マンション新築工事における外部階段の施工改善
マンションの新築工事は、都会の一等地では「○○タワー」などと言われ、高層の複合ビルの建設がメインとなります。
しかし、ちょっと都会を外れると、中層(13~20階)のマンションが、まだまだ主流です。全国的にもマンション建設といえば、中層マンションの現場を想起する建設技術者のほうが多いのではないでしょうか?
今回は中層マンションの鉄骨外部階段の施工に関するアイディアを紹介します。
マンション建設工事のクローラークレーン使用頻度
マンションの建設工事は、短い工期、無事故で完成させることが最も重要視され、工程もシステム化されています。
フロアのスラブコンクリート打設が終わると、次の日には、その上のフロアの作業に入っていく、というのが当たり前です。
図1は、中高層マンションの一般的な平面図。
建設時に使用するクレーンは、100~150tのクローラークレーンが一般的です。

【図1】中高層マンションの一般的な平面図
クローラークレーンの使用回数が多すぎる
あるとき、中層マンションの建設現場で、鉄骨の外部階段の搬入がありました。
作業工程は、設置されているクローラークレーンで荷卸しを行い、柱を地組みし、PC階段部分の手摺りを取り付けるという流れです。
そして、建方に入っていきますが、ここからはクレーンの使用回数が作業工程の効率化に大きく影響してきます。
1カ所の階段建方(3フロア分)の使用回数は21回。
これだけの回数をクレーンで上げ下げすれば、最低でも半日以上はかかってしまいます。
このムダを解消する改善策を考えなければなりません。
現状、建物側には基本的にクローラークレーンが配置され、ヤードには、常にラフタークレーン25t程度のものが用意されています。
階段室、EV室周りは、外部足場が組まれるのが一般的です。
ここで私は階段の搬入から建方完了まで約1日かかっていたのを改め、クローラークレーンの使用時間を1時間〜1時間半で終わらせる方法を実施しました。
クローラークレーンの使用時間を減らす工夫
建物側のクローラークレーンは、ほとんどの業者が使用したいと思っています。このことを踏まえて、階段の搬入時期は、ヤードのラフタークレーンの使用頻度が少ない日に設定し、地組みの日とします。
普段から使用されていないスペースを地組みの場所として設定し、叩き(コンクリート)を打ち、その上に敷鉄板を敷き、仮溶接します(図2)。

【図2】地組みスペースに鉄板敷
そして、鉄骨階段の柱部分を立てられるように、仮設のツカを立てます。長さは前後のレベル差(1m)を付けて溶接します(図3)。

【図3】敷鉄板の上に、仮設のツカを立てる
この部分にラフタークレーン25tで階段のすべてを地組みします。
柱の建て入れは、外部足場から繋ぎを取ります。このため階段は垂直に地組みができます(図3)。

【図3】垂直に階段を地組みできる
この方法により、建物本体の工程を早めることができました。
総重量的には8~9tでクローラークレーンの使用時間は玉掛から外すまで1時間半。
さらに高所での作業を大幅に減らすことができ、安全安心に作業を進めることができました。
また、立ち入り禁止エリアを短時間しか必要としないので、他の作業に影響を与えることも少なくすることに成功しました。
建設現場では、常に改善意識を持つことが、コスト削減につながります。
どうぞ現場改善のヒントとしてご参考ください。
なるほどアイデアが発想かすごいですね。勉強になりました。