて、体感してもらえるようにしています。地域建設業の皆さんには、モデル事業の見学などを通じて、ICT施工と言っても、そんなに敷居が高いものではないということを実感してもらいたいと思っています。
しかし、BIM/CIM適用といっても、一気通貫にこだわらず、設計だけとか、施工だけとか、できるところからチャレンジしてもらうのが、現実的なのかなと思っています。関東地整としては、地域建設業のみなさんが1日でも早くICT施工できるよう、しっかりサポートしていきたいと考えています。
小規模なICT施工について研究中
――まずは、地道に実績を積み重ねていくことが大事というところでしょうか。
見坂さん そうですね。われわれ発注者としても、モデル事務所は別にして、それ以外の国道事務所、河川事務所でいきなり完璧なICT施工を行おうと思っても様々な困難が伴います。まずはできる範囲でICT工事を発注して、それを報道発表し、工事の様子なども見てもらって、積極的に外向けに情報発信していってほしいと考えています。各所長にはそうお願いしています。良い取り組みをしている事務所があれば、他の事務所はそれをドンドン真似してもらいたいと思っています。
――モデル事務所はどこですか?
見坂さん 甲府河川国道事務所と荒川調整池工事事務所です。荒川調整池工事事務所では、2019年の台風で荒川の支川が氾濫したことから、大きな調整池を2つ建設しています。工事としては、土を掘って池をつくるという極めて単純な工事ですが、かなり規模が大きい工事です。この工事を最初から3次元データを使って行うわけです。
――県、市町村レベルになると、ICT施工がなかなか進まないようですが。
見坂さん それはその通りです。県としてはICT施工をやりたいんだけども、なかなか進まないという話は聞いています。関東地整では、ICT施工の普及に向け、県や市町村とも連携した取り組みを進めているところです。例えば、埼玉県、さいたま市、埼玉県建設業協会と一緒になって、小規模なICT工事について研究を行っているところです。そういう取り組みについては、他県の方々も関心を持っているようです。
建設業全体の労働環境の改善が私のミッション
――DXの目的には働き方改革の推進もあるということですが、関東地整はすでに週休2日制でやっているのですか?
見坂さん 今年度から原則週休2日を導入しています。2024年度からは、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されます。適用されると、原則として月45時間、年360時間を超えることはできなくなります。われわれとしては、これが適用されるまでに、建設業の働き方改革を推進しなければならないという思いがあります。
一方で、地域建設業からは「一方的に週休2日でやられても困る」という声もあります。現場仕事は、やはり天候に左右されるところがあるので、「晴れている日に仕事をしたい」という思いがあるからです。地域建設業の方々のお話をよく聞きながら、進めていく必要があると思っています。
――自分のミッションはなんだとお考えですか?
見坂さん 1都8県の建設業協会との窓口役として、しっかりご意見を聞きながら、建設従事者の処遇をいかに向上させるか、いかに働きやすい環境をつくっていくか、ということですね。われわれ関東地整だけでなく、建設業全体としてより良い労働環境をつくっていく。そのための施策を練っていくことが、私のミッションだと考えています。
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