建築・土木の離職ニーズに”造園業”!?
――さて、今回は技術者が異業種へ流出する前に、他の工種の会社へ転職すれば人材の流動化に寄与すると仮説を立てました。造園業は伝統技術の継承も難しそうですが、人材確保について伺えますでしょうか?
梅野さん 確かに多少キャリアのある方が入社してきたら楽ですよね。建設業イヤになってるけど、今まで10年15年とかいたキャリアがもったいないって、若干未練がある人。雇う側としても即戦力になるから年収ダウンになることはない。
――建築は勉強に時間費やしていくものだから、異業種に移ったらもったいないですよね。
中里社長 現状だと、造園業って地方から来る人が多いんですよ。それでこっちの大学入って、入社して。それで「実家が造園業やってるんで帰ります」ってなる。造園業の離職ってそれが多いんですよね。実家のために修行にくるみたいな。
梅野さん あ、それ多いですね。若い人の入社と退社ってそれに尽きます。
――経営者からしたら給料払い続けて育てているのに、これからってときに出て行かれたらたまらないですもんね。
中里社長 はい。そういう社員は実家を継ぐからいずれは退社すると覚悟はしてますけど、何年か一緒にやって出ていかれると堪える。
梅野さん そう。でも、そういう家業系じゃないと他から入ってこない実情もあるんですよ。いずれ出ていくのは分かっているけど仕方なく使う。
中里社長 中途半端で辞めて帰っちゃったっていうのは随分いますね。
梅野さん さんざん一緒に仕事して、やっと、現場任せれるかなってときに実家帰るんですよ。でも、それでもそういう人材を雇わないと応募がない。
大手さんなんかは家業を継ぐであろう社員は区別してるみたいですね。造園業はそういう入退社が多いから組織での配置は考えてるんですよ。
――企業側も雇用に対する費用をかけているから当然ですよね。
梅野さん 造園大手の仕事は商社に似ていて、購買力もあるし積算から現場のバジェットを渡されて丸振りされるときもありますね。
当然、現場施工の考え方で役所と見解が相違するから、会社は現場担当者をバックアップしなければいけない。でも、大手だと一人で放り出されてイヤになっちゃう子とかが出てくる。
中里社長 中小の場合だと求人出しても来ないですから大手から流れてきた人間は仕事出来ますよね。あとは、やっぱり人づてとか。仕事を通じて人と出逢っていく。
元請けと協力業者との取引で人間関係を築いて、それから入ってきた梅野のケースだとミスマッチがおきない。
梅野さん イチから造園に入る人ってあんまりいない。新卒の専門学科で勉強した人って、なかなかウチみたいなところは来ないですよ。
――とある1級土木施工管理技士の職員が「土木は出来栄えまったく見えないから達成感がない」と言い、造園に関心を寄せた方がいました。管理職員でも出来栄えの達成感を重視する凝り性な人は造園に向いているのではないでしょうか?
梅野さん 向いてると思います。建設業界をイヤになっちゃった人たちの受け皿として、造園業に求職の流れが出てきたら面白いですね。多少キャリアがあればすぐ馴染めるから転職先でのプレッシャーは少ないはずです。
――建築、土木のキャリアを活かして景観を施す。公園や庭園、緑道など、竣工して何年後かにそれらの現場に寄れば創造の実感がありそうですね。
梅野さん それは、ありますね。マンションが多かった中堅ゼネコンにいたときは忙殺されたのもあったけど、出来栄えの余韻に浸れることはあまり無かったです。
中里社長 当社が関わっている千代田区立の錦華公園は創造性に溢れています。景観デザインの先生がデザインした現場で、土木学会のデザイン賞を受賞された程の先生です。
土木の景観デザインって珍しいのですが、その現場の名称で先生が受賞した時に、関わった施工業者として共栄造園の社名も載せていただきましたよ。
――アカデミックな人がファンになるって本物ってことですよね。そういう先生ってすぐ本質見抜く。
梅野さん 創ろうっていう熱意が先生に伝わったんだと思います。
――なるほど。それならビフォーアフターで満足する作り手気質の主任技術者は向いてそうですね。
梅野さん 「造園屋って植栽でしょ」っていうイメージを持たれていますけど、造園業の幅広さを分かってほしいですね。土木的なこともあるしすべてやるんですよ。
だから、職域を理解してもらって建築や土木からの流動人材を捕まえたいですね。

過去に携わった施工前の九段坂公園

施工中の九段坂公園

施工後の九段坂公園
元請けシゴトに戻りたいとは1ミリも思わない
――前職の中堅ゼネコンでやられていた仕事は元請けの建築現場の施工管理、建築施工管理とのことですが、未練はないですか?
梅野さん まったくないですね。逆にあんなキツイ世界によく10年もいたなみたいな。
――もう、社畜やる時代じゃない(笑)。
梅野さん (笑)。そうですよ。中堅ゼネコンの元請けシゴトに戻りたいって1ミリも思えませんもん。
――そのキツかった主な要因を教えてください。
梅野さん 結局、残業ですね。普段、現場を見ているのに図面も全部書いていました。現場から帰ったあとに図面を書く。大工さんや設計屋さんに渡す図面なので優先的に。それに昔はわりと突貫だったので、ノルマが結構ハードでした。
今、考えると無茶苦茶な工期を設定されていたから当然、生活もハチャメチャに。例えば、夕方18時19時に現場を終えて、それから図面書いて夜に。それで夜中から仲間と飲み行っちゃう。酷いときなんて朝まで飲んでまた仕事みたいな…。
それが日常茶飯事です。当時、土曜なんか休めないじゃないですか。だから一日中仕事やっている感じでした。昔は「24時間当たり前だ」みたいな名物所長がよくいましたよ。
――そういう所長、建築は多かったみたいですね。
梅野さん そうなんです。そういう現場の雰囲気や業界の体質にイヤになっちゃったんですよ。自分の時間がまったくとれなかった。
――施工管理のキツい経験の中でも自信に繋がった現場もあったり、一概には言えないこともあったのではないでしょうか?
梅野さん それはありましたね。1,000億規模のJV案件で、裏JV職員として現場に入ったんです。
当時、自分はPC作業に不慣れでしたが、1人1台支給の先駆的な現場に驚きました。大規模な現場は経験が無かったので必死になりましたよ。施工内容も経験したことが無く毎日遅くまで仕事しました。この経験が自信にも繋がりました。
――現場へ1次で入った職員(主任技術者)は、実力を伴うパフォーマンスをすれば元請けの所長に信頼され、「ウチに来ないか?」と誘われると耳目します。でも、そこでスグ飛ばないのは残業がイヤだからですよね? 元請けに上がり年収も上がれど残業で疲弊する。1次にいれば手離れのいい仕事でほぼ定時であがれる。自分時間の有効利用をして人生設計を描きやすいみたいですね。
梅野さん そうなんです。だから中堅ゼネコンにいた前の生活と、共栄造園に入社してからの生活は180度違います。
共栄造園は8~9割役所仕事ですから土日は完全休みですし、連休も「長くとっちゃえよ」って社長が勧めるから大型連休はバッチリとる。現場さえなければ、連休に有給を連結させて、平日でも休めます。
中里社長 当社は盆暮れGW。みんなしっかり休んでますよ。そのほうがねえ、仕事に張りがでるんですよ。プライベートな時間を充実したほうが(笑)。
――やっぱり休んで遊ばないとデスね(笑)。
梅野さん 管理職員の裁量に任せてもらっているので、工程の進捗に合わせて早引きも有給も、現場に支障が無ければ一言も言われないです。
――調整できるならやる気もでますよね。責任管理だから自由度もある。
中里社長 造園業は年度末終わって仕事を取るのに半年かかるときもあるけど、そんなときはしょうがないから「もう、息抜きしよう」みたいな。暇なときは暇でずっと事務所にいますからね。「温泉行こうか!」って急に社員旅行を企画するときもあるんですよ。
――御社は那須高原に保養所もあるからいいですよね。
中里社長 はい。自然に還るというか……。
梅野さん いや、ただ、皆で酒飲むだけです(笑)。
中里社長 (笑)。いやねぇ、そういうのも大事なんですよ。本当の人と人とのコミュニケーション。人が仲良くなるにはメシとお酒!

那須高原にある共栄造園の保養所
――やはり、仕事は大事ですが、職場の人間関係や自分の時間も大切ですよね。結婚や育児、親の介護とライフステージも変わっていきますし。生活にゆとりができれば、仕事にもハリが出る。
梅野さん そうなんですよね。元請けのときは家に寝に帰るようなもんでしたけど、今は、明るいうちにもう家にいますからね(笑)。やっぱり自分もけっこう趣味があるので、その時間を充実できています。全くライフスタイルが変わりましたよ。
当社の社員なんかは資格取得の時間に充ててます。ヒマなときは事務所の中で勉強していいよって社長の方針で。家帰るとテレビとかいろいろ誘惑ありますからね。
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梅野さんは中堅ゼネコンで元請けとしてのキャリアを築いた後、1次下請けの造園施工を手掛ける中小企業へ転職した。建築の施工管理を10年で見切り、造園業へシフトチェンジ。
時間に余裕が生まれた梅野さんは年収も下がらずモチベーションを持続している。転職成功の鍵として、転職先の体制と環境が自己のキャリアとライフスタイルにマッチングするかが肝要に思われた。
また、毎現場丁寧に仕事し、そこで出会った人と良好な人間関係を築いた人脈が財産となっている。

時間に余裕が生まれた梅野さんはキャンピングカーライフを充実
中里社長 ちょっと余談だけど、ウチね、ソフトボール部もあってお客さんとか業者さんとも競技を通じて交流もあるんです。けっこうね、ソフトボールでは鳴らしてるんですよ(笑)。
梅野さん 社長の人脈は凄いです。有名な野球選手と飲み友だちですから。
中里社長 夢は大きく、事業を拡大させて野球関連のスポンサーになりたいんですよ。「共栄造園」の企業ロゴを野球場に掲出するのが夢なんです。

中里社長率いるソフトボールチームの数々のトロフィー
業者さんたちと「共に栄え」、元請けのピンチにヒットを打つ。
梅野さんと中里社長は朗らかで楽しみを充実させている。
取材中に帰社した社員の方々も気さくに感じられたのは、折に触れ、緑化でマイナスイオンに接しているからなのか……。
それはともかく、予算と工期に比較的余裕のある造園業の働きやすさなのかもしれない。
施工管理に辟易して転職を悩む方々に是非、造園業の会社をお薦めしたい。
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自慢話ばっかだなw
そういうノリなんでしょうね。
運の要素が大き過ぎるなら、
そうするしかないでしょ
実力は直接反映しない
結果では分からない
「建設業が嫌なら造園へ」って簡単に言うけど、造園業も建設業の一部で普通に大変だよね。専門知識も必要だし、土木の経験だけでどうにかなるものでもない。収入も安定してるとは言えないし、天候や景気に左右されやすい。ストレスもゼロになるわけじゃなく、結局クライアント対応や工期管理で悩むことになる。自然の中で働ける=楽、みたいなイメージに騙されると後悔しそう。転職するなら業界のリアルをちゃんと調べた方がいいと思う。
建設業が嫌になったら造園へ急げって、造園業(建設業者)30年やっていますけれど造園舐めすぎだし迷惑です。造園は生き物を扱う業種なので、樹種・土壌・庭園文化の理解・のちのメンテナンス等の数値で押さえきれない要素が多く、幅広い知識とセンスが必要です。また造園工事以外の管理業務(草刈・剪定等)も同様で、常に動いていないといけない重労働なので、決して楽ではありません。最近公団の団地内で土木分野の人間が適当に切った樹齢50年以上の立派なヒマラヤスギも枯れました。楽だから造園へというのは造園業に対する解像度が低すぎると思います。体力的なことに加え、虫やスズメバチとの遭遇などの危険もあります。監督業だけならそんな事意に介さないのかもしれませんが・・・造園業の人間は日々みんな大変な思いをしていると思いますよ。