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コンクリートにも季節商品?耐寒剤の生産・出荷が真っ盛り

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根津 寿子
公開日:2023.01.17
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ボースの辺見社長。秋口から春先にかけて、耐寒剤は出荷ヤードに並べる先から、集荷のドライバーが全国へ持っていく

ボースの辺見社長。秋口から春先にかけて、耐寒剤は出荷ヤードに並べる先から、集荷のドライバーが全国へ持っていく

冬季シーズンに入り、ロングセラー商材の出荷があわただしい。

ボース(埼玉県春日部市、辺見幸生社長)の耐寒用セメント混和剤「ボース耐寒剤」と「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」だ。

気温が下がる冬季のコンクリート施工では、低温下での養生になるため、強度発現が遅れると、凍害によりコンクリートの品質や耐久性が悪影響を受ける恐れがある。そこで、「コンクリート標準示方書(土木学会)」では、『日平均気温が4℃以下になると予想されるときは寒中コンクリートとしての施工を行わなければならない』と定めている。そのため、こうした寒中コンクリートの養生では、給熱や保温などの処置を施すことや、養生期間における温度管理が義務づけられ、ジェットファンや練炭による給熱養生が多く行われている。

ただ、これらの方法は温度管理が難しく、仮設作業が大掛りになり、過給熱によるコンクリートのひび割れ発生の危険性もあるとして、施工個所によっては耐寒剤・防凍剤などの混和剤の使用が一般化してきた経緯がある。

耐寒剤・防凍剤は、コンクリート中の水分の凍結温度を低下させるとともに、初期における水和反応を促進させ、コンクリート打設後の初期凍害を防止する目的で開発されたセメント混和剤。

日平均気温が4℃以下となる10月下旬~4月上旬は需要期で、ボースの生産ラインはフル回転となる。

予防保全の先行指標? 販売量が昨年逆転

「耐寒剤運用マニュアル(案)」によると、寒冷の北海道などでは1950年代から耐寒剤が活用されていた模様。ただ、当時の耐寒剤は塩素系であったことから、鉄筋の腐食などの弊害が懸念されていた。その後、1980年代に入ると、無塩化の製品が開発されたもののアルカリ量が多く、アルカリ骨材反応の危険性が増すこととなったため、無アルカリの製品が開発された。現在市販されている主な無塩化・無アルカリ型の耐寒剤は、亜硝酸カルシウムや硝酸カルシウムの単独あるいは混合したものが主成分であると示す。

ボースの3商品「ボース耐寒剤」と「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」の開発の歴史もこれと歩みを同じくする。

最も古い「ボース耐寒剤」の主成分は当時主流の塩化カルシウム。その後、官民での実証や研究が進み、塩化物を含んでいるものは鉄筋を腐食させる可能性が高いこと、またアルカリ性のものは、アルカリ骨材反応を引き起こす危険性があることなどが指摘され、無塩素・無アルカリの「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」を開発、上市した。

材料費の違いもあり、アップデートした後継商品の「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」のほうが値段は高いが、すぐに販売数量は「ボース耐寒剤」に置き換わるかと思われた。だが、無塩素・無アルカリの良さを前面に「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」のPRに注力するものの、現場に長く馴染んできた「ボース耐寒剤」の根強い定番感に及ばない日々が続く。

それが長寿命化が言われ始めたころから「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」の無塩素・無アルカリ性への引き合いが増え、5年に1度の省令点検が定められ、予防保全が説かれるにつれ出荷が伸びた。

「ついに昨シーズンは、新旧の出荷数量が逆転しました。今シーズンからは差が開いていくと思います。国が毎年夏に公表している道路メンテナンス年報には、損傷がまだ多く、それを修繕していくことが当面となっていて、予防保全段階に入っているところは少ないとありますが、材料においてはより予防保全効果が期待できるものへの置き換わりが進んでいるのかもしれないな、と近年思います。混和剤に限らず、コンクリート表面含浸撥水剤のウォーターカットにも同様の傾向が見られます」。

毎年綱渡りの中国リスク。「それならいっそ」とインド大使館へ

毎年春は「無事に出荷を乗り切れた感謝と安堵が社内にも、各地に配送してくれるドライバーさんたちにも広がるんですよ」。だが近年、「ほっとするひととき」と同時に、来季に向けた社長の気は揉め始める。「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」の原料調達の心配だ。

コールノンにつかう液体原料は国内での調達が可能だが、PW(パウダーの略)に使う粉体は国内では困難で、中国のメーカーに頼る。あらかじめ在庫を確保しているものの、1シーズン分には届かない。特に近年、安定供給されるかは「中国の情勢まかせ」で、スケジュールが確約されず、綱渡り感にさらされている。「近年、毎年何かがある。例えば大きいところでは、北京五輪の大気汚染問題で工場が止まってしまったり、原料はだいたい山西省から天津港経由なのですが、天津港で倉庫の爆発があって港の機能が麻痺してしまったり」。

そして「ゼロコロナ」を経験して、「メーカーには何年もお世話になって感謝している」ものの、仕入れ先の多角化を決断。そもそもアメリカ、中国、インドで調達しやすいことは分かっていたが、価格の面で中国のメーカーと取引をしていた経緯がある。そこで、長年間に入っている輸入商社の協力を得ながらインドのメーカーに接触。だが、「なしのつぶてで何の連絡も来ない」まま月日ばかりが流れる。「メールや電話では切迫感が伝わらないのか・・・、でもコロナ禍で簡単に行けるところではないし・・・、そうだ、インド大使館に行こう」と。

電話をしたら、「民間のことには立ち入れない」と前置きがあったうえで、「まずはメールで趣旨を送ってアポイントを取って」ということになり、輸入商社と文面を作って送った。「やれることは何ごともやってみないと」。引き続き仕入れ先を探っている。

材料紹介・コールノン、コールノンPW

ボースの「ボースコールノン」「ボースコールノンPW」は、アルカリ分0%、塩素分0%のモルタル・コンクリート用耐寒促進剤。塩化物を含まないので鉄筋を腐食させる心配がなく、また無アルカリなのでアルカリ骨材反応を引き起こす心配もないと、長寿命化や予防保全の観点で支持を集めている。

主成分の作用で、寒冷期に使用するコンクリート、モルタルの凍結温度を下げ、低温時のセメント水和反応を促進させるため、初期における強度の増進と凍結防止を実現する。

主な特徴は、▽氷点降下作用により、練り水を不凍性にし、凍結を防ぐ、▽セメントの水和反応を促進し、早期強度を増進する、▽塩素分0%のため、鉄部・鉄筋の発錆を防止する、▽アルカリ分%のため、アルカリ骨材反応を抑制する、▽仮囲い、暖房費などの養生費を低減し、経済的――など。

材料紹介・ウォーターカットスーパー

左部分(右側の黒線から左の部分)にウォーターカットスーパーを塗布したコンクリート板に水をかけると、塗布部は撥水して水の浸入を防いでいるが、無塗布部は水がすぐに浸み込む。

左部分(右側の黒線から左の部分)にウォーターカットスーパーを塗布したコンクリート板に水をかけると、塗布部は撥水して水の浸入を防いでいるが、無塗布部は水がすぐに浸み込む。

ボースはコンクリート表面含浸撥水材「ウォーターカットスーパー」を昨夏に発売した。同社では40年以上前から製造販売してきた撥水防水剤「ウォーターカット」が酸性雨対策、エフロレッセンス防止、凍害防止などで支持され、ロングセラー商品となっている。近年は長寿命化の社会的な要請が高まり、土木学会やNEXCOで規格化がなされるなか、従来品のウォーターカットの性能をさらに高め、例えば浸透深さで求められる基準の4~7mmなどの規格をクリアしたウォーターカットスーパーとして上市した。

同種の材料は現在、コンクリートの健全性保持に寄与する材料として、予防保全による長寿命化効果が期待され、新設時に剥落対策として塗布されたり、補修時に橋面からの伝い水による悪影響が懸念される個所に塗布されたりするなど、新設・補修ともに活用場面が増えている。同社でも土木学会などの基準をクリアしたことで、こうした個所で役立ててもらいたい考えだ。

浸透深さが確保できるほか、特徴は次の通り。

  1. 性状としてはジェル状でありながら比重が0.89と軽くチクソ性があり、立面や天井面にも一度塗りでダレや飛散もなく塗布量を確保できるので、一回で大きな浸透深さを達成できる。このため一回塗りで済み、短工期省工程施工で、作業費が縮減できる。
  2. 耐アルカリ性に優れ、長期の品質維持ができる。
  3. 撥水性が強力で水分を寄せ付けず、躯体中の鉄筋や鋼材の腐食を防ぐ。
  4. 塗布後の状態は無色透明となり、表面の汚れや黒ずみを防ぎ、点検時の視認性も保たれる。
ウォーターカットスーパーは土木学会の基準を満たす含浸性をもつ。とろみもあるため、壁面や天井部への施工でも、水のようにすぐに流れてしまうことなくある程度とどまる。

ウォーターカットスーパーは土木学会の基準を満たす含浸性をもつ。とろみもあるため、壁面や天井部への施工でも、水のようにすぐに流れてしまうことなくある程度とどまる。

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橋の記事を中心に、公共事業の記事を書きます。読んでくださったかたに、お役立ていただける情報発信を心がけています。データサイエンスに関心があります。Master of Business Administration
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