県庁の全部局の担当者を集めてほしい

岡山河川時代。小学5年生に対して、出前講義をした写真です。川の働きについて模型実験をして説明しました(写真本人提供、キャプション本人談)
――その後は?
井上さん 前の職場になりますが、中国地方整備局岡山河川事務所の調査設計課長に異動しました。河川の整備計画を所管するポストで、氾濫した高梁川の整備計画の見直し、旭川の浸水想定区域の改定のほか、流域治水なども担当しました。現場担当者として、再び流域治水に関わったわけです。流域治水協議会の立ち上げ、流域治水プロジェクトのとりまとめなどに携わりました。個人的に思い入れのある政策なので、現場で動けたのは良かったです。
――流域治水は、どう実効性を持たせるかが、大きな課題だと思いますが。
井上さん おっしゃる通りです。流域治水の取り組みは、一つひとつの治水効果は微々たるものなので、大きな河川そのものに対して、どこまで実効性があるのかについては、私自身懐疑的に思っています。
ただ、上流の河川や支川など比較的小さな河川であれば、それなりの効果があると考えています。過去の事例を振り返っても、支川の氾濫による被害というのは少なくないんです。被害の中には、もともと田んぼで、浸水しやすい土地を住宅開発したといったケースも少なくありません。こういったところは、流域自治体のまちづくりとして対策できる部分なんです。岡山河川事務所では、そういった観点から、流域内の自治体を回りながら、実効性ある流域治水対策について、かなり力を入れて協議を重ねてきました。
たとえば、岡山県庁との協議では、「県庁の全部局の担当者を集めてほしい。ウチは関係ないとは誰にも言わせない」というスタンスで臨みました。
――けっこう強引ですね(笑)。
井上さん ええ、強引にやらないと、流域治水は進まないので(笑)。ありがたいことに、岡山県庁の河川課さんのご協力を得て、医療系や産業系、子ども政策の部署など、すべての部局からの参加を得ました。流域治水を通じて、これまで河川事務所ではあまり関わりのなかった農林部局や都市計画部局といった部局とお付き合いができたのは、私の財産になっています。
あと、岡山県内の27自治体、関連する広島県3自治体もすべて回りました。実際に行かないと、こちらの本気度が伝わらないと考えたからです。中には、片道3時間かかる自治体もありましたが(笑)、とにかくすべて回って、こちらの思いを伝えました。そもそも直轄河川と言っても、われわれが管理する区間は下流域に限られているので、流域治水を進める上で、上流域の自治体のご協力は不可欠なんです。
――あちこち回れて良かったんじゃないですか?
井上さん そうなんです。それぞれの地域の実情を知れたのは良かったです。ご当地のグルメもたくさん堪能できましたので(笑)。
とりあえず全部回る

中国地方整備局企画部。大学でリクルートを行っている様子です(写真本人提供、キャプション本人談)
――今のお仕事はどんな感じですか?
井上さん 今は、中国地方整備局企画部企画課の課長補佐をしています。整備局職員の採用、研修、人事などを担当しています。自分が学生時代は、専門の採用関係の会社が面接官をしているのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした(笑)。私自身が面接しています。来年度の大卒・高専卒の採用活動はほぼ終わりましたので、今後は高卒の採用が本格化していきます。来年度以降に向けて、裾野を広げる活動もしていく必要があります。ちなみに、管内の主な大学や高専はすべて回って、整備局のアピールをしています。
――とりあえず、全部回るんですね(笑)。
井上さん そうですね(笑)。自分の大学時代の採用活動を思い出しながら、楽しく回りました。
――回ってみてどうですか?
井上さん 県庁や市役所とで迷っている学生さんもいれば、ゼネコンやコンサルとで迷っている学生さんもいるので、改めて中国地方整備局の仕事の魅力はなんだろうと考えさせられました。
――これまでの仕事とは全然違ってそうですが。
井上さん 毛色は全然違いますね(笑)。ただ、個人的にスゴく良いと思っているのが、道路のことを一から学べていることです。入省してから道路の仕事に関わったことがなかったので、新鮮です。管内の事務所の事業を勉強するために、現在、すべての事務所回りをしています。
――やっぱり回るんですね(笑)。
井上さん ええ(笑)。道路系の職員と話をして、現場に行ったりしているのですが、今さらながら「道路っておもしろいな」と感じています。
――河川系と道路系は、やはり完全に分かれているわけですか?
井上さん そうですね。それぞれ「スペシャリストに育てたい」という思いがあるからです。途中で移籍することもできなくはないのですが、基本的には最初の数年間で河川か道路かどちらかの分野に決まるカタチになっています。河川の中でも、調査、工務、管理、水防といろいろな分野があるので、それぞれしっかり学んでもらう必要があります。私自身も河川系の職員なので、今後も河川畑でやっていくことになるんだろうと思っています。それだけに、今の職場では、道路に関わることができるので、スゴくおもしろいと思っているわけです。
――採用活動は順調ですか?
井上さん 幸い、今年の採用は、例年にないほど、多くの学生さんに来ていただけそうなので、ホッとしているところです。ただ、学生さん全体の傾向として、やはり地元の自治体志望が多いということは、不安材料になっています。転勤がネックになっているのだと思いますが、その辺はなかなか太刀打ちできない部分だと感じています。
興味が持てる仕事なら、気持ちが切れることはない
――本省は激務だと聞きますが、実際どうでしたか?
井上さん 自分で言うのもアレですが、私がいた部署はとてつもない業務量でした(笑)。災害対応ということで、スピードが求められるし、内容的にも重いものだったので、非常に大変でした。
たとえば、災害が起きたときに、その原因分析や今後の対応策などをとりまとめるのですが、そういった検討や学識者委員会のロジだけではなく、国会対応もするんです。国会で、気候変動による水害の頻発化・激甚化に関する質問が出ると、私が対応するわけです。令和元年東日本台風が発生した際の臨時国会で、30問ほど質問が出たんです。あまりピンとこないかもしれませんが、30問というのは、とんでもない数なんです(笑)。災害対応をやりながら、気候変動の検討も進めつつ、さらに国会対応もしなければならないということで、かなりの時間の残業をしました。
ただ、気持ちが切れることなく仕事をやり続けられたのは、興味が持てる仕事だったからであって、その点、自分は恵まれていたなと思っています。もし興味が持てない内容だったら、気持ちがプチンと切れていただろうと思います。そういう意味では、良い経験ができたと考えています。そんな忙しいときでも、週末は草野球をやっていました(笑)。
――グラウンドではヘロヘロだったんじゃないですか?(笑)
井上さん 若かったので、なんとかなりました(笑)。
――霞ヶ関勤務は、イマドキの学生さんにオススメできますか?
井上さん 入省して感じるのは、国土交通本省では河川や道路などの今後の方針決定に携わることができます。本当に興味があって、こういった仕事をやりたいという思いがあるんだったら、オススメの仕事です(笑)。
ただ、残業が当たり前の仕事の仕方は、「絶対的に是正するべき」だと思いますし、今後はより働き方改革を進めて、より魅力的な職場にしていかないといけないと思っています。今後、国土交通省に入ってくる後輩たちが魅力を感じてくれるように。

中国地方整備局企画部。私の執務室からの景色です。広島城を見下ろす(失礼?)、この景色が大好きです(写真本人提供、キャプション本人談)
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