トータルコストは従来の通常塗装工程の塗替えに比較して約70%削減可能
――材料や取り扱い、施工においての特徴はどんなでしたっけ?
永田さん サビた個所の部分塗替え用なので、10m2未満の損傷を対象としています。サビを3種ケレンで落としたら、その上に直接塗装でき、刷毛塗り1工程で常温下で750μm以上の厚膜塗装が可能です。10m2未満の塗替え需要個所というと、橋梁では特にサビやすい部位である桁端部や添接部、クランプ部などです。水が伝ってきやすい個所、水が溜まって乾きにくい個所、ハトなどが営巣してフンが堆積する個所などがサビやすいです。こうした個所に小面積でサビの損傷が出るわけですが、橋梁の全面塗替えまで放っておくとサビが進行して鋼板厚が減肉してしまいます。なので、スポットでコンパクトに塗替えたいですから、足場を使わずに高所作業車などで工事時間も交通規制も1~2日に短縮して作業をします。
気温5℃~35℃の間でも、ブラッシャブルSの使用可能時間や硬化時間に違いが出てきますし、また使う上塗りによっても塗装間隔は60分~10日間と開きが出ますが、例えば10日目に上塗りするとしたら、足場が必要な塗替えですと単純に足場費用だけでも10日分オンするわけですが、ブラッシャブルSは高所作業車でいいのでこの費用を2日分オン(夏であれば1日で上塗りまでOK)するということです。人手不足で足場を組まれる職人の方も減っていますしね。よってトータルコストは従来の通常塗装工程の塗替えに比較して約70%削減可能になるのです。
また溶剤を一切含まない無溶剤タイプですので、溶剤系塗料に比べ取扱量が大幅に増量できます。現場で保管できる塗料の主剤や硬化剤の量は、消防法や火災予防条例により限られます。有機ジンクリッチペイントですと、引火点が低く(主剤23℃、硬化剤-7℃)消防法の分類も危4類1石(主剤・硬化剤とも)なので、例えば東京都の火災予防条例に準ずる届出不要の保管量は40L未満(主剤・硬化剤とも)ですが、一方ブラッシャブルSは引火点が高く(主剤は204・4℃、硬化剤は93・3℃)消防法の分類は危4類4石(硬化剤は危4類3石で非水溶性液体)なので、東京都の火災予防条例に準ずる届出不要の保管量は主剤が1200L未満、硬化剤が400L未満です。つまり、作業時の現場火災の心配も軽減できますし、何度も現場の資材置場に運ぶ間接費が削減できるわけです。
――例えば、中規模に塗替えたいとなったら、ブラッシャブルMだそうですが、これも同様ですか?
永田さん 性能や材料、取り扱いの特徴は同じです。脚とか、交差点上のワンスパンだけとかで交通規制を最小限に短時間で施工したいとか、鉄道などでは新幹線も在来線もですけれどJRさんとかでき電停止の間に1晩で施工したいとか、そういう需要にお役立ていただいています。
10m2以上の劣化塗装の塗替え用で、1工程で常温下で300μm以上の厚膜塗装ができます。腐食部仕様は1種ケレンの素地にダイレクトにブラッシャブルMを刷毛とローラーで300μm塗り、その上に上塗りをします。塗膜劣化部仕様は3種ケレンの素地にダイレクトに刷毛とローラーでブラッシャブルMを500μm塗り、その上に上塗りをします。刷毛とローラーなので、MのほうがSより塗りやすいですれけど、その分薄くなります。薄くと言っても300μmとか、500μmとか、桁違いに厚膜で付きますけれど。
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橋梁以外で初採用となった上水道施設。役所の方も驚かれていました

上水道プラントに施工
――橋梁以外で初の採用となった上水道施設については。
永田さん 橋梁用途が先行して全国で使ってもらっているんですけれど、6月に九州の上水道のプラントで、橋梁以外で初めて施工しました。
橋梁と同様に省人化・省工程・短工期が1番評価いただいたポイントでした。上水道のプラントの外側を塗替えました。1~2m2程度です。紙ヤスリでサビを落として素地調整したのちに、塗装を1回して済みましたので、半日くらいで工事が終わったんですね。材料も主剤と硬化剤を混ぜるだけ、容量さえ守れば良いんです。
役所の方も、一連の工程に立ち会われて、実際に省人化・省工程・短工期で施工品質も良い状況を目の当たりにされて、驚かれていました。この上水道のプラントはメンテナンスを全くされていなかったので、もう全部がサビている状態なんですね。それをメンテナンスするとなったら、断水もしなきゃいけなかったり、サビを落とすにも気を使って、穴開けたらもう何千万円っていうものを取り替えなきゃいけなかったりとか、そういうことがあって対策が後回しになっていたんですね。
点検時に携行してひと吹き。ひび割れをふさぎます

新開発のTSクラックコート
――簡単な補修で長寿命化できるものとして、他に何かありますか?あれば、ついでに教えてください。
永田さん ちょうどコンクリートのひび割れを点検時にスプレーでふさぐ簡単な補修で、コンクリート構造物を長寿命化させる材料を企業と開発したところなんですよ。
今まではひび割れといえば、補修工事で樹脂を充填するというような対策をしたこともあったんですけれど、どこまでどんなふうに入ったのかが分からないんですね。中は見えないので。であれば、もう表面をふさいで水と空気を入れないようにカバーすれば合理的ではないか、それもひびを確認してから補修工事まで待つんじゃなくて、点検で確認した時にスプレーでふさぐ補修までしてしまうのが効率的で良いんじゃないか、人繰りと予算繰りでみても、という発想です。
――なるほど。点検時にローバルとかかため太郎とかを携行して、点検ついでに応急処置を済ませる管理者さんもありますもんね。
永田さん そうなんです。ローバルはサビ個所に亜鉛を追加して犠牲防食性能を期待する処置ですし、かため太郎は剝落の恐れのあるコンクリートを叩き落したのちにコンクリートと鉄筋の表面を固めてそれ以上の剥落予防を期待する措置ですよね。
新開発のTSクラックコートは、ひび割れを見つけた段階で、表面に透明のゴムテープみたいなものを吹き付けて、コンクリート内部や鉄筋の劣化因子である水と空気の浸入を防止する措置です。透明なので視認性が良いですから、措置後もひび割れの状態を確認できます。スプレーなので、使いきりなのですが、今日使って明日も使うというのは全然かまわないです。
――スプレーなのに、措置後の見た目は透明ゴムテープみたいなんですね。付着とか追随性とかはどんな感じですか?
永田さん この材料は280%もの伸び率があって、追随して伸び縮するんですね。有機材だと動くとパキンって割れちゃうんですけれど。それと、紫外線劣化をしないんです。
コンクリート表面に付着しているゴミやホコリ、油脂分、水分、離型剤などをふき取って、表面が乾燥したらスプレーしてOKです。23℃では60分で指触乾燥、24時間で硬化乾燥します。標準膜厚は30~50μmです。できたばかりの材料なんですが、橋梁だけでなくマンションとか建物施設などでさっそく使いたいというお話をいただいています。

ひび割れにTSクラックコートを吹き付けると、透明粘着テープでふさいだようになる
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