公務員は男女平等だから、公務員になりなさい
――就活はどんな感じでしたか?
横畠さん 私が就職するころは、公務員より民間のほうが全然給料が良い時代でしたが、意外なことに、父から「公務員が良い」と言われました。理由は「公務員は男女平等だから」というものでした。
それで担任の先生に相談したら、「それは良い」とおっしゃって、市役所などに問い合わせてくださったんです。いろいろな市役所に問い合わせた結果、広島市役所から「男女平等に試験します」という回答があったそうです。それで、広島市役所を受けました。広島市役所の土木職の女性としては、私が第一号でした。
広島に帰りたい一心で、岡山県庁から広島市役所に転職
堀さん 実は、私が最初に就職したのは岡山県庁でした。その後、広島市役所に転職したわけです。どちらも土木職です。と言うのも、私が就活したときは、就職氷河期で、民間企業はほぼムリで、公務員しかないという状況だったんです。
私は広島市出身なので、広島市役所を受けようと思っていたのですが、その年は採用がゼロでした。広島県庁も1人しか採用がなかったんです。そんな中、採用人数が多かったのが岡山県庁でした。それで岡山県庁を受けたわけです。
3年ほど岡山県庁で働いていたのですが、「やっぱり広島市に戻りたい」という思いが募っていました。どういうわけか、採用ゼロだった年の翌年から、広島市役所の採用が突然、20人ぐらいに増えていました(笑)。「これなら受かる」と思って、試験を受け、転職したわけです。
――岡山県庁よりは広島市役所が良かったわけですね。
堀さん そうですね。ちょっとホームシックになっていたところもありましたし、なにかとお金もかかるので、生活も楽ではありませんでした。
――岡山県庁ではどのようなお仕事を?
堀さん 美作県民局の建設企画課というところで、工務課が作成した設計積算書のチェックをしたり、工務課で、道路工事を担当したりしていました。
――広島市役所でこういう仕事をやりたいというのはあったのですか?
堀さん 岡山県庁の時と同じような仕事ができると思っていたので、とくにこれといってありません(笑)。とにかく広島に帰りたい一心でした(笑)。
橋に携わる仕事がしたかったので、広島市役所を受けた?
――志賀さん、就活はどうでしたか。
志賀さん 私が就活したころは、就職氷河期が明けたころだったので、民間企業の求人は豊富な状態でした。
ただ、親からは「公務員が良いんじゃないか」と言われました。昔に比べればマシになったとは言え、土木業界はまだまだ男社会なので、男女差別のあまりない公務員にしておきなさい、ということでした。それを言われたときに、民間と違って公務員がどんな仕事をしているか分からなかったため、「公務員か・・・」と一瞬思いました(笑)が、その後、公務員の仕事内容を調べ、最終的には、親の意見も踏まえて、市民の生活を直接的に支えることができる公務員を選択しました。
ただ、公務員と言っても、どこを受けるか迷いました。「大きな仕事をしたい」ということで、転勤のことなどは深く考えず、地元から一番近い政令指定都市の広島市役所を受けました。私は橋を見るのが好きなので、少しでも橋に携わる仕事ができると楽しいかなと思って、橋の多い広島市役所も受けたんです。
市役所初の土木職女性管理職になる
――広島市役所でどのようなお仕事をしてきましたか。
横畠さん 最初の配属先は、都市整備局の段原再開発部工務課というところで、換地などの区画整理事業を担当しました。2年目に現場に出るようになったのですが、それ以降はずっと現場です。いろいろな区役所の土木セクションを転々としながら、主に道路の新設改良をやってきました。基本的に積算から工事監督まで全部見ていました。この間、一番長くやったのは、電線共同溝の工事です。中区と西区で通算10年ぐらい担当しました。
――女性が現場にいるのは、当時としては、かなり珍しかったのではないですか。
横畠さん 最初のころは、かなり珍しがられました。中には、下品な感じでからかってくる業者さんもいました。基本的には気にしないようにしていましたけど、悔しい思いをしたこともあります。
――係長になったのはいつですか?
横畠さん 5年前です。最初の職場以来の都市整備局で、技術管理課土木管理係長でした。
――管理職になったのはいつですか?
横畠さん 昨年です。今の維持補修担当課長になったときです。一応、私が土木職の管理職第一号です。もともと、管理職になりたいとは思っていませんでした。管理職の仕事は、あまりおもしろくなさそうだったので(笑)。かと言って、絶対に管理職になりたくないという気持ちもありませんでした。なったら、なったで頑張ろうかな、ぐらいの感じの心構えでした。
――今のお仕事は、これまでと仕事が変わっているのですか?
横畠さん 変わっていますね。新設から維持の仕事になっています。維持の仕事は初めてです。
――管理職には慣れましたか?
横畠さん 慣れました。最初は不安でもまあ、すぐ慣れますよ(笑)。
――考え方とか見方が変わったということはありますか?
横畠さん 職員の人材育成に力を入れないといけないという思いが強くはなりましたね。元気でヤル気のある職員ばかりではないので(笑)。あとは、人に仕事を任せないといけないんですが、任せっぱなしにすると、「えっ」というときがあるんです(笑)。あれ、私の基準と違うみたいな(笑)。そういうときに、どういう物言いをすれば良いか、これまで通りのストレートな物言いではダメなのかなと、ちょっと考えてしまうことがあります。