国土交通データプラットフォームの新ビジネス活用を期待
――国土交通データプラットフォームのお話が出ましたが、「少々使いづらい」という話を聞きますが。
森下さん データプラットフォームは今年4月に3.0にリニューアルしました。今回のリニューアルでは、新たに国や地方自治体が保有する橋梁やトンネル、ダムなどのインフラに関するデータや地盤データなど約22万件のほか、ICT施工の3D点群データ約250件を地図上に追加しました。
とくに検索機能が大幅に向上したほか、API連携も拡大したので、使いづらさはかなり改善されたと考えています(笑)。われわれとしては、新たなビジネス、サービスを考えている方々に積極的に活用してもらうことを期待しているので、今後もさらにつくりこんでいきたいと考えているところです。
――たとえばインフラツーリズムビジネスに活用するといったことですか?
森下さん そうですね。
今年夏にアクションプラン第2版を策定予定
――まだ短期間ですが、イノベーション担当の参事官として、これまでどのような動きをしてきましたか?
森下さん 今年の夏までにインフラDXのアクションプランの第2版を策定することになっているので、現在はそこに注力してやっているところです。それに向け、GW前に第2版のアクションプランの骨子を公表しました。
そのための前提として、われわれチームとして、デジタル技術に関する新しい知見知識などを勉強していかなければいけませんので、その辺についてもチカラを入れて取り組んでいるところです。たとえば、最近で言えば、民間技術を公募して、数時間飛行可能なドローンの実証実験を実施し、建設業界のニーズに合ったデジタル技術に関する調査を行っています。
――アクションプラン第2版の策定作業はどんな感じですか?
森下さん 現在各局で取り組んでいる内容を集約した上で、それらの中から組織横断的に取り組めるものを抽出して、省全体の取り組みとして方向づけ、とりまとめるといった作業になります。
――インフラDXには、レイヤーと言うか、段階があると思いますが、アクションプランはどこまで視野に入れたものを目指しているのですか?
森下さん 本省はもちろんですが、全国の地方整備局などの取り組みも含めたものにしたいと考えています。実際に発注業務を行っているのは地方整備局などなので、逆に言えば、地方整備局などの取り組みがコアになってくると言えます。あとは、データプラットフォーム、つくばにあるデータセンターあたりをスコープしたものにしたいと考えています。
われわれとしては、建設産業については、大きな会社、小さな会社の区別なく、建設産業全体として捉えたものにしていく考えです。たとえば、ICT施工については、小さな建設会社への普及が課題になっていますが、最近では、バックオフィスを含め、もっと簡易的なツール、サービスなどが出てきています。中小の建設会社がそういったツールを積極的に活用してもらえるような、そういうアクションプランにしたいと思っています。
各組織、各現場がヤル気にならないと、前に進まない

インフラ分野のDXで目指す姿(国土交通省資料より)
――「インフラDX元年」という言い方をするとすると、いつになるのでしょうか?
森下さん 今年度は「インフラDX躍進の年」ということになっています。昨年度は「インフラDX挑戦の年」だったので、昨年度が初年度、元年ということになろうかと思います。インフラDXは中央集権的な取り組みではなく、各組織、各現場ごとにそれぞれ取り組むものなので、みなさんがヤル気になってもらわないと、前に進まない取り組みなんです。
――インフラDXの取り組みはどれぐらいのスパンをかけて実現していくお考えなのでしょうか?
森下さん インフラDXについて明確な年次目標はありません。ただ、国土交通省として、20〜30年後の社会のイメージをこうしたいというビジョンは、第5期国土交通省技術基本計画の中で、すでにお示しさせていただいていますので、インフラDXもそのビジョン実現を目指してやっていく、ということになっています。
――インフラDXに対して後ろ向きな業界人もいると思いますが。
森下さん われわれがICT施工をやり始めたときも、同じようなことがありました。たとえば、「ICT施工?オペレーターがいるから、ウチには関係ない」という感じで、全然相手にされませんでした。その後、「ICT機器の購入費は積算でみますよ」とか、「検査の基準もICT施工に合わせますよ」といったカタチで、国土交通省としてICT施工をサポートしていったんです。その結果、ICT施工はかなり一般的なものになりました。インフラDXも同じようなカタチで前に進めていきたいと考えています。
インフラDXはもはや「いつやるか」の問題
――イノベーション担当の参事官として、建設業界に向けてメッセージをお願いします。
森下さん 建設業界は、生産性向上と担い手確保という大きな課題を抱えている一方で、働き方改革という大きな波が押し寄せています。そのような状況の中、建設業界全体として、少ない人員、短い時間でも、これまでと同じだけのパフォーマンスを発揮していかなければなりません。そこで期待できるのがデジタル技術です。
もちろん、最初は戸惑う方もいらっしゃるでしょうし、コストや人的資源に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、デジタル技術の導入はすでに、「いつやるか」だけの問題になっています。「やらない」という選択をすると、近い将来建設業は成り立たなくなっているかもしれません。建設業のみなさまには、できるだけ早い時期にご決断されるのが良いとお伝えしたいです。いきなり難しいことに手を出すのではなく、簡単なことから始めてみてはいかがでしょうか。
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