新アリーナ「オープンハウスアリーナ太田」は太田市民の拠り所に
――次に太田市での取組みは。
横瀬氏 太田市は、群馬県の中で高崎市、前橋市の次に人口が多い第3番目の地方都市です。SUBARU(スバル)の企業城下町としても有名で製造業が強い市です。ただ一方で観光業としての魅力が不足しており、太田市民が自信を持って周りにオススメできるものを増やせないか、といった課題がありました。
太田市は元々、スポーツによる街づくりに注力し、過去にはラグビートップリーグの「パナソニックワイルドナイツ」が拠点を置いていましたが、現在は熊谷市に移転しています。スポーツによる市民の一体感はとても大切なものですから、この事態に太田市は危機感を抱いていました。
一方で、オープンハウスグループは、2019年にプロバスケットボールチーム「群馬クレインサンダーズ」を買収しましたが、リーグの将来構想における新B1基準の「B.LEAGUE PREMIER」の参入条件として、集客規模が5000席以上のアリーナが必要でした。また、1試合当たりの平均集客が4000人以上、売上が12億円以上の基準も2026年開催までにクリアする必要があり、アリーナ新設は必須でした。
そんな折、太田市から「うちに是非」とお声を掛けていただきました。あわせて「令和元年東日本台風」における川の氾濫では、太田市の避難所不足の課題も露呈しましたので、男子Bリーグの基準に沿ったアリーナと避難所の機能を合わせた施設「オープンハウスアリーナ太田」が誕生しました。
事業スキームとしてはみなかみ町と同様、オープンハウスグループが太田市へ企業版ふるさと納税を行いました。同制度を活用することで、地方自治体や民間が単独で建設するに比べ、両者とも負担が少なく、高スペックのアリーナ建設が実現しました。

完成した「オープンハウスアリーナ太田」は太田市民の拠り所となった
――太田市の活性化に、「オープンハウスアリーナ太田」は大きく寄与されたのでは。
横瀬氏 太田市も「太田市をバスケの聖地にする」と非常に協力的です。「オープンハウスアリーナ太田」の完成は2023年4月ですが、群馬クレインサンダーズはアリーナができる以前の2021年には前橋市から太田市にホームを移転し、古い体育館を活用していましたが、集客は2倍に伸び、熱のこもった応援をいただいたことは大変ありがたいことでした。市長をはじめ、太田市民を挙げて、全員で群馬クレインサンダーズを応援するという強い意志を感じましたね。街中ではバスケットゴールが設置されたり、選手の垂れ幕を飾っていただいたり、さらには、太田市と日本郵便にも協力いただき、群馬クレインサンダーズのチームカラーの黄色い郵便ポストも設置され、多くの太田市民の間に応援ムードが浸透しています。
「シビックプライド」という言葉に代表されるように、「地域への誇りと愛着」はとても大切です。「オープンハウスアリーナ太田」のこけら落としには、涙を流されているお客様がいらっしゃるなど、群馬クレインサンダーズは太田市民のシビックプライドに大きく貢献しています。
オープンハウスグループとしても、「オープンハウスアリーナ太田」には想像以上に手ごたえを感じています。我々が創り上げた空間の中で、最も多く人の心を動かし、実際に住まわれている方が誇りと思える場にもなりました。

プロバスケットボールチーム「群馬クレインサンダーズ」を応援する太田市民の熱量は高い
「オープンハウスアリーナ太田」があるからこそ、ここに住みたい、子どもをここで育て、バスケットボール選手になってほしい。そんな方々も今後出てくると考えています。街に誇りを抱き、定住される方も増えてくるでしょう。そして、最終的には住まわれる方に住宅を提案するという好循環のサイクルが生まれてくるのです。
桐生南高校跡地をレンタルスペースに
――桐生市での取組みはいかがでしょうか。
横瀬氏 こちらは人口減少で他校と統合された群馬県立旧桐生南高校跡地の利活用の取組みです。学校は廃校になってしまうとその歴史が止まってしまいます。そこで群馬県は2021年3月に桐生南高校跡地などの公募プロポーザルを実施し、オープンハウスグループが優先交渉権者として選ばれました。現在は「KIRINAN BASE」として2023年夏に生まれ変わっています。「KIRINAN BASE」のKIRINANは、桐生南高校のかつて親しまれた略称「桐南(きりなん)」にちなみ、BASEには、人々が集う交流拠点という意味を込めました。
学校運営者が学校を利用する際は、建築基準法の縛りが若干緩くなりますが、民間事業者が引き取ると事務所扱いとなり、消防施設を増設する必要があるため、順序だてて工事を進めつつ、同時に地域の方に向けて屋内・屋外問わずさまざまな用途でレンタルしています。
体育館でバスケットボールの練習などをされる方や校庭でドローンを飛ばされる方もいますし、映画やテレビのロケ撮影についても問い合わせがあります。また、群馬クレインサンダーズのユースチームの練習場として利用することも考えています。

桐生南高校跡地は「KIRINAN BASE」として再生
ほかにも、桐生市はかつて養蚕で栄えた街で関連企業や職人さんも多いのですが、アトリエが手狭になってきているという声もあるため、養蚕技術を職人から学べる場としての活用も検討しているところです。
みどり市の国民宿舎の設計・運営も担う
――最後に、みどり市での取組みをお願いします。
横瀬氏 みどり市は、2023年7月に「国民宿舎サンレイク草木」の老朽化等による利用客数の低迷、維持管理費の負担増などの課題を解決し、みどり市東町草木湖周辺地域の再生や地域の活性化を図るため、施設の建て替えを実施することとしました。そこで基本設計、解体設計業務の委託、施設の管理運者の経営的な視点を設計業務に反映させるため、管理運営事業予定者を公募し、オープンハウスグループが同事業の運営者となり、公設民営として運営方針を転換することになりました。
みどり市の「国民宿舎サンレイク草木建替」の事業スキームは、設計と運営がオープンハウスグループとホテル運営会社がJVを組んで担当します。工事は未定ですが、市からの発注が予想されます。敷地内を回遊する宿泊施設を検討しており、今は基本設計の段階で、2026年度の開館を目指しています。
宿泊場所は戸建て型で、少し歩いたところに飲食棟を設けます。近隣には「草木湖」があり、散策コースもあるため、なるべくアクティブに自然の中を回遊して楽しんで頂けるような仕掛けをつくります。

みどり市の「国民宿舎サンレイク草木」の建て替え / 出典:みどり市の「国民宿舎サンレイク草木再生基本計画」
街づくりが戸建て事業とのシナジー効果を生む
――こうした地方の街づくりと主力事業の戸建て住宅のシナジー効果についてどのようにお考えでしょうか。
横瀬氏 冒頭にお話したように、街をしっかりと再生したうえで、最終的に戸建て住宅販売につなげていく考えです。また、国民宿舎サンレイク草木建替工事では、基本設計業務を子会社が受注していますが、戸建て住宅以外の能力を広げ、次の事業に繋げるための種まきの場にもなっています。
また、戸建て事業の強みは製販一体です。結果、住宅を安く供給できます。それは家以外でも同様で、たとえばホテルの施工を安価でできれば、お客様の宿泊費も抑えることが可能です。今後の地方での街づくりの展開では、同じく施工での請負を目指し、良いものを安く提供するという根底の部分が実現できます。そのためには自社を育てていくこととM&Aにより事業を拡大することも重要だと考えています。
――オープンハウスのイメージも大きく変わっているように感じます。
横瀬氏 我々は今、”総合デベロッパー”を標榜しています。これまでは都心部で手の届く価格の住宅を提供してきましたが、足元の数字はしっかりと固めつつも、現在は街全体をつくるフェーズに入ったと考えています。
そして、東京には八重洲、丸の内、秋葉原、渋谷、新宿などすでに多くの核が存在しますが、東京から少し離れた場所にあり、移住者も多く、環境も良い群馬県のようなポテンシャルのある地域にこそ街づくりのニーズがあります。
街の中心をつくると、シャンパンタワーのように周辺に人やモノが流れ、街全体が発展していく、非常にやりがいのある仕事です。私自身も、次はどんな街づくりをしようかと日々考え、ワクワクしています。
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