災害対応で記憶がないぐらい徹夜した

現場で打ち合わせする鈴木さん(右) (香川県庁提供)
――鈴木さんはこれまでどのようなお仕事を?
鈴木さん 最初は高松土木事務所の維持課というところで、河川維持、ダム管理、災害を担当しました。「高松土木で働きたい」と希望を書いたら、その通りになりました。その年は、香川県としては戦後最大規模の災害が発生した年でした。右も左もわからない状態でしたが、災害担当として、記憶がないぐらいたくさん徹夜しながら、仕事をしました。
本庁勤務は都市計画課と河川砂防課にそれぞれ配属されました。都市計画課では都市施設整備関係と景観法関係などを担当しました。河川砂防課では砂防と河川を担当しました。現在は長尾土木事務所勤務で、道路の改修事業、維持管理などを担当しています。
――高松市内と市外の勤務年数の割合は?
鈴木さん 半々ぐらいです。
――高松市外での仕事はどうですか?
鈴木さん 実際にやってみると、自分にとって良いことだなと思っています。地元の方々とも顔なじみになって、すぐ声をかけていただけたり、良い関係を築けています。地元の方々と仲良くなると、受け入れられにくいことでも、「鈴木さんが言うんやったら、しゃあないか」みたいなことを言ってくれることがあるので、太いコミュニケーションができます。
デスクワークより外で仕事したい

大好きな現場仕事中の牟禮さん(香川県庁提供)
――牟禮さん、これまでのお仕事は?
牟禮さん 最初の配属先は長尾土木事務所でした。主に道路の舗装や拡幅工事を担当しました。次が高松土木事務所の河川砂防課で、河川改修や用地交渉、地元要望への対応などに携わりました。現在は本庁で積算に関する業務を担当しています。
――出先と本庁では仕事は違いますか?
牟禮さん 本庁は基本的にデスクワークになります。「あれ?」みたいな感じで、慣れるまでに時間がかかりました(笑)。
――どっちが楽しいですか?
牟禮さん 断然出先ですね(笑)。外に出て、受注者や地元の方とお話しながら仕事できるので。
――本庁勤務は希望を出したのですか?
牟禮さん はい。出先が続き、一度本庁に行きたいと思ったので。
自分がやりたいことは激しく主張する
――嬉しかったことはありますか?
牟禮さん 高松土木にいたときに、河川の拡幅に伴う橋梁の架替えを担当したことです。この橋梁は地元の方々の生活道だったので、工程などの調整ごとや相談ごとが頻発しました。上司や施工業者さんと相談しながら、毎日のように現場に出て、一つひとつ対応しました。2年ほどかかりましたが、工事が最終的に完了したときに、「やった〜」という感じで、達成感を覚えました。
――ツラかったことはありましたか?
牟禮さん 長尾土木事務所で道路を担当していたときに、大雪が降ったことがありました。山中の現場に出て、職員が交通整理の対応をすることになったのですが、私だけ現場に行かせてもらえなかったんです。上司としては、私が女性なので、体力的にキビしいという判断をしたのだと思いますが、私としては現場に行けないのはツラかったです。
――現場に行けなかったのがツラかった?
牟禮さん こういう緊急対応は現場経験が一番だと思っていたので、とにかく現場に行きたかったんです。「行きたい」とメチャクチャ言いまくったら、最後は行かせてくれました(笑)。
――言えば、行かせてもらえるんですね。
牟禮さん そうでしたね。自分がやりたいことは、激しく主張するところがあるので(笑)。
岡林さん 当時私も同じ職場にいたので、良く覚えています。「スゴいな」と思いました(笑)。牟禮さんは、このとき以外も、常にポジティブと言うか、なんでも「やりたい」という非常にアグレッシブな人物なんです。周りが「これ以上仕事したらダメでしょ」と思っている状況でも、牟禮さんだけは「私やります」という感じなんです。土木職として、非常に頼もしい職員です。男性職員にも、こういうタイプはなかなかいないんじゃないでしょうか。
牟禮さん 最初の上司から「若いころの経験は買ってでもするもんや」というお話を伺ったので、この言葉を素直に受け止めて、体力があるうちにできることはなんでもやっておこう、ということでやっています(笑)。
一同 (笑)。
岡林さん 自分の限界を試そうとしているの?
牟禮さん むしろ、自分の限界を超えられるんじゃないかという気がしています(笑)。限界チャレンジです。
一同 (笑)。
――積極性が裏目に出たことはありますか?
牟禮さん いろいろ手を出した結果、ラチがあかない状況に陥ってしまい、連日残業が続いてしまったことがありました。ただ、すべての仕事をどうにかやり遂げることができたので、「じゃあ、もうちょっとできるかな」と気持ちになりました。
一同 (笑)。
――次やりたい仕事はありますか?
牟禮さん 道路と河川は経験したので、次はどうしても港湾をやりたいです。港湾をやった土木職の女性はまだ誰もいないそうなので、ぜひ第一号になりたいです。
災害対応はスピードが勝負
――鈴木さん、仕事で嬉しかったことはありますか?
鈴木さん 嬉しかったことと言うより、印象に残っていることですが、河川砂防課で砂防を担当していたときに、西日本豪雨が発生し、災害対応に携わったことです。広島県や岡山県などで大きな被害が出ましたが、実は香川県でもかなりの土砂災害が出ていたんです。
雨が振り始めたとき、私はちょうど、国土交通省の本省で会議に参加していました。すると、気象庁の緊急記者会見が始まりました。「これはヤバいな」と思いました。なんとか香川に戻ってきたら、すでに被害が出ていました。
土砂災害担当として、災害関連事業の採択の申請手続きを行うことになりました。災害関連の予算は、その都度申請するので、とにかくスピード勝負なんです。私ともう一人の職員で、被害状況などの資料を急ぎとり集め、申請資料を徹夜で作成して、本省に持っていくという仕事に没頭しました。
直近に災害のあった県は、どんな資料を揃えれば良いかといったノウハウがわかっているので、申請作業も早いのです。しかし、経験の少ない私たちにはそのノウハウが乏しかったので、昔の資料を引っ張り出して、「これってどうやったんですか」と当時の職員の方に聞いたりしながら、苦労して資料をつくりました。災害対応はシンドいですが、やりがいがあります。