日本の16m以深岸壁の延長はかなり小さい
最後は港湾だ。
実は、各国における人口やGDPあたりのコンテナターミナルの岸壁延長(図参照)を比較すると、日本の岸壁延長は、人口あたり・GDPの両方を見ても、韓国・台湾・シンガポール・マレーシアと比較してもかなり小さい。これらの国・地域は、いずれも日本よりも経済規模が小さく貿易依存度が大きいこと、また主要港のトランシップ率も大きいことを考慮しても、整備状況に差があるといえる。
特に16m以深の岸壁に着目すると、日本における16m以深岸壁の延長が全延長に占める割合が他国に比べかなり小さく、GDPあたりの延長でみると中国よりも低い水準となっている。

人口およびGDPあたりのコンテナ取扱岸壁延長(全バースおよび16m以深バース)
諸外国の将来整備計画では、釜山港は現在8バース2,800mを整備中で、さらに17バース7,040mを計画、シンガポール港は同じく総延長26,000mを整備中、クラン港(マレーシア)も16バース4,800mを計画中など、非常に大きなスケールの整備計画を有する港湾もある。これらの港湾で計画通りに整備が進んだ場合は、日本の港湾と整備状況にさらに大きな差がつくことも予想される。

比較対象とする東アジア主要国の港湾位置図(16m以深のコンテナバースを有する港湾)
「インフラ概成論はコンテナにもあり、他国の競争にさらされやすい。実は80年代にコンテナはこれ以上大型化しないだろうと判断した経緯がありました。しかし、大型化は続いた。政策の失敗もあり、港湾で後れを取る要因になりました。今は、諸外国に勝つためよりも、ついていくための港湾整備を質的な面も含めて行わなければならない。次に地方の港湾も含む日本港湾全体として、インフラ規模とサービスの水準の向上、提供をはかる必要があります」(柴崎隆一港湾WG主査、東京大学准教授)
このほか会見では3WGが継続して活動することと、新たに「都市鉄道WG」を設置したことも明らかにした。「現段階では構想ですが、新幹線、街の中の公園、緑地、電力施設、あるいは情報通信基盤、砂防施設などに取り組みたい」(家田委員長)
インフラ版「失敗の本質」
日本人はなんとなく、社会資本整備はほぼ充実し、世界的にも高水準にあると考えてきたのかもしれない。
しかし、今回、土木学会の調査により、日本もソフト面では優れた面もあるものの、欧米先進国だけではなく、場合によっては韓国、台湾、さらには港湾では東南アジアのマレーシアよりも整備が進んでいないという実態も明らかになった。今回の「日本のインフラ体力診断」をすべて読んだ感想を言えば、日本の衰退は想像以上に深刻ではないかと感じ、また同時に危機感も抱いた。
実は、日本の衰退は、平均年収にも表れ、世界的にみてもランキングが低下というよりも没落という言葉がふさわしい。韓国が19位であるのに対して、日本は24位。25位は東欧のポーランドであることを見ても、日本人のひとり当たりの稼ぐ力は東欧諸国と同等であることについては、相当な危機感を抱くべきではないだろうか。
もちろん、日本の衰退はさまざまな要因はあるが、何よりも少子高齢化に対して有効な手段を打てなかった点だ。しかし、私見であるが、インフラ整備をおろそかにしていくうちに、他国がインフラを強化し、日本の強みを奪ったことも要因ではないかと考えている。
また、日本や日本人の中にインフラに対する慢心や油断もあったのではないだろうか。
「過去を十分に批判的にながめていくことは発展のための原則です。しかし、その点がおろそかになり、これまでの延長線上に施策を行う傾向があります。これはどの組織でもあることですが、それから脱却することが大切です。そのためには広い視野を持つことと、データに基づいて、プラスマイナス両面から評価し、国民とともに共有することが原点になります。そういう視点に立った施策を、どの分野に限らず共通して行うことを、行政やインフラ提供サイドに申し上げたい」(家田委員長)
現在、土木学会では、施工の神様でも報じているが谷口会長のもとでビック・ピクチャーの議論がスタートしている。各支部が中心となり、地域WGを設置し、地域のインフラについて検討している最中だ。たとえば、北海道の高速道路は、ミッシングリンクが多いことも明らかになっている。今回のようなデータを示すことにより、さらに国民へと働きかけていくことが肝要になるだろう。
明治期の早期からインフラを整備し続けていた日本と、韓国などの後進国を比べるのがナンセンス。
公共事業は悪だ、コンクリートから人へ、で必要以上に国民が土木事業を叩きすぎた結果、インフラは老朽化し土木技術者の質も低下したからだろ。
冷戦終結とバブル崩壊がこの流れを加速させた。
土木だけは社会主義的に進めなければならなかった。