元請けのピンチをチャンスに
――元請けが落札した案件で現場所長が「確実にちょっと赤だな~」とか、予算や工期が逼迫している仕事は1次にも赤字幅は及びますか?
中里社長 正直な話、及びます。そういう現場は確かにリスクがあります。あるけれども、赤字の現場を必死に食い止めることも財産になっていくんで。赤字は社長の仕事なんですよ。「俺の仕事だから」って言ってのびのび社員ができるようにさせたいっていうのもあります。現場の赤字は社長の責任ですから。
梅野さん あと、当社は設計変更ができる人間が多いんで。元請けが困っていたら機転利かしてピンチをチャンスに。積算もやるし構造計算もできるから元請けからは信頼いただいています。写真も撮って元請けの時間を捻出していきます。
――でも、写真の撮り忘れって怖くないですか?
梅野さん 怖いです。だから、撮影してまとめたらその都度元請けにチェックしてもらって進めてます。「ここ撮れてないよ」って指摘されたらそこを撮る。やっぱり撮り忘れはありますよ。ですので撮影計画に則ってタイムリーにチェックしてもらいます。
――焦った元請けからしたら安心できますよね。そこまで委託できれば、管理業務や役所対応に注力できる。
梅野さん 元請けの打ち合わせにも出て懸念があれば進言する。測量システムもあるし施工計画だって書きますよ。
中里社長 図面作ったり測量したりとか、だから元請けから重宝される。
――ニーズに合うリソースが提供できる素晴らしい体制です。
中里社長 実はそこが重要で、元請けをアシストできる体制は自社のためでもある。元請けの打ち合わせに出席すれば、弊社の得意な施工を提案できるし、ひいてはそれが利益率にも繋がっていく。
元請けに儲けてもらいたいですけど、当社も儲けたいので。
――いいですね。付加価値率が高い。
梅野さん 傍から見たら「面倒なことやってるな」って見えてると思いますよ。施工図作って提案して。打ち合わせに参加して。よそはやってないですが、当社からしたらビジネスチャンスなんです。
中里社長 梅野は「変更」だって獲ってきますからね。
梅野さん 役所には理由づけできないと変更効かないですよね? 理由づけする資料作成はオレ、得意なんです。
――本来、元請けがやる仕事ですよね?
梅野さん 土木的需要が強いと不得意な部分が多いので、そんな元請けのために該当工種の資料を集めて理由づけしますが、増工要素の裏に1次としての旨味もあるんです。
たとえば護岸擁壁の切削も、ワイヤーソーイング協会の基本マニュアルがある。それを出典して、「設計内容から変更するなら、この施工方法の方が安全です」ってエビデンスを示すと仮設費を捻出できたりします。
――素晴らしい! 増工、増額!
梅野さん それを不足なく提出して理論武装して。上席に承認を得れるように導いていく。

施工前の横十間川の護岸

施工後、テラスにした横十間川
――御社のスタイルとして「変更」のコンサルテーションを元請けに対して提供する。無駄に書類で残業するのではなく、社員が皆、自社の利益に導いていくのが素晴らしい!
梅野さん そうですね。誘導していきます。でも、原価率下げた手抜きのモノづくりではなく、良いものを提案するのが共栄造園のスタイルですね。そして元請けに少しでも協力できればと思っています。
――2次、3次との関係はどうですか?
中里社長 当社も協力業者さんに助けられてますからね。業者さんのこと大切に思ってますよ。仲いいし。みんな楽しくやってると思う。
梅野さん 職人さんたちにも無理させないです。雨降ってきたら社長から連絡かかってきて「もう止めろ」みたいな。ゼネコンだったら1日分の人工もったいないから「もっとやれ」が当たり前じゃないすか。
だから、逆に結構楽しくやってます。業者さんたちとは仲良いから問題が起きた現場があったら皆で解決しようって決めてます。当社の協力業者をやると楽しいって業者さんたちに言ってもらってますよ。
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世界一周後に、建築から造園へ畑違いの転職
――梅野さんは建築畑からの転職で造園業にシフトするにあたり戸惑いはありましたか?
梅野さん 以前は、中堅のゼネコンにいましたが、そのときに共栄造園がよく協力業者で入っていました。そこで社長(中里氏)と知り合っていろいろ喋っているうちに、仲良くさせていただいてたんです。
その中堅ゼネコンから共栄造園に委託する仕事のとき、社長に「梅野が現場やるなら請けるよ」って言ってもらえましたが、そのタイミングで会社辞めて世界一周の旅行に行っちゃったんです。
中里社長 「何で辞めるんだバカヤローって」(笑)。よく飲食店とかに貼ってあるじゃないですか。世界一周のポスター。あれです。
梅野さん あれ見て「若いうちに行っとこう」と思ったんですよね。若気の至りというか何も考えないで行っちゃったんですよね。4カ月くらい。
――4カ月も!
梅野さん ブラックな中堅ゼネコンの体制に嫌気が差していましたから。ただ社長には「世界一周のために会社辞めるんです」って事前に伝えたんです。
中里社長 その頃、フジテレビ跡地(河和田町)を解体してURが再開発する案件が舞い込んできて「梅野もう帰ってきてるかな」って、ふと思って電話したら繋がったんですよ。
――ご縁って、偶然だけど人生の必然だったって思えますよね。
中里社長 梅野からいつ帰国するとか聞いてなかったんですけどね。
梅野さん あれ、凄いタイミングでしたよね。船降りて1時間後で帰国してすぐのタイミングに偶然社長から。その電話でURの仕事も軽くOKと伝えたんですよ。社長とは人間関係ができていましたから。
――それで、共栄造園有限会社さんへ入社に至ったのですね。
梅野さん はい。社長の人柄だけで決めたような感じだから。やっぱり人を惹きつける力を持ってるんですよ。あとね、社長、大きなことを言うから面白くて(笑)。
中里社長 (笑)。言うかな~。
梅野さん それで、入社直後のその現場ですけど規模は大きいし、図面とか見たら不明な部分も沢山あって「できるかな、大丈夫かな」って不安になったんです。元請けの所長からも「大丈夫ですよね?やれますよね?」って確認されていましたが、「大丈夫ですよ」って応えて。半分ハッタリですよ(笑)。
中里社長 建築のキャリアで可能な内容が多く梅野が管理しやすかったのが良かったですけどね。
梅野さん JVで大成さん(大成建設)と鹿島さん(鹿島建設)とでやるような、本当に大規模の現場でした。共栄造園がこんな大きな仕事を1次で回せるのかなって心配しましたよ。それまではマンションの外構とかを請けていたわけですから。
――梅野さんの力量を見越して受注した中里社長の先見の明ですね。
梅野さん いや、社長の顔の広さと営業力です。俺が現場で仕事しやすいように、社長も元請けに挨拶に来たり、少しミスっても「俺が電話して謝ってあげるよ」って、いつも社員と現場のことを考えてくれているからです。
中里社長 やっぱり社員を信頼してますからね。現場やってもらってるから、社員たちがやりやすいような体制を会社は作らないと現場は収まらない。協力業者の選定でも梅野に現場任せたなら梅野が決めればいいっていうスタンスです。

入社の馴れ初めを語る中里社長(右)と梅野さん(左)
――いい社長さんですね~。
梅野さん はい。だから俺もそれに応えようって。元請けの手伝いはだいたいやりました。それは中堅ゼネコンのキャリアがあったから無理なく実施できたと思います。異工種からの転職のスタートが順調に切れたのは本当に良かったです。
自慢話ばっかだなw
そういうノリなんでしょうね。
運の要素が大き過ぎるなら、
そうするしかないでしょ
実力は直接反映しない
結果では分からない
「建設業が嫌なら造園へ」って簡単に言うけど、造園業も建設業の一部で普通に大変だよね。専門知識も必要だし、土木の経験だけでどうにかなるものでもない。収入も安定してるとは言えないし、天候や景気に左右されやすい。ストレスもゼロになるわけじゃなく、結局クライアント対応や工期管理で悩むことになる。自然の中で働ける=楽、みたいなイメージに騙されると後悔しそう。転職するなら業界のリアルをちゃんと調べた方がいいと思う。
建設業が嫌になったら造園へ急げって、造園業(建設業者)30年やっていますけれど造園舐めすぎだし迷惑です。造園は生き物を扱う業種なので、樹種・土壌・庭園文化の理解・のちのメンテナンス等の数値で押さえきれない要素が多く、幅広い知識とセンスが必要です。また造園工事以外の管理業務(草刈・剪定等)も同様で、常に動いていないといけない重労働なので、決して楽ではありません。最近公団の団地内で土木分野の人間が適当に切った樹齢50年以上の立派なヒマラヤスギも枯れました。楽だから造園へというのは造園業に対する解像度が低すぎると思います。体力的なことに加え、虫やスズメバチとの遭遇などの危険もあります。監督業だけならそんな事意に介さないのかもしれませんが・・・造園業の人間は日々みんな大変な思いをしていると思いますよ。