「現場力がシンカしたスマート現場」の構築へ
西松建設のデジタル戦略では、BIMがベースとなっている。同社は2022年6月に策定した「西松DXビジョン」を、「西松-Vision2030」「中期経営計画2025」の策定に伴い、2023年5月に「西松DXビジョンver2.0」へとアップデート。同ビジョンは下記の3テーマから構成される。

「西松DXビジョンver2.0」(ビジョンマップ)
- 現場力がシンカしたスマート現場
- 仮想と現実が融合した一人ひとりが活躍できるワークスタイル
- エコシステムで新しいサービスや空間を創り出すビジネス
「現場力がシンカした スマート現場」は施工管理と密接に関わるテーマだ。これまで培った現場力をデジタル活用でさらに向上させつつ(深化)、過去・現在の状態をデータとテクノロジーで正しく捉え、未来を予測する(進化)ことができる、スマート(高性能な)現場を目指していく。具体的には、自動化・遠隔化のほか、BIMによるデータ活用を見据えていく。
「仮想と現実が融合した 一人ひとりが活躍できるワークスタイル」は、仮想と現実が融合した働き方で、ワークライフバランスをとりつつも、高いパフォーマンスを発揮することで、一人ひとりが仕事に充実感を持つことができる新たな働き方を志向していく。「エコシステムで新しいサービスや空間を創り出すビジネス」は、建設・エネルギー・不動産などのデータを循環させるエコシステムを形成することで、顧客や社会にいままでにない理想的な空間を提供する新ビジネスを創出していく。

西松DXビジョンのテーマ
アップデートした「西松DXビジョンver2.0」では、新たにロードマップが描かれている。「現場力がシンカしたスマート現場」では、「設計・計画DX」「施工管理DX」「施工DX」に分類して、目指すべき将来像を示した。これは西松建設の経営戦略を達成するためにデジタルビジョンを明確にしたものだ。
今回、BIMと深くかかわる「設計・計画DX」では、提案型フロントローディングにシフトするという方向性を明示し、BIM/CIMのインフォメーションを高度活用していく。「情報をコストや工程に活用し、前倒しでシミュレーションします。今回のBIMによる施工図の取組みは、BIMの高度化のカテゴリーに属すると認識しています。また、施工管理DXでは暗黙知のナレッジ化があり、一人の人間が考えていることを形にしていくことにもつながります」(小原澤課長)
一つ目のゴールである「スマート現場1.0」(2030年)では、将来を見据えた提案が可能になる。「BIMでフロントローディングできるので、新たな建物の形状のほか、情報を活用し、コストは上るが工期は短縮するなど、さまざまな将来を見据えた提案が可能になります。顧客と合意形成する目的で、事前に形を作りこんでいくことがフロントローディングの目的といえます」(小原澤課長)

「現場力がシンカしたスマート現場」のロードマップ
全社的な”BIMリテラシー”の向上図る
こうしたBIM推進やDXを進める上、重要な観点がデジタル人材の養成だ。現在、西松建設ではBIM教育を本格的に開始。新入社員から40代前半を対象に、3~4年前からBIMについてeラーニングを実施。その後、各年次に建築知識研修で同様にBIM研修も展開している。係長や課長などの階層別研修でも、同様にBIM研修の項目を設け、BIMについて網羅的にリテラシーの向上を図っている。今後、必要になるBIMスキルが明確になれば、研修を組み直す方針だ。
「顧客の指定でBIMを導入する現場が一定数あり、その現場に対して集中的にBIM研修を実施しています。設計図を見るようにBIMモデルを見るよう指導し、BIMモデルを用いて打ち合わせができるよう要請しています。地道に研修を進めることが、デジタル人材の養成に効果があると考えています」(岩崎課長)
今回、西松建設のBIM、DX、さらにはデジタル人材の養成戦略について解説した。西松建設はBIMを施工管理や施工の情報にも活用していくため、設計、計画、施工管理と施工とすべてに関わっていくのが今後の方向性だ。「一つ目のアウトプットとして、生産設計BIMシステムを構築した意義は大きい」と小原澤課長は語る。今後の現場力のシンカにより、顧客に対して提案型の業務前倒しや価値を提供する「スマート現場3.0」の世界の到来が待ち遠しい。
人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!
「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、
こちらからお気軽にお問い合わせください。
このようなプロジェクトは絵に描いた餅にならないよう、外勤と内勤が一体となって自分事として取組を進めていくことが重要です。
西松はゼネコンの中でもDXに前向きなイメージがあります。
業界を巻き込んだDX推進を期待しています。