建築家やゼネコンと「共創」で歩む
パブリックトイレの普及に向けて、TOTOのテクニカルセンターでは「共創」というコンセプトのもと、施主・設計・ゼネコン・サブコンの建築の専門家とコラボレーションをし、最先端の空間を共に創りあげてきた。
この共創は、①トレンド紹介(share)、②空間提案(imagine)、③技術訴求(plan)、④ニーズ把握(check)という4つのステップを建築の専門家の顧客と共に循環させ、時代の変化に合わせた新しい価値を水まわり空間に提供している。水まわり基礎やトレンド情報などの情報共有から始まり、空間イメージを提案し、納入した現場の事例も紹介し、利用者調査を行いながら、ニーズを把握する。この4つのステップを回していきながら、空間との調和と快適さにこだわった商品や世界と時代の最先端をいくパブリックレストルームを実現し、現場ノウハウもあわせて蓄積していく。
日本の業務改善では、PDCAサイクルを繰り返し循環する手法が用いられているが、テクニカルセンターでは、今あげた4つのサイクルを循環させることで顧客と価値を共に創り上げていく手法を採用している。

テクニカルセンターにおける「共創」

4つのステップで新たな価値を共創
トイレの重要性などの情報共有はセミナーが中心で、オフィスや商業施設での考え方を説明し、場合によっては学校、病院、商業施設など建築用途別のセミナーも開催している。このほかバリアフリートイレの設計の考え方、訪日外国人のおもてなしトイレ、性的マイノリティの方に向けた配慮をどのようにすべきかなどのメニューも用意した。また設計者向けに、バリアフリートイレの設計の考え方、車いすの方が快適に動けるスペース、女性がお化粧直しをする際の高さや位置などの細部のレイアウト提案も行う。次に商品や技術の説明をし、最適な空間形成のサポートしている。
世界と時代の最先端をいくパブリックレストルーム
同時に、テクニカルセンターは提案の歩みを進化している。TOTOは1989年にプレゼンテーション部を発足し、1996年には世田谷区・桜新町に初代のテクニカルセンターを開設し、共創への挑戦を開始した。2012年にはテクニカルセンターを現在の位置にある南新宿に移転し、TOTOブランド醸成の発信、UD知見の構築につとめた。今回、12年ぶりにリニューアルを行い、さらなる顧客との共創を進化していくことが大きな狙いになる。
「コロナ禍が終息し、ようやく2023年度からリアルにご来館される顧客が増えたこともあり、同時に最新の情報を知りたいニーズが高まったため、リニューアルに踏み切った」(TOTO談)

TOTOの基幹技術を体感できる「技術展示コーナー」
また、空間の疑似体験も可能だ。テクニカルセンターには、検証スペースを設置しており、バリアフリートイレの設計を詳細に、寸法まで詰めたいという要望がある際、実際に車いすがあるため体感してもらいながら最適な寸法の決定までをサポートできるようになっている。
最後は納品した現場の「check」だ。TOTOは顧客に対して、「当社が情報発信する内容で何が重要ですか?」とアンケートを行ったところ、顧客からは、「現場の実例が見たい」との回答が多く寄せられた。そこで完成した現場に取材し、その内容を用途ごとにストックし、整理して顧客にアウトプットしている。TOTOではトイレを納入しただけで仕事が完了したわけではない。納入したトイレが使いやすいか、新たな課題は生まれたかなど利用者へのリサーチを怠らない。このリサーチした内容が次の空間創造につながる点では重要な業務といえる。

TOTOのパブリックトイレの取組みや顧客と共に創り上げた歴史を共有する場「ブランドウォール」
新たな価値を採り入れ、最先端のトイレを提案
再開発が多い日本では最先端の技術や価値が重要になる。大規模プロジェクトでは構想から竣工までは10年までかかることも多く、この10年の間に社会環境やトレンドが変化し、さらに新たな価値が生み出されることはある。そこで顧客と共創し、新しい価値を常に取り入れながら、提案を繰り返すため、「最先端」が大きなキーワードになる。
ちなみにTOTOは、提案時のキーワードとして「きれい・快適(健康)」「環境」「人とのつながり」の3点と強調する。この「きれい・快適(健康)」をアフターコロナの視点で読み解くと、TOTOはオフィスワーカーに対して、新型コロナ流行前・後の「手洗い」の行動について回数、時間、石けんの頻度を中心にアンケートを実施した。その結果、手洗いの「回数は増え、時間も長くなり、石けんを使う頻度が増えた」との回答が高かった。また、利用した施設でトイレ以外で手を洗う場所が必要かとの問いでアンケートを取ったところ、「必要である」との回答が約70%を越え、さらに「トイレ以外の場所でどんな場所に手洗い空間があると安心されるか」という問いには、オフィス空間では「エントランスのフロア」「執務フロア内」などトイレとは別の空間に手洗い空間が求められていることが分かった。そこでTOTOはトイレ空間だけではなく、「いつでも手洗い」の設置の提案も展開している。
2番目の「環境」についても、カーボンニュートラルの広がりを受け、TOTOは水まわりでは節水を提案している。水を使用し、下水処理をすれば、多くのエネルギー電力を使用することでCO2を排出することで、節水による環境配慮がポイントになる。TOTOは、男性女性150人ずつ、年間稼働率240日、男性女性とも大便器トイレが6個以上ある空間を試算条件として節水試算した。現状のトイレに1回流すごとに、9ℓと仮定して、それを大便器や小便器ともに節水器具を付け試算した。試算によると従来では年間172万円の水道料金がかかっていたが、節水器具を付けた場合、年間98万円まで抑えられることが分かった。水道料金の抑制も大きな効果といえるが、年間約0.6tのCO2削減にも効果があることも注目点であり、節水器具の採用が進むことで環境配慮にも貢献していく考えだ。
3番目の「ダイバーシティ」では、ワーカーの多様性に視点を置く。女性を例にとると男女雇用機会均等法が後押しし、女性の社会進出が進む。女性ワーカーが体の不調を感じた時の行動は、「トイレに行く」ことが多いという。そこでTOTOは体調不良時にはセルフケアができるブースの設置を提案した。このブース内にはウォシュレットなどの器具、手が洗える施設や椅子を設置して休める工夫を凝らしている。
今後、TOTOは、専門家の顧客との「共創」から生まれる、快適さと環境に配慮する、水まわり空間を国内外に広めていく。
TOTOテクニカルセンター東京
- 所在地:東京都渋谷区代々木2-1-5(JR南新宿ビル内)
- 全体広さ:752.3坪
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