コストは太陽光を除き約10%増
――コストアップの部分は。
大久保 太陽光パネルを除いて、およそ10%弱増しで、金額にして350万円増です。断熱工事やサッシ工事についてはほぼ変わりはありませんが、2階の天井のグラスウール量を2倍にしていること、屋根形状も構造変更しており、太陽光パネルを設置する金具などにもコストが掛かりました。
建設で導入した資材も、リフォーム時を見据えて、耐久性が高く交換しやすいものとし、炭素量発生の軽減をめざしています。代表的なものはフローリングです。修繕時ではすべて張り替えるのではなく、部分的で済むようにしています。
また、当社グループのサブリース契約では、賃貸集合住宅35年間一括借り上げで、太陽光発電のパワーコンディショナーは2回交換を考えておりますが、ソーラーパネルの交換は見ていません。
――国土交通省には報告はされましたか。
大久保 計画当初から国土交通省と情報共有をし、完成後にも報告に上がりました。ただ、私が報告した国土交通省の別の部局からも質問があり、詳細な資料もあわせて同様に情報共有しました。その中で補助金や制度設計についても関心を寄せられたことの意味は大きいと感じました。
国土交通省からは、この草加市の建物をどういう定義づけで「LCCM賃貸集合住宅」としたのか、さらに建物の着工費用についてもヒアリングされましたので、お答えしました。
「LCCM」で建設業界の先陣を切る
――「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や「LCCM」賃貸住宅での施工はいかがですか。
大久保 両者とも、施工が難しいということや気を付けることはほぼありません。ただし、「LCCM」の場合は、材料を細かく指定しています。たとえば、外壁の種類は製造過程で、木質を含んでいるかいないかにより、CO2の発生量が異なります。
ですから、現場監督も材料は通常メーカーのものと考えると間違えますから、外壁種類のリストを明確に指示したことが施工面の注意点と言えます。
――今回、草加市で1件建設しましたが、次の展開は。
大久保 現段階は、この草加市の物件でも「LCCM」と当社では発表していますが、公的機関のお墨付きはまだありません。国の基準が戸建て住宅かそれとも「ZEH-M」レベルかで取り組みやすさは変わっていきます。とはいえ建設業界では先陣を切りたいとの自負は持っています。

再エネ100%で建設した北名古屋市の物件
――ほかの改善点はありますか。
大久保 次に経済産業省です。住宅用の太陽光発電などの再生可能エネルギーで作られた電力を国が定めた価格で電力会社などが一定期間買い取るというルールを定めた「固定価格買取制度(以下、FIT制度)」が導入されています。
しかし、2020年度から全量売電ができなくなりました。10kw以下であれば一部自家消費するだけで余剰売電ができますが、10~50kw以下であれば、30%を自家消費しなければなりません。そこで「LCCM」で太陽光パネルを最大限設置すると、自家消費割合は下がるためFIT制度は使えません。
ビジネス化のためには電気を売っていくことが大切です。今回は、FIT制度を使わずに実施していますが、今の段階では、太陽光パネルを搭載する量が増えれば、自家消費の割合も増加しますので、この問題をクリアしないといけません。