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【東急建設】中大規模木造建築市場への本気度。加速する事業推進と技術開発

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公開日:2022.07.07
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CLTも混構造により適材適所に採用へ

――CLT(直交集成板)への取組みについては。

浅井部長 当社の実績としては、大東建託株式会社様の「ROOFLAG 賃貸住宅未来展示場」で、大屋根の部分でCLTパネルが採用されています。国策としてCLTを普及していく方針を背景として、CLT製造工場も増えてきていますし、コスト面ではまだ割高ですが、普及さえすればコストも下がり、強度も強く、使い勝手の良い建材になると考えています。

さらに、今後の方向性としては、木同士の混構造建築の展開もありえると考えています。たとえば、ツーバイフォー工法の床や屋根にCLTを採用する例やCLTの高い強度を生かし、在来軸組み工法の床や壁にCLTパネルを組み込むなど、適材適所で組み合わせをしていくことが望ましい在り方でしょう。

今後については、このほど(一社)日本CLT協会に入会しましたので、協会の各ワーキングへの参加や参加メーカーとの交流を通じてCLTの技術力も高めていく方針です。

「大東建託株式会社 ROOFLAG 賃貸住宅未来展示場」の大屋根の部分では、CLTパネルを用いた

「大東建託株式会社 ROOFLAG 賃貸住宅未来展示場」の大屋根の部分では、CLTパネルを用いた

――中大規模の木造化を普及させるため、東急建設としてさらに他社と連携する可能性はありますか?

大給部長 木質耐火部材を製造する株式会社シェルター(山形市)様とのOEM契約を、2021年10月に締結しています。このOEM契約により、シェルター社が保有する木造耐火部材「COOLWOOD®」を、『モクタス』を冠にした「モクタスWOOD」として採用しています。また、木造建築には、耐火だけでなく振動や遮音など、様々な課題もあるため、技術研究所を中心にその分野の専門会社とこうした課題解決に向けた連携も模索しています。

徐々に中大規模木造にシフトする施工会社

――施工面はどのように進められているのでしょうか。

大給部長 前述した組織改編により、首都圏から全国に広がりを持たせる展開となったため、基本的には各支店で施工し、木造独自の支店を持たないことに切り替えています。木造施工を経験している社員も各支店との融合を図り、木造の案件が出ればそこに配属しながら、取り組んでいく動きをしています。

――実際の施工は、専門工事業者が担うのでしょうか。

大給部長 実際の施工はシェルター社や、各地の木材会社が担っています。当社が木造専門工事会社を抱えるのではなく、従来のRC造やS造と同様に各協力会社に工事を請けていただく形態です。

今後については、まずは各地域で中規模木造に強い施工会社と連携し、さらに木造市場の広がりに合わせて、各地域の有力工務店との連携へと広げていければと考えています。ただし、これまで戸建住宅で協力いただいていた協力会社は首都圏エリアの戸建住宅が中心ですので、今後中大規模木造の取り組みへの協力も促すとともに、全国的には各支店と情報を共有しながら、新たな中大規模木造に強い協力会社とのお付き合いも拡大している段階です。

――戸建て住宅だけでは事業を継続することは難しいという危機感を持つ施工会社も増えてきたのでしょうか。

大給部長 現状で事業継続が難しいということはないかと思います。実際のところ、ウッドショックはあるものの戸建住宅業界は活況と思われます。ただ当社は、長期的に見れば人口減少に伴う需要の減少は避けられない事や中大規模木造の世界的潮流が来るという見方をし、事業のシフトを行いました。

中大規模木造の特に構造部分の工事を手掛ける施工会社では、戸建住宅を施工されていた方々が結構在籍されているようで、そのなかで当社と似たような考え方からシフトされたという話は聞いております。

今後、中大規模木造建築が普及していくと、施工会社、職人の取り合いが本格化し、厳しい局面を迎えることが予想されます。ですから、今からさまざまな施工会社と連携を深めていくことは重要であると認識しています。

技術力向上で『モクタス』をブラッシュアップ

――『モクタス』も今後、ブラッシュアップしていくことになるかと思いますが、今後どのような展望をお持ちでしょうか。

大給部長 これから目指すところは、5~6階建ての木造建築です。そのためには、耐火部材の技術力を向上させていかなければなりません。当社独自でも技術力の強化を図っていく必要はあると思っています。同時に振動や遮音についても技術開発を進めています。

一例として、木質構造の建築に利用できる高遮音二重床システム「SQサイレンス50」という製品があります。スクエア形にプレカットしたパーティクルボードを使用し、防振支持脚の仕様と配置を最適な組合せに調節することで、木質構造の建築床の「高遮音化」と「軽量化」の両立を実現したものです。

これにより、木造建築物では木の良さである軽量さを活かしながら、対策が難しい重量床衝撃音に対して、LH-50(試験値)を達成しました。共同住宅への導入を視点においた開発でしたが、これを事務所ビルに転用することも検討しています。

木質構造の建築に利用できる高遮音二重床システム「SQサイレンス50」

木質構造の建築に利用できる高遮音二重床システム「SQサイレンス50」

次に、準耐火性能を有する木被覆木製柱:モクタスWOOD(準耐火)開発し、国土交通大臣の認定(60分準耐火構造)を取得しました。公共施設、商業施設、老健施設、学校や共同住宅などへ用途が想定され、新築に加えてコンバージョンなどにも適用できます。今後、梁も踏まえた開発も展開し、さらに1~2時間耐火へと進めていくことが望ましい展開だと考えています。

また、振動についても、木造はRC造と比較してどうしてもこの部分は弱い面ですので、模索しながら研究を進めています。

――エリアとしては、どのあたりに注力していきたいとお考えですか。

浅井部長 大規模建築の木造化はまだまだ難しいですが、一方、東急グループが強みを持つ首都圏、特に東急線沿線においても中規模の多彩な建築物にあふれており、旧耐震建築の建て替え需要が出てくると予想しています。まずは、これらのエリアをターゲットとして考えています。

これは当社だけではなく、東急グループの総力を挙げて、取り組む必要があると思っています。また、本日は混構造建築の話が出ましたが、大規模建築を施工する際には、RC造やS造に加え、木造・木質構造を取り入れた混構造も提案していければと考えています。

稲葉部長 そのほかにも、鉄道駅のリニューアル化に対して、木造化や内装の木質化が相次いでいます。とくに東急㈱では「木になるリニューアル」と銘打って木質化を推進しており、当社も「戸越銀座駅」で、木混構造のホーム屋根の建て替えや東急池上線池上駅で計画された「エトモ池上」の木質化も施工しました。新しい池上駅舎直結の商業施設では駅舎を含む施設規模はS造5階建てですが、内装の一部には旧池上駅舎の木材を利用し、木造駅舎の歴史を伝えています。

木をクローズアップした東急池上線の「戸越銀座駅」

木をクローズアップした東急池上線の「戸越銀座駅」

――最後に、今後の木造建築の展開について総括をお願いします。

浅井部長 2010年以来の木材利用促進法の制定から10年以上が経ち、2021年10月に法律の改正がなされ、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」となり、公共建築物から建築物一般への拡大が図られ、徐々に法律になじむ環境が整ってきました。脱炭素、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献やESG(環境、社会、ガバナンス)の観点から、企業的価値も向上しますし、海外からの投資家をはじめとして投資も盛んになってきています。政府も「2050年のカーボンニュートラルの実現」を宣言しており、建築に木を使うことが、公共のみならず民間の発注者側にも浸透していく動きが活発になりますから、少しずつ良い方向に波及していくと受け止めています。

大給部長 環境への取組みは喫緊の課題であり、当社のVISION2030 「0へ挑み、0から挑み、環境と感動を 未来へ建て続ける。」ことを念頭に、さらに進めて行かなくてはならないと考えています。ですが、中大規模木造建築は、コスト面や技術面等でも、まだまだ様々な課題があると思っております。そうした課題解決のためにも、川上から川下までの関連協力業者との連携を深めて、継続的に技術開発も行いながら事業を進めていきたいと考えています。当面は、オフィスビルを中心に展開を考えていますがこれから迎える4~5階建ての建替え需要にも速やかに対応すべく、邁進していく所存です。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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