これから建設や不動産テックとの協業、連携は増加へ
――建設スタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」を開始した意図は。
山田氏 建設会社は今後、建設や不動産テックとの連携が増えると考えています。当社としても建設分野での技術革新の推進を目的として、建設スタートアップに投資する「JAPAN CON-TECH FUND」を、2019年3月より当初投資枠50億円で開始しました。
テクノロジーを活用し、建設業全体をより良くしていこうという趣旨で、当社とシナジーのあるスタートアップ企業に対して、資本もしくは事業提携しています。優れた技術開発が実現できれば、当社グループの現場に導入できる効果もあり、投資・事業提携のプロジェクトとしてスタートしています。現在、6社に出資しているほか、さまざまな企業と実証実験を行い、連携を深めています。

2019年3月に「JAPAN CON-TECH FUND」を設立
――狙いとしては、建設業の従事者が高齢化していることへの対応でしょうか。
山田氏 もちろん、人手不足や作業員の高齢化への対応もありますが、建設業界は他の産業と比較してアナログの現場も多く、生産性が低い。そこでテクノロジーを活用し、生産性を向上しようと考えています。
旧態依然の塗装流通でデジタル活用
――具体的なDXの取組みとしては。
岡崎氏 当社は、インフラメンテナンスやマンション大規模修繕事業を通じて、塗料業界に強みがあります。出資した会社に塗料業界に特化したSaaS開発を行うPaintnote株式会社がありますが、クラウド型販売管理システムである「Paintnote」、クラウド型受発注システムである「Paintnote EDI」を開発・提供されています。
「塗料・塗装白書2019」によると、日本国内の塗料流通業界は、販売事業者数3,000以上、年間流通額約2兆円と莫大な規模ではありますが、紙や電話というアナログなコミュニケーションが色濃く残る企業が多いのが実情です。
実際、発注のやり取りも、電話で「明日もってきて」ということがよくあります。ただ、こうしたやり取りは記録されておらず、ミスも少なくありません。そこで業務管理ツールを活用し、ログが残る形のインターネット型の発注に順次切り替えています。
塗装側では、発注ログが残ることによる分析や、現場に慣れていない新人の管理者であれば、リストの中から塗料を選択できるなど、教育コストの削減にも効果があり、塗料販売店側からすると、電話で呼び出されなくて済むなど、塗料流通全体で効率化していくことを考えており、カシワバラでも順次発注方法をデジタルに切り替えるために営業所で導入を進めています。

塗料販売業界でもデジタルの波が押し寄せる / Paintnote株式会社Webサイトより引用
ドローンの活用により点検も効率的に
――ドローンの活用により、どれだけ便利になりましたか。
山田氏 施工管理者が従来、目視や検知で行ってきた壁面のさびの点検ではドローンを飛ばして、自動化する技術も共同で実施しています。当社のお客様は官民両方と多様ですので、いろいろと提案をしています。現在、ドローンでは、工場関係の工事で引き合いが多いですね。
しかし、まだ完全に自動化できるレベルではありません。たとえば、マンション大規模修繕の世界では、赤外線付きドローンを導入しても検査全体を完全に自動化することは、現状は難しい。むしろ、プラントのサビの検知や、人間が通りにくい橋の下では、ドローン点検や画像解析をすることで、効果が上がっています。

効率的な点検により、メンテナンスを行えば、水管橋の落橋が防止できた可能性も / 出典:国土交通省近畿地方整備局HP
また、工場では配管が通る場所も多いですから、その下側をドローンで点検しています。建設DXでの取組みは、今後、業務の生産性が上がるという実証実験の段階であり、業務全体を切り替えるまでには至っておりませんが、この技術を使えば、今までできなかったことが簡単になる可能性があるという段階で、クライアント様が求める技術と現段階の技術のせめぎ合いの所です。最近では徐々にクライアント様からの満足度も高まっています。