富山のPSスタジオで全国の工務店に説明
――国も高断熱住宅に向けて本腰を入れていますね。
今野次長 昨年、国土交通省は実に23年ぶりに断熱等性能等級4を超える上位等級を新設しました。ZEHレベルの等級5、さらにはその上位の等級6、世界的にも最上位水準の7等級まで新設されています。
上述の「APW 樹脂窓シリーズ 取扱地域工務店」に登録している工務店は836社(2023年5月末時点)で、今後も登録増に期待しています。
沢井さん YKK APでは2022年10月に、「断熱等級5・6・7 それぞれのすすめ」という小冊子を発行しました。国の取組みなどのほか、断熱材メーカー別地域別等級別仕様書を掲載しています。
APWと断熱材メーカーが供給する商品を組み合わせると、一定の地域であれば5~7等級を確保できるという目安にもなるため、ありがたいことに皆さまから重宝していただいております。1万部刷りましたが、1週間ですべてなくなり、追加で2万部増刷したほどです。WEBサイトからも読んでいただくことができるので、ぜひご覧ください。
――工務店などのプロユーザー向けの説明も強化しているのですか?
今野次長 2019年3月に、プロユーザー向け技術提案施設「パートナーズサポートスタジオ」(略称:PSスタジオ)を富山県黒部市に開設しています。2022年11月には、国の断熱等級の新設に合わせ、リニューアルしました。ここでは施工についても説明できる場でもあり、特に国の等級6~7の仕様を確保するにはどのような窓や断熱材を採用するかについて全国から工務店を招待し、会話しています。
等級6のニーズの高まりとともに、樹脂窓も増加へ
――そもそも、YKK APが他社と比べて、樹脂窓の販売を大きく伸ばした理由はどこにあるのでしょうか?
今野次長 国内で一番多く供給される窓は、外側はアルミ、内側は樹脂の複合タイプですが、断熱性能の点においては樹脂窓の方が優れています。YKK APだけでなく、各メーカーでも北海道で40年ほど前から樹脂窓を販売しており、北海道の新築戸建て住宅の窓はほぼ99%が樹脂窓です。
YKK APとしては、この断熱性能の高い樹脂窓を北海道などの寒冷地域に限らず全国に普及していこうという考えのもと、全国の工場で供給体制を整えてきました。
――国の上位断熱等級新設の動きは、樹脂窓の普及にかなり追い風になったのでは?
今野次長 ええ。省エネ基準の適合義務化への動きがあった際、その歩調に合わせ、ハウスメーカー様や工務店様に樹脂窓による高性能住宅の重要性を説明してきました。
現在の改正建築物省エネ法では2025年に等級4、2030年に等級5の適合義務化が予定されていますが、エンドユーザーにとっても家の中での暖かさと電気代の軽減の両立を目指していくためには、その先の「等級6」を視野に入れた高性能住宅建築を求める声が強くなると考えています。そして、等級6を実現していくためにはアルミ樹脂複合タイプの窓では難しく、樹脂窓が窓全体に占める割合が増加していくと予測しています。
――樹脂窓の商品で今後強化したいものは?
沢井さん 複層ガラスの「APW330」シリーズと、トリプルガラスの「APW430」シリーズがあるのですが、等級7を実現するためには「APW430」の採用が必要になりますので引き合いが増えているところです。
22年10月から高い断熱性で大開口を実現した「APW 331」ハイブリッドスライディングの販売も開始しました。障子は樹脂、枠にアルミ樹脂複合を採用し、異なる2つの材質を組み合わせた業界初となるハイブリッド構造の大開口樹脂窓です。また、2021年11月には、高い断熱性はそのままにデザイン性が向上する「APW 330」FIX窓スリムフレームを発売し、今後販売を強化していきます。
樹脂窓を普及させ、日々の生活に幸せを

APWのイベントでは多くの人が来場
――どのような販促をされているのでしょうか?
今野次長 YKK APでは、住宅事業者などのプロに向けて、新築・リノベーション両分野で有識者の講演を交えて情報発信するイベントを展開し、高性能住宅や樹脂窓の重要性を訴えてきました。コロナ禍前の2012年から2019年には集合型イベントとして「APWフォーラム」を開催し延べ52,800人にご参加いただきました。また、プロ・エンドユーザー向けの書籍・雑誌・カタログも発行しています。
沢井さん 2020年からはオンラインイベント「Live Stream Forum」を開催し、「APW」「リフォーム」「エクステリア」「インテリア」の各事業と合同でより住宅の環境の向上を目指しています。国の政策の転換、社会的意識の向上も相まって、今はビルダーや工務店の方と樹脂窓の今後について意見交換をしているところです。私たちはそのツールや下支えになる資料を作成しています。こうした啓発活動を続けていくことが樹脂窓の認知度を上げていく上では大切です。
これからの活動は情報発信が大きなカギに
――今後の活動の方針を教えてください。
沢井さん 窓事業推進室の活動のベースには、樹脂窓をより世の中に普及させていきたいという思いがあります。樹脂窓が普及していくことで、日本の住宅はより高性能となり、夏は涼しく、冬は暖かい、電気代も抑制できる。そして、住まわれる方々の日々の生活が幸福感で満たされていく。これが私たちのモチベーションです。
そのためには、これから情報発信は非常に重要になってくると考えています。樹脂窓に関して、あらゆる機会をもって情報発信を強めていく方針です。今回の「樹脂窓で高性能な家づくりに取り組む地域工務店の会」についてもその一環で、サイトから樹脂窓を取り扱う地域工務店を検索しやすくなるため、エンドユーザーにもメリットがあると考えています。
今野次長 これまで樹脂窓は、工務店などの施工のプロの皆さまからは強い関心を持っていただいていた一方で、エンドユーザーからの関心はそれほど高くなかったことも実情です。ですが、このコロナ禍で家づくりへの興味関心が高まり、窓にはさまざまな種類があることを知っていただき、そしてその中から樹脂窓を指名されるケースも出てきています。本当に嬉しく思っていますし、この流れをもっと強く、深めていきたいですね。
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