5月と比較し、11月は坪単価4~5万円上昇も
――価格についても、8月時点では「木材価格が上昇している」と回答した工務店が多いですが、現状は。
谷口 木材価格については、5月や8月時点調査によりも11月時点ではさらに上昇していると感じています。実際にモノがないため、価格も上がっている状態です。特に、先ほど申し上げた合板については過去最高値ではないかと思います。
この状況下で価格交渉を要請すると、木材そのものが入ってこないため、仕入れの価格を飲まざるを得ないのが現状ですが、価格については12月が頂点と想定され、1~3月にかけてはやや一服感があり、多少下がると予想されています。
――建材メーカーからも、値上げ要請も来ているようですね。
谷口 各建材それぞれ単体で5割増の要請もあります。5月と11月を比較すると坪単価4~5万円ほどに上げるハウスメーカーや工務店も出てくるかと思います。仮に30坪の家を建築する場合、木材だけで約120万円コストアップするところもあるでしょう。
――こうしたコストアップの負担元については、6割ものハウスメーカーや工務店で「一部を自社で負担」「すべて自社で負担」しているという調査結果も出ていますが。
谷口 この点については、請負の注文住宅と建売住宅では、事情が異なります。請負ですと、金額について施工前に契約を結びます。何か問題が発生した時は、契約金額について相談をする旨の内容が明記されているでしょうが、このウッドショックがそれに該当するかが問題です。
木材の価格高騰も同様ですが、「年度末の3月には新居に入居したい」というご希望があっても、木材や資材調達が遅れ、工期が延長した場合の説明はかなり大変だと想像できます。
――新型コロナの感染拡大も相まって、受注への影響の5月比較では「横ばい」が61%、「悪化」が37%と、引き続き厳しい受注状況が続いています。悪化の理由の8割が「工事金額が高くなり契約が成立しない」「お客様がウッドショックの様子をみている」とのことで、しかし、大手ハウスメーカーは決算を見る限り堅調ですが、これをどう見るべきですか。
谷口猛氏 好調の要因は、様々あるかと思います。新型コロナウイルスの影響で新築住宅を検討する時間に余裕が生まれたこともあるでしょうし、また現在はローン金利が安い。さらに、住宅ローン控除は、原則的に10年間にわたり、年末の住宅ローン残高の最大1%が控除される制度になっています。現在、この控除期間が13年間に延長する特例措置が実施されています。
このローン控除の特例制度もありましたので、住宅需要が喚起されたと思われます。今、金利が0.4%でローン控除が13年間であればほぼ金利ゼロで家を建築できる環境にありますので、かなり市況が良くなっています。
外国産材依存の弊害
――これまで住宅業界は安価な外国産材に依存してきましたが、今回のウッドショックでこれが問題として顕在化しました。
菊谷憲太郎氏 木造住宅業界は6~7割が外国産材に頼っており、ビジネスを展開しています。外国産材は欲しい分だけ調達でき、かつ価格メリットがありました。協会の設立の目的はウッドショックとは関係がなく、偶然にもタイミングが一致しただけですが、ウッドショックを教訓として海外の情勢に左右されない材料調達の仕組みを構築しなければならないと改めて感じました。
とはいえ、ウッドショック後に急に国産材を集めようとしても、集まらなかった実態がありました。現在、林業従事者も減少していますし、国に対しても構造材や柱の供給量を整備するよう陳情していますが、なかなか難しい。
ですが、そもそも船で海外から運んでくる木材よりも国産材のほうが高いというのはそもそもおかしな話です。
もちろん、外国産材が悪いということではなく、戦後に植樹し、国内にこれだけ森林があることから、国産材を使用するほうが自然の流れではないでしょうか。
――協会活動の進捗はいかがですか。
菊谷 設立時の記者会見では、小池信三理事長(株式会社 三栄建築設計 代表取締役社長)が植林活動を展開する話をしました。今年度では、現行3万本の木材を使っているため、それに近い数の植樹活動の段取りをしています。秋田県と青森県で具体的な植樹場所も決めており、2022年度から開始します。将来的には、木分協が購入した国産材であるということを認証するマークを制作することも検討しています。
また、国産材のさらなる活用に向け、林業の人材育成も併せて、集成材、製材工場も自前で設定することも構想しています。
――今後、協会として規模拡大を目指していくのでしょうか?
菊谷 12月1日付で、株式会社ヤマダホームズ、株式会社ヒノキヤグループ、ヤマダホームズの子会社・株式会社秀建が、当協会の会員に加入されることになりました。これにより、6社全体で年間約3万数千棟を供給する規模の団体へと一歩成長することになりました。
その他にも、お問い合わせが数多くいただいていますが、「SDGs」をはじめ、日本の森林問題・環境問題の解決に賛同される会社とともに活動していければと考えています。木分協として公式に目標に掲げているわけではありませんが、事務局内レベルでは今後30社ほどの参加を目安に、早期に実現していければと思います。
林業とも連携し、商流の川上から整備目指す
――今後は、林業関係者との連携も必要になってくるかと思いますが。
菊谷 会員会社が希望する国産材の量は、現行では不足しているのが現状です。現在、ウッドショックもあり、取引先が木分協への供給のシェアをすぐ上げることは難しいですが、現在、秋田県や大分県に行き、新規の供給先を獲得を進めています。最初は少量でも、取引実績が増えれば安定していくかと思います。
木原 そもそも、木分協設立時に、ウッドショックにより国産材の価格が跳ね上がったことが想定外でした。本来の目的は、国産材を活用することで日本の森林や環境問題に向き合うことを理念とし、3社が集まったことが設立の経緯です。このスタンスのもと、林業関係者とともにさらなる拡大を目指す方針に変わりはありません。
――いろんな地域の木材関係者や行政とも面談されていますが、手ごたえは。
谷口 木分協への木材供給は当初、ウッドショックが落ち着いてからというお話でしたが、徐々に各森林組合などからお声がけをいただくようになっています。
菊谷 海外では林業はビジネスとして成立しています。しかし、日本では、補助金があってようやく成り立っている実態もあります。現行の林業では競争原理が起きにくく、木分協としても利益を確保する余地を探っていければと考えています。
(一社)日本木造分譲住宅協会 ホームページ:https://j-wha.or.jp/
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