新会社は土地の選定、ファイナンス等上流からの提案も
――コンサルとそれに伴うプラント建設が主事業である中で、自社でも栽培する理由は?
三上 当社が栽培事業者となる事で、工場産野菜の実需者とのチャンネルが構築され、よりマーケットの深堀が可能となります。それがプラントの要件にも反映できるわけです。また、工場を建設されるお客様は、多大な投資をされるわけですが、本当に収益が上がるのかと心配されます。
そのため、埼玉県杉戸町に竣工した自社の量産実証工場で、高品質かつ生菌数の少ない業務用レタスで収益を上げ、自らが事業者として成功することが重要だと考え、10年かけて準備を進め今日に至ったわけです。
杉戸量産実証工場では、「野菜の安定供給とロングライフ化へさらなる貢献目指す」をコンセプトとしていますが、これを実現するには基盤となる植物工場の整備には多くの投資が必要になります。新規参入されるお客様を巻き込み、これを実現するための仕組みを構築することが今後の課題ですね。
――レタスに着目した理由は?
三上 レタス類は、年間を通じて需要が大きいにも関わらず、気候変動の影響を受けやすく露地物では安定供給が出来なくなっています。また、収穫量を上げるための高密植栽培を実現しやすいので、野菜の実需者と生産者の双方にメリットがあります。
――工場で栽培されたレタスの質はいい?
中村欣明氏(以下、中村) 日本は土地価格が高いため、高さで栽培面積を増やしていかなければならないわけですが、それでは空調としては不利な方向になります。温度によっては浮力があるので、温かいものが上に行きやすい。そうなると均一なレタスができにくいんです。ですが、大気社の空調技術で大空間を均一にコントロールすることで、この課題をクリアしていますし、高効率LED照明システムにより野菜の生理障害をなくすための気流を生み出す技術もあります。

株式会社べジ・ファクトリーの中村欣明取締役部長
このように、杉戸量産実証工場には大気社としての様々な要素技術をつぎ込んでいます。もちろんお金はかかっていますが、そこから生み出される結果、新しく工場建設されたいお客様には、新たな技術を提供できると思っています。
既存の商流に組み込まれないように
――どのような商流を目指していきたいですか?
三上 当社の目指している事業コンセプトに関わる部分ですが、現在の野菜市場を通した商流は、需要と供給のギャップの調整弁の役割を果たしていますが、同時に膨大な食品廃棄を生んでいます。また、野菜の販売先となる食品加工事業者においても、露地物の野菜は可食部が少なく、廃棄品が40%程度発生します。また、洗浄工程での人件費増や水の消費が負担になっています。
この課題を解決できるのが、植物工場産の低生菌野菜です。
杉戸工場から出荷される生菌管理された野菜は、流通過程での温度管理が重要になります。従来の市場を経由してしまうと、これができません。
野菜を買っていただくお客様や、物流事業者と一緒になって、新たな商流を生み出す必要があります。
――これから植物工場の業界はどういう方向に進んでいくでしょうか。
三上 従来型の露地物の代替品の汎用型の栽培プラントから、機能性野菜、医薬品の原材料等の高付加価値品を生産できるプラントへシフトしていくと見ています。技術的には空調技術の高機能化と栽培自動化は実現できています。
また、DX技術を取り入れ、画像認識で栽培途中の野菜の形質を判断し、自動で追肥や環境コントロールすることで、より人手の掛からないシステムの研究が開始されています。さらに再生エネルギーとの組み合わせや、資源循環型のスマート工場化へ進んでいくと思われます。
――どの業界でも最初は百花繚乱になり、それから淘汰が始まります。
三上 一般消費者向けの工場産野菜の需要がほぼ飽和し、現在は大手コンビニや外食事業者が、食の安定供給と食品ロス削減を掲げ、露地野菜から工場産野菜への転換が始まっています。これら事業者向けの野菜に要求される品質のハードルは非常に高く、これを十分に満足できる植物工場栽培事業者は、未だ存在しません。様々な取り組みがなされていますが粗悪なメーカーやコンサルは、市場で淘汰されていくと見ています。
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