山岳トンネルの仕事は、考えることも山積み
過去の話だが、筆者はある地域で山岳トンネルの仕事に関わっていた。工事ではなく発注者側の監理業務者という立場だった。
工事は大手ゼネコンを幹事とするJVが進めており、進捗に応じて課題の発見や解決策の提示、今後リスクとなりそうな項目の洗い出しや、それに対する解決策の検討・立案、トラブル対応などが主な業務内容だった。
トンネルの仕事は、考えなければならないことがたくさんある。日々変わる地質状況に応じて支保パターンを変更し、岩判定に立ち会うのだが、トンネルの知識はもちろんのこと地質の知識も持ち合わせていなくてはならない。加えて、施工計画や施工管理の知識も必要だ。
その一方で、設計側の視点も持ち合わせている必要がある。協議の場では、設計時ではこういう背景があってこう考えているのではないか、施工では現地がこういう状況だからこのように変更したい、それに対する金額の変更はこうで今後はこう進めていきたい、といった議論が交わされる。
当時の私は、知識不足でついていけず、「いなくていい!」と言われたこともあった。知識ゼロというわけではなかったのだが、その知識をどの場面で使うのが適切なのかを、まったく理解できていなかったからだ。
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土木を総合的に見れる分野の1つがトンネル
トンネル工事は、掘削工事、支保工、防水工、覆工、インバート工、地下排水工、坑門工などいろいろな工種が含まれている。土工事もあれば(純粋な土工事というわけではないが)、コンクリート工事もある。場合によっては、鉄筋工事もある。坑門工では、鉄筋コンクリート構造物築造の一連の流れを見れるし、擁壁工や押え盛土なども含まれることがある。しかも、地質についても学ぶことができる。
つまり、トンネル工事は、土木を総合的に見ることができる分野の1つなのだ。好奇心が旺盛な方にとっては、とても面白く感じられることだろう。
私もトンネル設計に関わっているときは、幅広くいろいろなことを学ぶことができた。構造計算の基礎的な事項を知ることができたし、自分で計算をやる機会も得られた。トンネル坑口付近では、上からの圧力がトンネルに加わると考えられる事象があり、トンネル構造体として構造検討を行ったこともあった。トンネルが交差する案件では、交差部の補強方法をどうするかを発注者やゼネコンと協議したり、教えてもらいながら検討をしていた。
初めはなかなかうまくいかなかったし、理解できないことも多かった。一度ならず二度も三度もミスったり、間違った答えを出したこともある。怒られた回数は数えきれない。しかし、土木をいろいろと学べたのはとても良い機会だったし、トンネルを離れてからも役立っていることが多い。