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「日本の土木の実力は、海外より劣っている」上田多門新会長が語る”土木のグローバル化戦略”【土木学会】

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長井 雄一朗
公開日:2022.06.22
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土木学会第110代会長に就任した上田多門氏(北海道大学名誉教授・深圳大学特聘教授)

土木学会第110代会長に就任した上田多門氏(北海道大学名誉教授・深圳大学特聘教授)

目次
  1. 今の日本の実力を正しく認識することから始める
  2. 日本が持つべきインフラの定義付けを
  3. 外国人技術者の参加をより活発に
  4. "日中韓"の土木学会でシンポジウムも

今の日本の実力を正しく認識することから始める

土木学会は6月10日、東京・千代田区のホテルメトロポリタンエドモンドで定時総会を開催。第110代会長に上田多門氏(北海道大学名誉教授・深圳大学特聘教授)が就任し、次期会長には、田中茂義氏(大成建設株式会社代表取締役副社長)が内定した。

上田新会長は、総会終了後に記者会見を開催し、抱負を述べた。日本の土木界の現状に触れ、自身の海外での経験から「アメリカや中国と日本のインフラには大きな差がある。海外の主要国は優れたインフラを持っている」としたうえで、「日本の土木の状況は決して好ましい状況ではない。建設市場が長期的に縮小傾向にあり、研究分野として土木工学が他の分野と比較して必要性が小さいと見られている」と危機感を示した。さらに「日本の土木の実力が海外の主要国と比較し、劣っていることが考えられる」との見解のもと、会長プロジェクトとして「土木グローバル化総合委員会」を設置、インフラを支える土木人材に視点を置き、海外との比較を通じて、研究者と技術者に日本の今の実力を把握してもらい、女性・外国人を含む若手が中心となって議論するプラットフォームを提供するとした。

「今後、グローバルな人類共通課題を解決できる人材として育つことのできる道筋をつくる」ことを望んだ上田新会長。一方、日本建築学会との協業については「すでに協働のためのタスクフォースが立ち上がり活発な議論が行われている。建築も苦しい状況にあり、協力して地盤沈下を防ぎ、グローバルな課題の対応にも重要と考える」と語った。

第109代の谷口 博昭前会長と第110代の上田多門会長

第109代の谷口 博昭前会長と第110代の上田多門会長

日本が持つべきインフラの定義付けを

――海外プロジェクトを促進するにあたり、ご自身の強みは。

上田会長 海外で仕事をすることが多く、海外の状況を肌で感じています。日本はなぜ海外との差が生じたのかについて、専門家に近い立場として学んできた私の経験や知識は活用できると思います。

――日本と海外のインフラでは、どこが決定的に異なると思われるか。

上田会長 40年前のアメリカの話になりますが、飛行場の違いが最も印象的です。40年前の日本の飛行場は貧弱だったのですが、あの当時のアメリカの各州の主要空港のスケール感は、今の日本の羽田空港や成田空港の規模、あるいはそれ以上でした。中国もこの10年ほどで各主要都市に空港をつくっています。予算配分の違いはありますし、スケール感がすべてではありませんが、少なくとも主要インフラについて”こうあるべきだ”という基本的な定義が日本と海外で異なっており、変えていくべき点だと思います。

3割以上が2車線の高速道路の定義の見直し、また主要な鉄道についても新幹線レベルの鉄道幹線にすることが本来あるべき姿であると思いますし、日本という経済レベルの国が持つべきインフラに必要な投資はしていくべきだと考えています。

外国人技術者の参加をより活発に

――土木学会の活動に外国人の参加を促すと話していたが、具体的にはどのようなイメージか。

上田会長 学会員の一定割合は外国人です。外国から留学してきて、日本で仕事を続けている、または祖国で日本と仕事をしている土木技術者は多いのですが、こうした技術者が必要としている研究活動の視点がこれまであまりありませんでした。積極的にこの視点を取り入れることで外国人の会員や土木技術者が土木学会を活用してもらえるようになります。外国人技術者が中心となったWG(ワーキンググループ)を設置し、議論を進めています。また、議論がスタートしたばかりですが、外国人技術者に土木学会の技術者資格を認定することも検討しております。

――日本建築学会との協業は今後、どのように継承されていくか。

上田会長 海外では、学術団体が日本のように土木と建築に分離している国は多くありません。土木と建築でそれぞれ近い研究をしており、重なり合う取り組みもしていますが、分離していると色々な場面で効率良く進めていくことができないことに課題を感じています。

例えばカーボンニュートラルは相互的に行ったほうが良いと思いますし、DXの活用も土木と建築で分ける必要はまったくありません。また、日本では土木と建築が分離していることが原因で、海外と日本で構造物の設計指針が異なっています。国際標準から考えると、日本の土木と建築の設計標準の整合性が取れていないと、日本の技術を国際標準化する際に障壁になります。色々な面でできることを進めていきたいと思います。

“日中韓”の土木学会でシンポジウムも

――海外組織との連携については。

上田会長 海外組織の方と対談し、情報発信することを考えています。先日、韓国の土木学会(KSCE)の会長と対談する機会がありましたが、カーボンニュートラルの件だけでも一国だけではとても対応できないことを理解されていたため、さっそく連携して定期的にシンポジウムを開催し、共通認識を高め、外部に発信していくことができるのではないかという話も対談の中で出てきました。

また、中国の土木学会とは2年に1回シンポジウムを開催していますが、同様のかたちでサステナビリティ、または全世界的な課題に対して土木がどのように対処するか、といったグローバルなテーマで、日中韓の土木学会によるトライラテラルな仕組みをつくろうではないかという話も出ています。

上田多門(うえだ・たもん)氏

1977年3月 東京大学工学部土木工学科卒業後、工学博士(東京大学)。東京大学助教授、アジア工科大学(タイ)助教授、北海道大学工学部助教授、同大学院工学研究科教授等を経て、2019年10月 北海道大学名誉教授、同年11月から深圳大学土木交通工学部(中国)特聘教授に就任。現在68歳。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
「日本の土木の実力は、海外より劣っている」上田多門新会長が語る”土木のグローバル化戦略”【土木学会】 「日本の土木の実力は、海外より劣っている」上田多門新会長が語る”土木のグローバル化戦略”【土木学会】

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