施工の神様 powered by 施工管理求人ナビ
  • 施工の神様とは?
  • 記事掲載・取材をご希望の方へ
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設用語

ロボットのチカラで、建設現場の生産性を根本的に変えていきたい

  • インタビュー
  • 技術を知る
公開日:2023.11.28 / 最終更新日:2023.12.12
  • シェア
  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0 コメント
  • メールで共有

現場の課題を解決するための共同研究

――ざっくりした質問ですが、先生の研究に占める建設分野の割合はどのぐらいですか。

山下さん 半分ぐらいです。

――ロボットの研究と土木関係の研究は、どのように決められているのですか。

山下さん ロボットの研究は、基本的に自分の興味関心のあるテーマを選んでいます。これは重要だなと思うテーマがあったら、その研究をするために必要な手続きをとって、自ら研究します。

一方で、土木関係の研究は基本的に共同研究です。共同研究では、各社ごとに解決したい課題があって、われわれも一緒にその課題を解決していく方式です。私が自ら課題設定しているわけではなく、ゼネコンさんなどからご相談をいただいて、取り組んでいるわけです。

つまり、ゼネコンさんなどは、ロボットの研究をしたいのではなく、現場の課題を解決したいのであって、それを解決するための手段としてロボット技術を活用したいというお考えをお持ちで、われわれは、共同研究を通じて、それをお手伝いするという関係性ということです。

そういう感じで、研究テーマを決めています。

――研究室には留学生もいるようですね。

山下さん そうです。おかげさまでいろいろな国から来ていただいています。研究室には現在、スタッフを含め43名が在籍しています。

【年収700万円以上】 建築・土木施工管理の求人[PR]

GPSを使わない自己位置推定システムを開発中

カメラとレーザで自己位置を推定するユニット(山下教授提供)

カメラとレーザで自己位置を推定するユニット(山下教授提供)

――建機の遠隔化、自動化といったところも研究ターゲットに入っているのですか。

山下さん そういう研究もやっています。あるゼネコンから社会人博士として研究室に所属している方がいるのですが、建機の自動化に必要な自己位置推定の研究をしています。自己位置推定に使われる技術としてはGPSがありますが、山奥とかだと、つながらないことがあります。われわれの研究では、カメラやレーザを使って自己位置推定するということをやっています。センシングを応用した技術です。

――センシングと言っても、自動車に求められるセンシングと建機に求められるセンシングでは、異なる部分もあると思われるのですが、その辺はどうですか?

山下さん 自動車にしても建機にしても、自分が今どの位置にいるのかを把握する点においては、共通していると思います。大きく異なると思われるのが、周りの環境に対するセンシングの部分だと思います。

自動車のセンシングは、移動のためのセンシングなので、周りの環境、たとえば道路環境などをセンシングする必要はありません。一方、建機のセンシングは、作業のためのセンシングなので、土を削ったり、土を盛ったりするので、刻一刻と変化する周りの環境をセンシングする必要があるということです。

――カメラでセンシングするのと、レーザでセンシングするのとでは、違いがあるのですか。

山下さん そこにはいろいろな違いがあります。たとえば、建機にカメラを付けて映像を撮るのは、映像を見ながら、人間が操作するためです。つまり、人間が理解しやすい情報を提示するための機器ということです。それに対して、レーザは、人間が見るというより、取得した情報をシステム内部的に処理するためのものです。カメラでも3次元データが取れないわけではありませんが、人が見るための情報ではないので、3D点群データのほうが効率的なわけです。内部的な処理には、たとえば、建機の車体制御の処理といったことがあります。

熟練技術者に頼っている作業を自動化したい

――センシングやAIを活用すれば、いずれは、人間の経験や感覚に頼らず、いろいろな作業ができるようになるのでしょうか。

山下さん われわれとしては、それを信じて、そうなれば良いということで、研究しています。熟練の技術者が持つ技術はもちろん素晴らしいものですが、今後、そういった方々は減っていくことが予想されています。そこに作業を自動化したいという社会的ニーズがあるわけです。

たとえば、さきほど触れた打音検査のロボット化で言えば、まず、状態が良い音のデータと悪い状態のデータをたくさん集めます。それをAIに学習させて、打音の良し悪しをAIに判定させるというシステムになっています。このシステムによって、必ずしも熟練した技術者でなくても、打音検査ができるようになるわけです。

ただ、現実の問題としては、たとえ良い技術を開発しても、人がやっていたものをすぐに機械に切り替えられるわけではありません。あと、人から機械に切り替えた際に、生産性や効率性が一時的に落ちることもあります。

たとえば、計測機器を設置して、機器を操作するより、メジャーで計測するほうが早かったりするからです。ただ、長期的に見れば、メジャーで計測する人間がいなくなる可能性があるので、大学の研究者という立場から、世の中の役に立つ技術をいろいろ提案させていただいている感じです。

――良い技術であっても、実際の現場ではなかなか受け入れられない現状があると思いますが、どうごらんになっていますか。新しい技術が導入されるためには、現場の人が納得できる、見てわかるための工夫も重要だと考えています。

山下さん 確かにそういうことはあると思います。新しい技術であっても、現場の人にとってはブラックボックスになっている面があると感じています。たとえば、目に見えるレーザ計測装置を開発して、トンネル内で照射するといった研究をしています。ドローンや三脚に機器を載せて、今どこにレーザが当たっているかをわかるようにして、トンネルの断面形状を計測するわけです。

目に見えるレーザ計測装置(山下教授提供)

目に見えるレーザ計測装置(山下教授提供)

道のりはキビしいですが、日々チャレンジしているところです(笑)。

建設現場の生産性を根本的に変えるため、チャレンジしていきたい

――抱負をお願いします。

山下さん 土木分野にはまだまだ解決すべき問題がたくさんあると思います。そういう問題をいろいろな方とお話をしながら、われわれの技術が役に立つことがあれば、それを使って現場の問題を解決していきたいと考えています。

ロボットには、人がやっていることを肩代わりするという役割のほかに、人ができないことをやるという役割もあります。

たとえば、音響カメラを用いたセンシング技術をマリコンさんと共同開発しています。音響カメラは、音を飛ばして、跳ね返ってきた音をキャッチすることで、状況を把握するモノです。普通のカメラだと、水中に入れると数m先を撮影することができませんが、音響カメラなら、それができるわけです。音のほかにも、光や温度の情報を使ったカメラもあります。

左は音響センシングのユニット、右は取得データ(山下教授提供)

左は音響センシングのユニット、右は取得データ(山下教授提供)

こういう技術を使うことで、これまでできなかった作業ができるようになると思います。生産性向上と言われていますが、生産性を根本から変えることができると思っています。こういうことにもチャレンジしていきたいと考えています。

人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!

「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、

こちらからお気軽にお問い合わせください。

«12
  • この記事をシェアする0
  • この記事をツイートする0
この記事のコメントを見る0
こちらも合わせてどうぞ!
「鉄筋の結束は、もう職人がやる仕事じゃない」 香川発の建設ロボが、鉄筋職人の汗一粒の価値を高める
「鉄筋の結束は、もう職人がやる仕事じゃない」 香川発の建設ロボが、鉄筋職人の汗一粒の価値を高める
ロボットで職人の汗一粒の価値を高める 地方から果敢に建設DXにチャレンジしている男がいる。建ロボテック株式会社の眞部達也社長だ。 眞部社長が開発したのは、鉄筋の協働型鉄筋結束ロボット「トモロボ」。自らが鉄筋職人出身でもあ...
AI時代は建設業にとって追い風か
AI時代は建設業にとって追い風か
AIが建設業をひっくり返す? ChatGPTなどの登場によって、世界中がかなりドキドキしているように思います。AIの進化が、自分たちの仕事領域を奪うのではないかという不安から来るものです。僕も実際に使ってみて、その破壊力...
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
※本記事は『建設ITワールド』の許諾を得て掲載しています。 「BIMを活用したいけれど、人材が見つからない」「どう始めたらいいの?」—そんな悩みを解決するのが、ウィルオブ・コンストラクション(本社:東京都新宿区)が提供す...
インフラ補修の一次下請けで受賞歴が多い会社は「ピュアで明るい会社」だった!
インフラ補修の一次下請けで受賞歴が多い会社は「ピュアで明るい会社」だった!
創業者がインフラ補修大手を経て、同業の一次専業者(下請け)として設立した横浜システック。施工管理を主力に、施工も一部担う。コンクリート構造物補修の確かな品質に定評があり、創業から約20年、さまざまな発注者(元請け業者)か...

この記事を書いた人

四国の犬
この著者の他の記事を見る
基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
ロボットのチカラで、建設現場の生産性を根本的に変えていきたい ロボットのチカラで、建設現場の生産性を根本的に変えていきたい

施工の神様をフォローして
最新情報をチェック!

  • フォローする5388

現場で使える最新情報をお届けします。

  • 施工の神様
  • インタビュー
  • ロボットのチカラで、建設現場の生産性を根本的に変えていきたい
  • 施工の神様
  • 技術を知る
  • ロボットのチカラで、建設現場の生産性を根本的に変えていきたい

コメント(0)

コメントフォームへ

コメントする コメントをキャンセル


コメントガイドラインをお読みになった上で投稿してください。

email confirm*

post date*

あなたも施工の神様に記事を投稿してみませんか?
おすすめ記事
  • 【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

    【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

  • 点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

    点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

  • 「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

    「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

  • 「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

    「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

  • 建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

    建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

  • 人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

    人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

注目のコメント
  • 権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 公務員なんて、甘ったれのわがまま人間の巣窟。特に、バブル世代にパワハラとかするのが多い気がする。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 34℃で湿度がどれくらいか判断出来ないが今日びの38℃超え猛暑に比べればまだまし。 皆が言う体調管理なんかで対応出来る範囲を超えている。 朝一番から警戒レベルMAXが普...

    最高気温36℃の”猛暑日”。舗装工事は中止すべきか?【熱中症対策】
  • 勝手に喫煙休憩するな→即飛び蹴り シュールなコントみたいだな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 辞めていいんじゃねーか? 下請けの奴隷ならともかく、大手ゼネコンの現場監督ならやりたい奴いくらでもいるだろw

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 若くても無能なら要らない

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • そんな無能はやめた方が現場のためだよ

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 飛び蹴りは普通に罪にならないか?

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 休憩するなら水分取るだけで充分なのにねwタバコまで吸いに行き注意されると即飛び蹴りとはヤニ中毒は危険だな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 結局本人の申告によるものでしかないので、無理がありますよ。 すべての作業員さんにカメラつけて録画でもするならば別ですが。 公共工事にしろ民間工事にしろ、昔からすれ...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 熱中症チェックシートは本当に不毛。 挙句の果てに、それを書いていても熱中症が発生したら「管理が甘かったからだ!」といってチェック項目を増やしたり、記入内容の真偽を...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 建設業界のパワハラと言うよりは特定の会社の特定の上司のパワハラ。

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 返信した人の日本語もわかりません。 やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 建設業界って 何処に業界のパワハラをかいてるの? やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 所長が部下の人間性を否定するような現場がうまく回るはずがない。 現場は信頼関係で成り立っている。 現場の雰囲気は主に所長がつくりあげあてしまう。そのような管理職が...

    65歳以上と外国人は、全員”安全弱者”のヘルメットバンドをつけろ!? 納得できない話
  • この著者は神様とは思えないです まず、職人は工程を縮めたいんじゃなく無駄が嫌いなんです。それは管理者もだと思いますよ。 無駄=損害ですからね。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • スーパーゼネコンの監督とは仲良くなれないな。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • まったく現場の事を理解していない! もっと色んな事を経験して、勉強して下さい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • 不仲は横柄で生意気ななゼネコンのセコカンが原因だと思いますけどね。 舐められない様な教育受けているので仕方ない所もありますが。 職人さんも見栄えよりも工数へらして...

    「不仲説」 現場監督と職人
  •  不仲なら発注しない、請負わない。 お互い仕事できなくなればいい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設
    用語
【PR】施工管理技士の転職に特化した求人サイト
施工の神様ロゴ
  • 施工の神様とは?
  • 原稿募集
  • 取材ライター募集
  • 運営会社
  • PR・プレスリリース
  • プライバシーポリシー
  • 広告掲載について
  • お問い合わせ
Copyright © 2025 WILLOF CONSTRUCTION, Inc. All Rights Reserved  リンクフリー
施工の神様